
ロードバイクを買うと何処かに出かけたくなるもの。ロードバイクでなくても、靴や洋服、車など、外界や移動と結びついたものを手にすると、それを活用したくなるのが人情です。
面白いもので、カメラにも似たことが言えます。スマホで撮影する人にはイマイチわからないかもしれませんが、良いカメラ、良いレンズを手にすると、「それを使ったらこんな写真が撮れるだろうなぁ」という妄想が膨らみ、家の中でじっとしていられなくなります。“カメラに連れ出される”、"カメラに連れて来てもらった”なんて言い方もあったりします。
「旅行とか行かないからカメラなんていらない」という人もいると思いますが、実際はその逆。カメラがあるから旅行に行くのです。結果的に良い写真が撮れたかどうかは、ここでは関係ありません。手段が目的となる事を趣味と言うならば、本来移動の手段でしかないロードバイクに乗ること自体が目的となる事も、何ら不思議ではありません。乗るために目的地を考えるなんてエキセントリックな事を毎週末しているローディーは、趣味人の鏡と言っていいわけです。

夏休みは1枚の写真が撮りたいがために、長野に行っておりました。
長野と言えば、5月にレポートしたAACRこと「アルプスあづみのセンチュリーライド」。私が大好きな場所である、”木崎湖”という湖をかすめるように、最長160kmのロングライドができるイベントに参加したばかり。それから3カ月ほどしか経過しておりませんが、再びここに帰還していました。

大きな理由は写真が撮りたかったというものですが、それと同時に「木崎湖でゆっくりしたかった」という疲れきった社会人らしい動機も内包しています。AACRの時は、制限時間があるので湖のほとりでボーっと座り続けるわけにいかず、後ろ髪を引かれる思いで通過。逆に言えば、一口かじって離脱してしまったので、木崎湖でゆっくりしたい熱がかえって高まってしまったとも言えます。
また、AACRをきっかけに「おねがい☆ティーチャー/ツインズ」両方をコンプリートしたと胸を張るゆっけさんが、事あるごとに「また木崎湖に行きたい」、「湖のほとりにある小熊山にのぼってみたい」と訴えていたのも理由の1つでした。
しかし、こうした軟弱な(?)理由だけではありません。
3つ目の理由は長野県にあるサイクリスト憧れの峠、「乗鞍」に登ってみようという計画があったため。そう、四天坂が裸足で逃げ出す、恐怖・激坂十傑集との戦いの火蓋は、夏休みに切って落とされる予定だったのです(厳密に言えば末席の大弛峠とは既に戦闘済みですが)。

なんとか湖とか、乗鞍とか言われても何処の話だかサッパリわからないとう人もいると思いますが、地図でみるとこんな感じ。

東京の新宿から、特急のあずさに乗り、牛肉どまん中を食べて寝ているだけで、長野の松本という駅に到着します。ここに宿をとって、AACRは木崎湖方面に向けて走ったわけですが、今回は同じように松本に宿をとりつつ、木崎湖まで行ってまったり→松本に戻って一泊。翌日、西にある乗鞍に行って、ヒルクライムに挑戦して東京に帰る……という計画。
参加者は、木崎湖→乗鞍コースが私とゆっけさん。トミィさんは同じように松本に行きますが、そこから”美ヶ原”(うつくしがはら)というヒルクラポイントに挑戦。これは松本のすぐ近くにある場所で、実はこの美ヶ原も激坂十傑集の1人。そして翌日、乗鞍ヒルクライムを一緒に挑もうという計画。
さらに、乗鞍ヒルクライムの当日にはDeroさんと、と~るさんも参加。5人で乗鞍に挑もう……という計画でした。


どういうわけか、木崎湖に到着した私はぼっちです。
実は、旅の直前に急用ができてしまい、ゆっけさんは不参加に。1人だと寂しいので、トミィさんにくっついて行って美ヶ原を登ろうかという案も0.045秒ほど頭をよぎりましたが、十傑集の美ヶ原に挑み、翌日に乗鞍に挑むというのは、自ら灯油をかぶり、タバコに火をつけた上で「火だるまになるとは思わなかった」と言うのと同義。単なる自殺行為です。
そこで初心貫徹し、1人で木崎湖でまったり。東京での疲れを癒やした翌日、乗鞍に挑もうという判断になりました。
まずは輪行で松本駅に到着、美ヶ原を目指すトミィさんと一旦別れ、私は再び電車に。辿り着いたのは信濃大町。そこで自転車を組み立て、鼻歌交じりに木崎湖へ……。
以降、木崎湖の湖畔でまったりとひっくり返っているだけのブログレポートが続く……わけではありません。私はここで撮りたい写真があるのです。それは木崎湖の北西側にある“小熊山”。その頂上に登ると、木崎湖を見下ろせる絶景が楽しめます。その絶景と一緒に、自分のロードバイクを撮影しようと思ってココにやってきたのです。
小熊山、つまり“ヒルクライム”をするために木崎湖にやってきたのです。以前の私からすると考えられない旅の動機であり、我ながら感慨深いものがあります。
普段であれば小熊山の坂スペックは平均斜度○○%で……と続くところですが、どれだけキツかろうが、登る事には変わらないので、あえて詳しく調べずに挑む事にしました。その方がブログもドラマチックになるのではという下心もあります。
……しかし、初っ端からその下心が裏目に。

