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 (読了後再生推奨/画質は720/60p、1080/60pがオススメです)

 
 本来移動手段でしかないロードバイクに乗る事を、目的としてしまった我々趣味ローディーには、常に“目的地を用意せねばならない”という難題がつきまといます。要するに、「とにかく乗りたい、だが、どこへ行こう?」というやつです。

 エンジン付きのバイク乗りも、似たような業を背負っているようで、その昔“600マイルブレンド”というのがライダーの間で流行ったそうな。600マイル=約965km。横浜から神戸まで往復できてしまう距離ですが、その名の通り、横浜から神戸にバイクで走り、目当てのコーヒー屋で一杯。飲んだらまた横浜まで帰る……という正気か?と言いたくなるライド企画。

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 (C)おりもとみまな(ヤングチャンピオン烈)/ばくおん!!製作委員会
(ちなみに最近人気のアニメ・ばくおん!!、OVA版の目的は100マイルブレンド)

 そんなにまでして飲みたいコーヒーとは、どんな味か気になりますが、本当のところ美味しさは二の次でしょう。愛車と共に、長く険しいライドに挑みたいのが本音で、目的地はバカバカしくても構わない。いやむしろ、バカなほど良い。インスタントコーヒーだって、アホみたいな苦労の果てに飲めば格別の味になる。「ばくおん!!」における、恩紗のハゲオヤジの弁を借りるなら「我慢は浪漫だ」。ライダーとは、なんと不条理な生き物なのでしょう。だがそこがいい。

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 (C)おりもとみまな(ヤングチャンピオン烈)/ばくおん!!製作委員会


 残念ながら600マイルも走れる脚力が無いので、今回は、飯能の先、白石峠の麓にある美味しい水出しコーヒーを求めて走るお話です。


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 スタートは飯能駅。トミィさんのルートなので、目的地に一直線ではなく、ゴルフ場をめぐりながらの進行。越生やときがわ町方面は、マイナーですが即死レベルの激坂が潜んでいるので、朝から気が抜けません。

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 いくつかの激坂を、ヒーハー言いながらクリア。

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 ローディーにはお馴染み、シロクマパンで、録画したNHKのチャリダーを鑑賞。

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 実は、某回に、このブログにも何度か登場しているれーやんさんが、出演者として登場していたのです。もちろん、偶然収録の際に、“その道をロードで走っていた”という話なのですが、チラっと写っていたというレベルではなく、「出演者を励ますローディー」的に、しっかりと、かなり長い間出演。本人と共に、ゲラゲラ笑いながらその様子を鑑賞。

 以降、れーやんさんの呼び名が"チャリダー”に変わったのは言うまでもありません。激坂が登場すると「チャリダーはそんなものじゃない」、「チャリダーの本気が見たい」など、名誉とばかりにいじられ続けていました。

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 シロクマパンで、渋峠で一緒に登ったすぎさんと合流。本格的な峠がスタートします。

 キツイ斜度を我慢しながら一定ペースで登り続け、弓立山の頂上にたどり着きました。以前レポもしましたが、白石峠を登って堂平山に行かなくても、その半分程度で絶景が楽しめるお得なスポット。ややガスってましたが、見晴らしの良さは普通の峠の比ではありません。

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 しばらく絶景撮影を楽しんだあと、お昼ごはんを食べに移動開始。

 目指すは、「くぬぎむら体験交流館」という施設。なんでも、廃校になった施設を、地域に伝わるひもかわ(うどん)やきつね寿司などの郷土料理の体験や、木工づくりの体験などができる施設に改修したものだとか。

 うどんも美味しいらしいので、楽しみです。

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e-nL8MyV_400x400その前に、ちょっとした坂があるけどね



