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 突然ですが、2枚の写真を掲載します。上の写真と、下の写真、実は同じ坂道を撮影したものです。

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 坂道だけを見て「風張林道だ!」とわかったあなた、あなたはもう立派な坂バカ、もしくはこのブログの読みすぎです。それはさておき、同じ坂道を撮影した写真なのに、上の写真は斜度が900%くらいあるように見え、下の写真はそこらへんの街中にもありそうな坂に見えます。

 ロードバイクで峠に挑み、延々と続く坂道にゲンナリして、休憩がてらスマホやコンデジを取り出してパチリ。家に帰って見返してみたら、あんなにキツくて辛かった坂道が、まるで平地のように見えて「こんなハズじゃなかった!」、「あんなに苦労したのに! この写真じゃ苦労が伝わらない!」と思った経験はないでしょうか。

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 誰も知らないと思いますが、このブログには「ロードバイク撮影」というカテゴリが存在します。このカテゴリには、主にロードバイクを被写体として写真を撮影する時に、使えるのではないかというテクニックを掲載しています。

 偉そうにカテゴライズしていますが、書いてあることは「アングルをいろいろ試そう」とか「いろんなモードで撮影しよう」みたいな、どのカメラ入門書にも書いてあるような事ばかり。強いて独自のポイントを挙げると、作例が全部ロードバイクという事のみです。

 それはさておき、最近私の周りではコンデジを携えてロードバイクに乗る人が増えています。当ブログに最近よく登場している人達でも、HAOさん、とーるさん、ゆっけさん、アキアさん、Deroさん、mkさん、ぼんさんらがRX100シリーズを所持。りおんさんもミラーレスをぶら下げて乗っています。そして、何故かたいがい坂を登っています。

 というわけで今回は、坂道を坂道らしく撮影するにはどうしたらいいのかというお話です。

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 坂道どうこうの前に、なんで目で見た時と同じ印象の写真が撮れないのでしょうか。考えてみましょう。

 上の写真は、私が普段ライドに持って行っているRX100M3というカメラ。レンズの周りに白い字でなんやらかんやら書いてあります。数字だけピックアップすると「1.8-2.8/8.8-25.7」。これは失われた古代文字なので意味がわからなくても大丈夫です。これを現代語に翻訳すると、「24~70mm」という数字になります。なるんです。質問は受け付けません。

 とりあえず「24~70mm」という数字だけを覚えておいてください。「ニーヨンナナマル」とか言うと通っぽいです。どうでもいいです。

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 公園の草むらに来ました。その場に立って、片目を閉じてみます。見える景色はこんな感じです。

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 いい景色だなぁと、RX100M3を取り出して、設定を何もいじらず、その場でシャッターをパチリ。

 撮れた写真は下のものです。

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 わかりやすいように、二枚を並べてみます。

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 左:片目を閉じた肉眼 右:RX100M3

 なんかちがくね?

 言葉で説明すると、RX100M3で撮った写真の方が、公園が“広く”写っています。広々とした公園っぽさが出て、コッチの方が気持ちが良い写真ですが、問題はそこではありません。肉眼で見た景色と、違うものが写真に写っているというのが注意すべき点です。

 では肉眼と同じ写真にするにはどうすればいいのか? レンズのズームを操作して、ズいーんとズームしてみます。カメラのディスプレイには「24mm」と表示されていましたが、ズームするとそれが「35mm」、「40mm」と増えていきます。そのまま増やしまくっていると、70mmで止まりました。とりあえず撮影します。

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 あれww

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 左:片目を閉じた肉眼 右:RX100M3

 行き過ぎたwww

 今度は写真の方が狭くなりすぎました。ちょっとズームレバーを操作して、戻ります。60mm、55mm……と下げていくと、木のサイズや、写っている部分など、肉眼とカメラのディスプレイに写る絵が、ちょーど同じくらいになる場所を発見。

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 この時の数字は約50mm。

 つまり、人間の視野は約50mmと数値化できます。(※諸説アリ/※センサーサイズに寄っても異なる/※両目で意識を広くすると見える範囲は拡大/※人間は意識を集中させると中央部を脳でトリミングする/※今回の話はあくまでイメージです)

 RX100を取り出してなんも考えずにパチリとやると、カメラの目玉(レンズ)は24mm、よって、「自分が今見ている風景よりも広く撮影される」、「見ている風景に近く写したい時はややズームする必要がある」という事です。

 坂道に移動しましょう。肉眼で見るよりも広く撮影すると、坂道はどのように見えるのでしょう?

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 坂道は坂道ですが、特にキツそうだとかは思いません。

 その場に立ったままズームしてみます。

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 坂のキツさ具合が、肉眼で見ている印象に近くなりました。これならば「坂道が登場したぞ!」と、わざわざカメラを取り出して撮影した甲斐があるかもしれません。

 もっとズームしてみます。

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 なんか激坂に見えてきたww

 人間の目玉はデジカメのレンズのように光学的にズームする事はできませんが、激坂を目にした時など、何かに集中すると、その対象に向かってズームしているかのように、クローズアップして認識します。その際、周囲のモノの認識はおざなりになります。

 光学的にズームすると、まるで引き寄せたように坂道がドアップになり、周囲にあったものは排除され、中央にあるものが凝縮されて写ります。専門用語では「望遠の圧縮効果」と言います。

 このような手法で撮影すると、現地で「ぎゃー!! 激坂だー!!」とショックを受けた際の心情が、そのまま写真に残ります。脳みそがオーバーに認識したのだから、写真を撮る際もある程度演出を加えるとバランスがとれるというわけです。

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 レンズを引き気味に(広角気味に)撮影すると、あまり激坂に見えません

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 撮影する位置を変えても、さほど大きな違いは出ません。では、思い切ってズームすると……

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 ぎゃー!! こんなの登れない!!