小熊山への道は、木崎湖キャンプ場側の道と、隣にある青木湖からの道の2つがあります。下調べをしていない私は、深く考えずに木崎湖キャンプ場から小熊山に登りはじめました。実はコレが大間違い。
登った後でTwitterで教えてもらい、自分の間違いに気づいたのですが、この道路、一方通行で青木湖側から登らなければならなかったのです!!

すいませんすいませんすいません.... orz (そういえばロングライダースにもそう書いてあったような)。
登った後でTwitterで教えてもらい、自分の間違いに気づいたのですが、この道路、一方通行で青木湖側から登らなければならなかったのです!!

すいませんすいませんすいません.... orz (そういえばロングライダースにもそう書いてあったような)。

しかも「さあ登るぞ!」と、自分で入り口を撮影した写真に一方通行の標識がシッカリ写っているのにまったく気づいていないという体たらく。……このブログを見て小熊山に挑もうという人は私を反面教師として青木湖側から登ってください、お願いします(見通しの悪い林道なのでヒルクラ中に下ってくる車と鉢合わせすると危険です)。
というわけで、「これだけ辛かった」とレポートしても、まったく参考にならないヒルクラになってしまったので恒例の“血の味指数”はナシ。正しいルートで再挑戦した時に改めて指数を図りたいと思います。



イメージだけでお伝えすると、“辛過ぎて脚をついてしまうほどではないけど、舐めてかかると手痛いしっぺ返しを食らう”という感じ。「1日目は木崎湖でゆっくりどころじゃなかった、明日、乗鞍に挑むなら小熊山がこれ以上キツイとヤバい」と心配になるくらいでした。


途中で新たに作られている林道も発見。木崎湖のあたりも変わっていくんですなぁ....。
道中、ロードバイクとも人間とも車とも誰とも遭遇しない静かなヒルクライム。木々は多めで眺望の良い場所はあまりないですが、登りきった先には大きすぎるほどのご褒美が用意されています。

すげええwww
まるで木崎湖を独り占めしたような絶景。これだけ綺麗に見渡せるのは、周囲の木々が無いからですが、それもそのはず、この場所はパラグライダー場になっているのです。そのため、観光地の展望台にありがちな柵も無し。草原の先はもう絶壁で、高いところが苦手な人は足の裏がゾワゾワするかもしれません。




木崎湖に降りてからは、写真を撮影しながらゆっくりと一周。お腹がすいたので、隣にある青木湖まで走り、ログハウス風のラーメン屋さん「ゼーブリック」に。

以前ロングライダースで読んで、一度食べてみたかった酢・辛味そばをオーダー。



コシの強い太めの縮れ麺に、酸味が癖になりそうなスープ。
チャーシューは極厚ですが、柔らかくてジューシー。
ヒルクラでお腹がすいていた事もあり、ペロリとたいらげてしまいました(*´∀`)
チャーシューは極厚ですが、柔らかくてジューシー。
ヒルクラでお腹がすいていた事もあり、ペロリとたいらげてしまいました(*´∀`)

お腹も満たされ、また木崎湖に戻って湖畔で休憩。













写真撮影を満喫していると、田んぼの上を白い煙がモクモクと流れていきます。最初は「野焼きかな?」と気にしていなかったのですが、遠くからサイレンの音が。


まさか火事? と、煙の出元に近づいてみると、やはり野焼きのよう。消防車も到着し、火を起こしていた男性に事情を聞いていました。身の回りに田んぼがない場所で暮らしている事もあり、「こういう事ってしょっちゅうあるのかな?」と軽いカルチャーショックを受けていました。

まったりと湖畔で過ごしていると、日が傾いてきました。
信濃大町まで自転車で戻り、輪行で再び松本へ。松本→木崎湖間くらい自走しろというツッコミが来そうですが、この日の私はとことんだらけモード。翌日乗鞍に挑むのであれば、ダラケてダラケ過ぎる事はありますまい。