 トミィさんの一言が気になりますが、きっと前菜程度のものでしょう。快適なダウンヒルを楽しみながら進んでいくと、目の前にZの文字が現れました。

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e3e05b84なんだこりゃあああああああああああ



 一目見ただけで、ヤバイ世界へのゲートだとわかるオーラ。私の目の前に現れたのは、”根性坂”、"埼玉のラルプ・デュエズ”などの異名をとる、超激坂空間です。

 ラルプ・デュエズとは、御存知の通り、ツール・ド・フランスのコースとして登場するアルプスの超級山岳。その伝説的な山にちなみ、かつて私は、生まれて初めて挑んだ激坂に"東村山のラルプ・デュエズ”と名付けました。

 おそらく日本各地に、「足立区のラルプ・デュエズ」、「川崎のラルプ・デュエズ」など、それぞれのラルプ・デュエズが存在するのでしょう。そして、私の前に立ちふさがっているモノこそ、坂の宝庫・埼玉において、ラルプ・デュエズの称号を与えられた激坂なのです。

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 とーるさんが颯爽とスタートする様子を撮影。まるでだまし絵のようです。 

 遅れて自分もスタートしますが、当然、坂が始まる前からインナーロー。

 案の定、スタート直後から10%、11%、12%と、秒針が進むように斜度が上がっていきます。

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 車から荷物を降ろしていたおじさんに「ここ登るの?」と半笑いで見送られつつ、クランクを回します。最初のカーブにさしかかったたりで、すでに15%。インナーローでも、27Tのスプロケでは脚がまわりにくくなってきました。

 ただ、私の経験上、いきなりこんな激烈斜度でスタートした峠は、そう長くは続きません。すぐに斜度が落ちるか、峠自体が短いかのどちらか。最初のパンチでビックリし過ぎないで、パワーをセーブしながら、じっくりとこの先を見据えていれば、恐れる事はないのです。

 ……

 あれ……


 おかしいな……

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 斜度が落ちないwwwwwwwww

 そして峠も終わらないwwww

 異常事態です。14%、15%から斜度が落ちないまま、峠はずっと続いています。9%や10%に落ち着く場所があれば、一息つけますが、そんな場所すらありません。

 体幹でなんとか姿勢を制御しますが、力を抜くと、ハンドルがふらついてバランスを崩して脚をつきかねません。

 カーブを曲がるたび、「え? うそでしょ? もう終わりだよね?」とか、「え? 次曲がったらさすがに斜度落ちるよね?」などと、半笑いで期待しますが、曲がるたびにその期待が裏切られ、激烈な斜度の道路が先へと続いている光景を見せつけられます。

 このあたりでようやく、ふざけているとヤバイ坂だと認識。慌てて脚から力を抜く脱力登坂をさらに徹底し、脳の神経接続も遮断。ゾンビモードで省エネ運転を開始します。

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 ツラさレベルでは、四天坂最恐・風張林道の序盤、きのこセンターまでの行程にすら匹敵します。恐ろしいのは、きのこセンターで一息つける斜度低下ゾーンがあった風張林道に対し、埼玉のラルプ・デュエズは休憩ゾーンが登場する気配がありません。

 15%~20%が続くような激坂の場合、私が我慢できるのは恐らく1km~1.5km程度でしょう。大出力を続けるとオーバーヒートしてしまうので、どこかで心拍を落ち着け、ドリンクを飲み、レッドゾーンに到達した苦しさを低減させなければなりません。しかし、そんな場所が現れないのです。

 カーブを曲がるたび、脳内に「やばいやばい」の文字が増えていきます。体感的にオーバーヒートが迫っているのがわかり、冷や汗が浮かびます。間違いなく、退院後のリハビリライドを続けてきた中で、最大の強敵。脚つきの危険度で言えば、四天坂のメンバーに数えても不思議ではない相手です。

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 GARMINに表示される、22%、23%といったアホみたいな数字を視界の端にとらえながら、悲鳴を押し殺して進みます。脳内はすでに無心。自分の我慢の糸が途切れるか、峠が途切れるかの限界バトル。久しぶりの感覚に、口元がゆがみます。

 「次曲がって、休憩ポイントが出てこなけければもうダメだ」という弱音が、脳内に3回ほど浮かんで消えた後、カーブでとーるさんが立っているのが見えました。登坂を終え、苦しむ皆を撮影しようと、降りてきたようです。

BFQit6Dg_200x200もうすこし! もうすこし!!



