前回までのあらすじ。
四天坂の子ノ権現(ねのごんげん)を攻略し、勢いに乗るインナーロー教団。残る最後の刺客、風張林道を倒すのも時間の問題……。だが、ここまでの順調な成果は、へるはんの心に傲慢の種を受け付けるには十分だった。
出る杭は打たれ、高木は風に折らるもの。へるはんに、己の実力不足を再確認させるための鉄槌が、今まさに天空から振り下ろされる。それは、あまりにも強烈で、神々しさすら感じさせる一撃だった……。
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(読了後再生推奨/画質は720/60p、1080/60pがオススメです)
※今回はフラフラなので揺れが多くてすみません。全画面表示は酔うので注意!!
※今回はフラフラなので揺れが多くてすみません。全画面表示は酔うので注意!!
このブログでは、最近よく山が登場します。斜度がキツイだの、緩いだの言いながら登っている山。ロードバイクではついつい、途中の道路の斜度や、路面の綺麗さ、見晴らしの良さなどに注意が向きがちですが、山で本来最も気になるのは“高さ”でしょう。
例えば、よく話題に出てくる都民の森は、標高994m。その先の風張峠は1,146m。ヤビツ峠は761m……といった具合。こうした数字を調べていると、当然「もっと高い峠ってのはあるのかな?」とか、「登山じゃなくてロードバイクで登れる日本で一番高い峠ってのはどこなんだ?」という事が気になってきます。
ただ、この“日本一”というのが調べてみるとなかなか深い。とりあえず日本人であれば「そりゃ富士山だろう」と答えると思いますが、実は違うのです。ロードバイクが行ける道路の一番高いところは、乗鞍で、なんと標高2,716m。AACRの前日に見学に行ったあそこです。高さは実に、都民の森の2.7倍。聞いただけで気が遠くなります。
ただこの乗鞍、ロードバイクはOKですが、環境保護などで自家用車は乗り入れ禁止。自家用車もOKな最も高い場所は、富士山の新五合目で標高2,380mなんだそうな。
そして、富士山五合目のようなどん詰まりではなく、山の向こう側に道が続いている“峠”の最高地点は、山梨と長野の県境にある大弛峠(おおだるみとうげ)で、高さは2,360mと、ほぼ富士山と同じ。自家用車でも到達可能です。相模湖の手前にある大垂水峠(おおたるみとうげ)と名前が似ている事から、"本物のおおだるみ峠”、”ヤバイ方のおおだるみ”なんて言う人もいるらしいです。
自転車乗りが一度は行きたいと憧れる、かの有名な“渋峠”(志賀草津道路)は標高2,152m、これは“国道で日本最高所”なんだとか。車で行けるとか、国道だとか、いろいろな条件で“日本一”が変わるというのも面白いもんです。
そんな日本一高い峠の大弛峠ですが、雪などによる通行禁止が解除され、6月から登れるようになったらしいです。
ふぁい
行ってみましょう
何処に? ジャスコ?
2,360mの世界に
すみませんラトヴィア語には明るくなくて……
へるさん、奥武蔵グリーンラインとか尾根幹みたいなアップダウンの連続じゃなくて、大きな山をコツコツ登るの好きだって言ってたじゃないですか。
好きだとは言ってない、まだマシだと言ってるだけだ。というか2,360mってなんだよ。俺が今まで、幾つかの峠に分割して摂取する事で、かろうじて飲み込んだ獲得標高の合計が1日2,300mなんだぜ?
その数値をたった1個の山で超えちまうってなんだよ。というか、関東近郊の四天坂ですら全討伐が怪しい俺が、日本一に挑むとか話が飛躍しすぎだろ。
食が細くて給食食べきれなくて居残りさせられて涙目で牛乳で流し込んだ小学生を、ギャル曽根の隣に座らせて、テラ飯置いて「ファイ!」って言うようなもんだろ。
食が細くて給食食べきれなくて居残りさせられて涙目で牛乳で流し込んだ小学生を、ギャル曽根の隣に座らせて、テラ飯置いて「ファイ!」って言うようなもんだろ。
あ、ちょうど行こうとしている日に、HAOさんとりょうさんも行くようなので混ぜてもらいましょう。
登れる2人に迷惑かけまくる未来像しか浮かばないのだけれど……
コースはこんなイメージで
えーと、2,360mUPで……距離は……さ、30km!?