 って写真が撮れます。

 強烈な斜度の坂道を撮影する時、写真のメイン被写体は激坂、つまり道路そのものです。モデルさんを撮影する時は、モデルさんの顔がよく見えるようにズームして撮影しますが、それと同じように、メイン被写体である坂道をしっかり、たっぷりと、絵の中に配置する事が重要です。

 そうすることで、パッと人に見せた時に“この坂道を見ろ!!”という強いメッセージを込めた、説明不要、一目瞭然の写真を撮る事ができます。

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 ググッと寄る

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 さらに寄る

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 縦位置で左右の不要要素をカット

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 人物を配置

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 ズームが足らなきゃ脚で寄る

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 全部坂で埋めた写真……

 ワイドで撮影したもの(↓)と比較すると、坂の強烈さがまるで違うのがわかります。

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 ただ、やみくもにズームばかりしていても、同じような写真ばかりでつまりません。

 また、そもそも背後が崖だから後ろに下がれないなど、状況によっては望遠の圧縮効果が使えない撮影シーンもあります。

 その際は、”道路をメインにたっぷり絵の中に入れる”という基本を念頭に、アングルを工夫すると”キツそうな絵”を撮る事ができます。

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 たとえばこの、私が風張林道を登り始めている写真(撮影したのはゆっけさん)。

 広角で引いてとっているので、激坂らしさはあまり出ていません。

 同時に、「上に登っていく激坂なのだから、地面に腰を落として、見上げるようなアングルで撮れば、激坂らしさが出るだろう」という狙いで、下からあおりぎみで撮影されています。しかし、坂道の迫力はあまり出ておらず、写真として成功しているとは言えません。

 大きな理由は、私が進んでいる先、つまり、これから挑んでいく風張林道の坂道自体がガードレールに隠れて見えなくなっているため。メインの被写体は私ではなく、坂道そのものなのです。

 下の写真のように、広角寄りであっても、進んでいく先の地面が絵の中に入っていた方が、「うわー、これからあそこまで行くのか」という情報が伝わり、キツさが臭ってきます。

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 激坂を登るHAOさん。これでもキツさは十分伝わってきますが、これから進んでいく先の道路、そして私の足元まで伸びている手前の道路、主役である道路をもっと画面の中に入れてみると……

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 ぎゃー!!

 という感じがアップします。

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 お馴染みの激坂・百草園も、道路をもっといっぱい入れると……

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 ぎょわー!!


 もう1つ、テクニックとして

 日常見慣れたものを、この坂道に配置すると、さらに異次元感がアップ!!


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 ぎゃー!! 死wwぬwww
 (ただ、この際は人間や車が、これから進む先の道路を隠してしまわないタイミングでシャッターを切る必要があります)

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 峠によく登場するナイスワインディング。

 そのままでも迫力満点ですが、人間を配置すると、斜度のキツさの演出効果がアップします。

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 アップダウンが連続し、うねるように伸びていく鶴峠。その凶悪な道路の姿ができるだけ沢山画面の中に入るアングルを探した末であれば、カメラを斜めに構える事も間違いではありません。



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 峠でよく見るつづら折れ。周囲の木々の隙間が多ければ、頑張って先にのぼりきって、上から撮影するというのも、峠のスケール感を出す時に使えるテクです。道路が左右に離れている場合は、ズームして圧縮させると、つづら折れ感がアップします。

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 登り切った頂上から、道路を振り返って撮影。

 道路に直接カメラを置いてしまうような超ローアングル撮影でも、道路をたっぷりと入れれば、迫力のある絵になります。ただ、これまで登ってきた背後の道路が見えなくなるので、激坂感は薄れます。歯を食いしばって登る人物を配置する事で、激坂であるという説明を補足できます。

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 斜度がキツくない道路が近くにあったら、激坂との比較対象として、画面の中に一緒に配置するのも、演出手段の一つ。

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 ご存知、子ノ権現のラスト区間。これだけでも鬼のような斜度だというのは何となくわかりますが、対比するものが、手前の道路程度しかないので、凶悪さを出すのには不十分です。

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 手前の道路や、さらにその手前の道路を入れる事で、ラスト区間でググッと斜度が上がっている事が伝わります。

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 ライドをしていると、たまにゆっけさんが

-5xqteuTへるさんの写真で見たのと違うww


 と、文句を言う事があります。

 「凄いと感じて撮影した写真が、凄く見えない」という今回の話とは逆に、「写真で見たら凄かったのに、実際に来てみたらショボかった」という批難ですが、ある種の褒め言葉として受け取っています。

 頑張って勇気を出して山に挑んだのですから、「こんな凄いところを登ったんだ」と人に自慢したいもの。あるいは、目の前の激坂にのまれないためにも、登る前に深呼吸をして、強敵が、より強敵らしく見えるアングルを探してみるのも面白いかもしれません。