 その言葉で、すでに崩壊しかかっていた激坂攻略プランを立て直します。

 20%を超えるカーブを乗り切った先に見える、眺めのストレート激坂。おそらく、あれを乗り越えれば終わりなのでしょう。

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 12、13%の激坂が続いていますが、震える手でドリンクをゴクリ。あとはもう、フルパワーで回し続け、登り切るだけです。

 「もうダメだ」、「もうおしまいだ」、「仕事やめてやる」という脳内の悲鳴を、クランクと一緒に押し下げながら、なんとか最後の直線もクリア。そのまま道路の脇に倒れこみました。

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 もし、あと100m、この道が続いていたら、我慢の糸が切れて脚をついていたに違いありません。

 埼玉のラルプ・デュエズ(根性坂):血の味指数 22

 ラルプ・デュエズの名に恥じない、まさに鬼のような峠。風張林道(血の味指数:28)には及びませんが、子ノ権現(同20.5)よりキツイです。子ノ権現は、フルパワーと生き残る覚悟が試されるのが最後の区間だけですが、埼玉のラルプ・デュエズは、常に大パンチで殴られつづける事に耐え続けるメンタルが、全区間で要求されます。



 後ほど調べてみると、長さは1.3km。平均斜度は15.1%と判明。風張林道は4.2kmですので、長さは半分以下。要するに、風張林道の距離を短くして、休憩ゾーンをとっぱらったような激坂。ミニ風張林道と呼んでも差し支えないでしょう。

 しかし、距離が短いとはいえ、一息つかずに殴られ続けなければならない距離は風張林道よりも長いため、脚つきの危険性は風張林道より上かもしれません。登坂直後に頭によぎった感想は、「風張林道8割」でした。

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 ズタボロにされましたが、これでようやくうどんにありつけます。

 くぬぎむら体験交流館へと向かいますが、この施設もどうやら山の上にあるよう。悪い予感がしてきましたが、案の定、廃校になった施設は、アホみたいな激坂の上にありました。

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 ラルプ・デュエズでスッカラカンになった脚には、辛すぎる登坂。しかし、目の前のうどんに釣られて、泣きながら登り切り、なんとか校庭へとたどり着きました。

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 そこからの眺めは、ちょっとした山の頂上。いやはや、自分がこんな学校に通っていて、もしジテツウしていたのなら、さぞや凄いクライマーに成長していた事でしょう。

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 くぬぎむら体験交流館では、おばあちゃん達が、コシが猛烈に強いうどんをふるまってくれました。すさまじいコシで、硬いの一歩手前という感じ。冷たい汁につけて食べるよりも、暑い汁をチョイスして食べたほうが、バランスが良いかもしれません。

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 うどんでお腹いっぱいになったあとは、いよいよハーフマイルコーヒーの目的地である水出しコーヒーへ。

BFQit6Dg_200x200あ、ちょっと待って、大スギってのがあるらしいよ



 以前のときがわライドでは大クスを撮影しましたが、なにやら、近くに大きなスギがあるようです。

e3e05b84せっかくだから、ちょっと行ってみようか



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 完全に何かの前フリですが、案の定、大スギも激坂の上にありましたww

 スギは主に建築材として植えられるため、30年や50年で伐採されますが、巨木になって保護されているものも少なくありません。辿り着いたのは、越沢稲荷の大スギと呼ばれるもの。樹齢は400年ほどでしょうか。

 驚いたのは、こんな山奥の激坂の上にバス停が置いてある事。本当にバスが来るのかと一瞬思いましたが、よく見ると「山猫電鉄バス」と手描きされています。どうやら、トトロちっくな雰囲気のオブジェとして置いてあるようです。ただ、そう言われてみれば、山奥の巨木の脇に置かれたベンチには、ネコバスが風と共に到着しそうな雰囲気があります。