標高は2,360mだけど、塩山の駅が400mくらいだから2,000mUPですよ
30kmで2,000mUP!? だって、都民の森、武蔵五日市駅の駅から都民の森まで、約25kmで800mUPなんだぜ? それより5km多いだけで2倍以上の2,000mUPって何?
でも平均勾配6%くらいで、20%みたいな激坂は無いって情報だよ。行ける逝ける
いや……しかし……
確かに、登る高さ約2,000mというのは、私にとって不可能な数値ではありません。しかし、それは100km、120kmといったロングライドの結果、合計として積み上げた数値。途中には平地も下り坂もあり、そうしたポイントで休憩をした末の2,000m。決して、延々とひたすら登り続けて2,000m積み上げたわけではないのです。
しかも、横方向の距離は60kmでも50kmでもなく、たった30km。という事は、恐らくこの30km、ほぼ下りも平地もゼロなのでしょう。30kmの間、ずーっと、ひたすらズーッと、ややキツ目の斜度を登り続ける……そんな山が、大弛峠なのだと坂スペック数値が警告しています。
これはヤベエな……子ノ権現クリアしたとか言って、調子にのって挑むのは100年早いかもしれん……。
不安を抱きながら、早朝の中央本線に揺られること2時間以上。塩山駅に到着しました。自転車を組み立てながら、HAOさん、りょうさんを含め、他の参加者に「俺、マジで今日は無理かもしれないから、中間地点とかで待ってるから気にせず登ってよ」と伏線を張っておきます。なにせ30kmで2,000mUPなんてやったことがないので、自分がどうなるかサッパリわからないのです。
同時に気になるのが気温。この日は朝の段階で既に28度をオーバー、日が高くなると30度を突破するかもというドピーカン。梅雨で湿度が高いので、自転車を組み立てているだけで汗が流れます。この暑さが、あんな悪夢を引き起こすとは……この時は考えもしませんでした
なにはともあれ、長丁場になるのは間違いありません。余裕をみて、9時前にスタート。塩山駅から北へと進みます。
山に入る前のコンビニで、ガッツリと補給食を買い込みます。なにせ、大弛峠は登り始めると自販機すらなく、湧き水がせいぜいという過酷なヒルクラポイント。登坂経験者のDeroさんに「ダブルボトルでも足りなくなって、背中にペットボトルもう1本あっても良いくらい」と聞いていたので、容量多めのミネラル麦茶もチョイス。
頂上に自販機や道の駅や土産物屋的な食事処すら無く、あるのは山小屋だけで、そこでカレーは食べられるという事前情報ですが、山小屋が営業している保証も無いので、お昼ごはんのおにぎりも買い込みます。
というかさ、俺達自転車でスタートして、普通に道路を走って、到着した場所に山小屋しか無いって、日本語おかしくない? 今から俺は何処に行くの?