松本でトミィさんと合流、恒例となりつつアニメイト巡礼写真も無事に撮影。晩ごはんを食べようと、居酒屋へ繰り出します。

酒の肴はトミィさんが挑んだ美ヶ原の難易度について。
十傑集の1つなので一筋縄でいかない相手だと予想していましたが、トミィさんは開口一番「松本から近くて簡単に行けたけど、入り口から冗談じゃなかった」と半笑い。中盤から終盤にかけては、美ヶ原という名前に恥じない絶景が楽しめたそうですが、坂スペック的には「最初から殺しにかかってくるタイプ」のようです。


夏や休みで店内は混雑しており、明らかに料理の供給能力を来客数がオーバーしている様子。松本名物の山賊焼き(鶏の唐揚げ)もオーダーしたのですがなかなか出てきません。
坂談義に花を咲かせていると、ようやくポツポツと料理が。しかし、どれも暖かくありません。












(20分後)
おまたせしましたー











(20分後)
おまたせしましたー















居酒屋で馬鹿なことをしている間に、地球では別の自体が進行中。乗鞍に黒い雲が迫っており、明日の予報がみるみるうちに悪化......。雨マークが登場してしまいました。
深夜にホテルでひっくり返りながら、とーるさんやDeroさんも交えてTwitter上で相談。
「雨が降るのは間違いなさそう」、「登りは大丈夫かもしれないけど下りが危ないね」、「というか絶景を堪能しに行くのに雨や曇だと本末転倒じゃない?」、「また天気の良い日に来ればいいだし」など、みんな大人なので大人な意見により乗鞍挑戦は取りやめとしました。
私が若ければ「せっかく来たんだから雨でも構わねえ、突撃じゃー!」とかやって崖からアイキャンフライしていたかもしれません。ロードはシンプルでプリミティブな乗り物だからこそ、乗り手の意識という名の安全装置が重要という事でひとつ。

そんなわけで、翌日は宿にロードを預けたまま、トミィさんとのんびり松本観光。美味しい蕎麦でも食べようとウロウロしていました。結果的に天気予報はドンピシャで、朝から雨が降ったりやんだり。Twitterで乗鞍の頂上付近の写真も見ましたが、霧の中にすべてが埋もれているような光景で、「やっぱり登らなくてよかった」と胸をなでおろしました。
松本と言えば、代表的な観光地は松本城。あいにくの天気ではありますが、暗雲立ち込めていたほうが、軍事拠点でもあるお城は雰囲気が出るという利点もあります。


聖地巡礼的な見どころと言えば、松本の街のハズレにある松本高等学校 (旧制)も外せません。1919年に設立された旧制高等学校。現在は「松本市あがたの森文化会館」として、公民館や図書館などとして使われています。




「おねがい」シリーズ見ていないトミィさんを「聖地巡礼だ」と連れ回すのは申し訳ないですが、「古い建物を見るのは好き」と言ってくれたので、「雰囲気のある学び舎撮影ツアー」的な感じで内部をウロウロ。
古い建物は露出をアンダー目でとか、机が並ぶ教室はこのあたりを切り取ると良い感じにとか、ウダウダ言いながら写真を撮りまくり、落ち着いた雰囲気を満喫しました。







お昼ごはんは検索して見つけたお蕎麦屋さん「そば処 種村」に決定。
店内は桧材の無垢で、木の香りに包まれています。


ざるそばに雑炊などがセットになった定食をオーダー。ざるそばがメインですが、この食べ方が非常に面白い。
まず、蕎麦にテーブルに置かれた“焼き塩”を少しつけて蕎麦の味だけを楽しみます。そば粉の香りが強く、甘みもあって美味しい!!!

お次はつゆにつけて食べるのですが、このつゆも2種類あります。1つは甘さとコクが特徴という「甘み つゆ」。どちらかと言うと普通のざる蕎麦のつゆに近いもの。
もう1つはカツオの出汁をガッツリとった「香り つゆ」。これが超絶にうまい。まるで、さぬきうどんのキリリとしただし汁に醤油を少し加えたような味わいで、普通のざる蕎麦よりも複雑かつ旨味の強い味わいでたまりません。




そば豆腐や、蕎麦の実雑炊も「おおっ」と声が出るほど美味。


サービスで頂いた、太めに切った「蕎麦さし」(蕎麦の刺し身っぽいイメージ)も、焼き塩をつけて食べると、蕎麦の風味がガツンと鼻に抜けて目から感動の美味しさ。「さすが信州、レベルが違う」と2人で大満足の昼食となりました。





あとはトミィさんおすすめのソフトクリームなどでデザートを食べつつ、まったり松本観光を終え、輪行で帰路につきました。
美ヶ原を制覇したトミィさんは別といて、俺あんまロードバイク乗ってない気が、摂取カロリーの方が遥かに大きい気がするライドでしたが、まぁたまにはこういうのも良いんじゃないかと。木崎湖で心のリフレッシュをする大切さを訴えていきたい所存です。



あの標識には大町市が昔に設置したもので、公安委員会が設置したものではなく、効力が無いとのことです。