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 トトロ撮影を終えたら、あとはもう下るだけ。待ちに待った、水出しコーヒーのお店、ときがわの小物屋さんに到着しました。場所は、白石峠の入り口に至る道の途中。ロードバイクもよく通る、都幾川沿いにあります。

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 喫茶店というよりも、古民家。店内には木で作られた小物なども売られていて、なにやら趣味性が高い雰囲気。案の定、マスターもジブリアニメから抜け出てきたような風貌です。

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 そもそも水出しコーヒーというのは、その名の通り、お湯ではなく、水に挽いたコーヒー豆を浸して長時間置いて出すもの。雑味が少なく、スッキリとした味わいになるので、アイスコーヒーに適しているとされます。ただ、ホットでもオーダー可能。しかし、炎天下で激坂をクリアしてきたので、ここはアイスでオーダー!

 なんと、このお店のコーヒーは、8時間もかけて水出ししているのだそう。飲むための席は……と見回しても、店内に座れそうな場所はありません。店を出てみると、道路を挟んだ河原に、いくつも椅子や切り株が置かれています。出来上がったコーヒーを持って、ここに座り、屋外で一服するというスタイルのようです。

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e3e05b84これ、開放的で最高だけど、雨降ったらどーすんの?



e-nL8MyV_400x400雨だと店は休みだって



e3e05b84就職してえー



 いやぁ、なんとも不思議なお店ですが、マスターのこだわりがカタチになっているようで、極めて面白いです。

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 で、8時間かけて作られたアイスコーヒーはどんなお味でしょう? グラスの中には琥珀色のコーヒー、その上にミルクが乗っていますが、なんでも、混ぜずにそのまま飲むのがこの店のスタイルだとか。恐らく、ミルクのまろやかさだけでなく、コーヒーそのものの味も味わって欲しいというこだわりなのでしょう。

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 グラスの周囲には紙が巻かれており、ポエムまで。なんとも粋です。

 では失礼して一口。
 
e3e05b84うwwwめwwえwww



e-nL8MyV_400x400これは美味しいwww



3487fc7fb8e61847844efa345cfea8fe_400x400ゴッゴッゴッ!!



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 スッキリしていて飲みやすく、でも深みがあり、味わいは濃厚。えぐみや苦味はまったくなく、スーッと体に入っていきます。もっとゆっくり味わいたいですが、手が勝手にグラスを傾けてしまいます。

BFQit6Dg_200x200e3e05b843487fc7fb8e61847844efa345cfea8fe_400x400e-nL8MyV_400x4008時間かけたコーヒー8秒で飲んだww

 いやぁ、こんなに美味しいアイスコーヒーは初めてです。キツイ激坂をクリアした甲斐があったというもの。オーダーしてから受け取れるまでちょっと時間はかかりますが、ヒルクラ後のご褒美には、もってこいかもしれません。

 ちなみに、さぞや高いのだろうと思っていましたが、お値段は1杯400円とリーズナブル。ときがわに走りに行く機会があったら、オススメです。営業しているかどうかは、運かもしれませんが(^_^;)。

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 その後は、以前訪れた醤遊王国にも来訪。美味しいアイスが食べられる牧場なども満喫。補給過多になってしまったので、急遽、カロリー消費のため、帰路は自走で帰る事に決定。

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 だいぶ開拓したと思っていたときがわ町にも、まだまだ知らない強敵や、美味しいものがあるとわかった今回のライド。奥が深いもんです。

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-5xqteuT自走で帰宅遠い……疲れた……暑い……ファミマフラッペ飲みたい



e3e05b84さんせー



-5xqteuTでもファミマないですよ、帰り道に。ちょっと脇道にそれて、だいぶ行ったところにあるけど。



e3e05b84ファミマフラッペの美味さには代えられない。遠回りでも寄って行こう。





 ~15分後~


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e3e05b84-5xqteuT「」