コンビニを出発。ここからクリスタルラインという道に入り、いよいよ登坂がスタートするらしいです。クリスタルライン……素敵な名前です。さぞやクリスタルなラインなのでしょう。
案内板にクリスタルなライン感がまるでないのが不吉以外のナニモノでもない……
さすが山梨。
まずはぶどう畑のど真ん中を、ズドンとストレートな道が走っており、それを山に向かって北上して行きます。
ただ、おかしな事が……頑張ってクランクを回しているのに、一向にスピードが出ません。それどころかギアはまたたくまに軽くなっていき、クリスタルラインスタート数分でインナー開放。
それもそのはず、GARMINの斜度数字を見ると、7%、8%といった数字をウロウロしており、たまに9%になる事も。まわりが雄大な景色なので、平地なのだと脳が錯覚していますが、既に山はスタートしており、、かなりの斜度攻撃が加えられていたのです。
しかも写真を見てわかるとおり、その強烈な斜度の坂道が、直線でズドンと、見えなくなるまでズッとズッと続いています。今までの山道であれば、キツイ斜度でも「あのカーブを抜ければ少し緩くなるはずだ」と希望を抱きながら進めましたが、この道はそんな希望を一切抱かせません。
この先永遠に、このキツイ斜度をお前に食らわせ続けるという、無慈悲な宣言。逃げ場は無く、小細工は一切通用しません。長時間、この責め苦に耐えられるかどうか、その一点だけを私に問いかけてくるような道で、答えもYES/NOの2つしかありません。
さらに具合が悪い事に、木などの遮蔽物が一切なく、暑さがジリジリと追い打ちをかけてきます。他の皆は痩せているので大丈夫そうですが、体に水分が多いボンレスハムな私は、既に汗がダラダラ。まるでシャワーでも浴びたようなびしょ濡れ状態。あまりの汗の量にゆっけさんが「マジで大丈夫っすか?」と聞いてきますが、気の利いた返事もできないほど息が上がっています。
平地や下りが混じっていれば、体に冷たい風を当てて冷却ができますが、道は永遠の登り。体温がガンガン上がり、血液がオーバーヒート状態。心なしか、気持ちが悪くなってきました。これは、かつて山伏峠に挑んだめんまライドで、熱中症になった時と同じ……。このまま放っておいたら、両手両足が熱痙攣して、身動きがとれなくなります。
ご、ごめん、ちょっと休憩……
脚つき無し挑戦はどこへやら、まさかの開始約30分での敗北。
しかし、熱中症になったらライドどころではないので、背に腹は代えられません。
他の皆も、暑い事には違いないので、ヒャッハー!! 水だー!! 状態。道路脇の水路の水はとても綺麗です。
私はとにかく体を冷やさねばなりません。首筋や脇の下など、血管が太い部分を冷やすのが効果的であるため、ボトルの1本を水用に変更。汲んだ冷たい水を、ボトルから頭にぶっかけます。ヘルメットの下にキャップをかぶっているので、キャップが水を含み、ダラダラとほどよい水量を頭に浸透させてくれます。まさに天然のシャワー状態。
さらに、頂上が寒いだろうと、ダウンヒル用に持っていたレッグウォーマー(夏用)をサドルバッグから出して、水にじゃぶじゃぶと漬けます。これを絞らず、ダラダラと水がしたたる状態で、首にまきます。胸や背中が濡れてしまいますが、オーバーヒートした体温を下げるには好都合。
塩タブレットを舐めながら、しばらく休憩していると、気持ちが悪いのが収まりました。頭にさらに水をぶっかけつつ、体温を上げすぎないよう、心拍を注視しながら、スピードをさらに抑えて登坂を再開。
しばらく進むと、ようやく森が見えてきました。
背の高い木があれば、木陰も生まれるはず。直射日光を遮れば、気温も下がり、熱中症にもなりにくくなるハズ。……こんなにも森が頼もしく見えた事はありません。
案の定、山道に入ると日陰の世界。ホッとしたら、足がいくらか回るようになりました。会話のキャッチボールもなんとか可能に。いきなりのリタイア危機でしたが、これであればもう少し、先に進めそうです。
先ほどのぶどう畑のような「この先永遠に登り坂だよズドーン!!」という、無慈悲な視覚的攻撃は収まりました。しかしこの大弛峠、相変わらず平地や下りが一切登場しません。斜度は心なしか緩くなりましたが、それでも7~8%程度が基本で、鼻歌交じりにクリアできるような斜度ではありません。頑張れば前に進めますが、頑張らないと進めない。そんな斜度が、ずーっと続きます。つまり、ずーっと頑張らないとダメなのです。
熱中症は回復しましたが、永遠に続く登りが終わったわけではないのです。普通の峠ならば、4km、5kmも走れば終点です。しかし、この峠は30km。終わる気配どころか、中間地点にすら到達していません。
にも関わらず、下りや平地のご褒美は一切無し。あまりの無慈悲さに、喘ぐしかありません。しかし、不思議と恨めしいとか、恐ろしいとかいう感情は芽生えません。ただただ、この圧倒的なスケール感に平伏したくなります。今までちょっとした峠や、わずかな激坂をクリアして「やったー!」とか言っていた自分を、重みのある一撃で吹き飛ばすようなラスボス感。まさに日本一。格の違いを奥歯で噛み締めます。
路面は非常に綺麗。自動車は時折来ますが、台数はさほど多くありません。虫の声の合唱に包まれ、静かな森の中を、喘ぎながらひたすらクランクを回す、シュールで、不思議な充足感のある時間。
平地や下りがあってくれれば、いろんな妄想をする余裕も出るのですが、ひたすら登りなので脳内は完全に虚無。そのおかげか、心は不思議なほど落ち着いています。
時折森が途切れると、自分がどれだけとんでもない場所を登っているのかを、チラ見できます。
既に一度足をついているので、もう何度ついても同じです。山道に入ってから、既に2回目の休憩。本当に平地や下りが一切無いので、高負荷で回している足を、休める瞬間が一切無いのです。横方向に5kmほど進んだら、小休憩して、再び進む……というペースイメージ。
疲れて食欲が沸かないのでおにぎりはやめ、補給ジェルをチューチューやりながら、塩分と水分をガンガン補給します。こんな事なら、もっとジェル系の補給食をコンビニで買い込んでおくんでした。まさかここまで追い詰められるとは思っておらず……、気温の高さと、自分の持久力の無さ、胃の弱さをもっと考慮して食事を選ぶべきだったと深く反省しました。
森のなかの気温は、おそらく20度程度。体はだいぶクールダウンしてきましたが、それでも運動強度が高いので、体の中からの熱は収まらず、湧き水を見つけたらボトルに補給し、レッグウォーマーを浸して体にぶっかけます。湧き水がこれほどありがたいと思ったことはありません。
最初の頃は「もー勘弁して」とかつぶやいていましたが、そもそも半分も来ていないので、勘弁もクソもありません。泣き言も引っ込むような、問答無用の坂攻撃。
既に脳と体の神経伝達は遮断し、脳はスリープ状態。体だけが勝手に可動する、ゾンビモードに移行しています。このモードに移行すると、記憶が曖昧になる難点がありますが、とりあえずノロノロと前には進めます。
亀のようなスピードで走り続けてしばし……急に視界が開ける場所に到着しました。
中間地点、琴川ダムのようです。自販機があると嬉しいのですが、残念ながら見当たらず……
あったのは、丸太・ご自由にお持ちください
という、東京育ちの私には衝撃的な光景だけでした。
み…… みず …… 冷たい水を俺に……
再びゾンビモードでダムから少し進むと、小学校を発見。その向かい側に、なんと自販機がっ!!
エネルギー補給も兼ねて、ピーチネクターをがぶ飲み。甘くて冷たくて、泣けるほど美味くて生き返ります。「中間地点で義俺ギブアップでもいいかなー」とか思っていましたが、もう少し先に進める気がしてきました。
やっぱ無理な気がしてきたwww
鬼としか言いようがない峠です。気の持ちようとか、技とか、そうした小細工が本当に通用しない、例えるなら「腕立て伏せやってよ、5,000回」みたいな感じ。交渉の余地は無く、できるかできないか、ただそれだけなのです。
斜度的な変化の少ない峠ですが、琴川ダムを過ぎると、2%ほどプラスされ、10%台が多くなってきました。疲れきった体にはダメージ大きいですが、もう体の斜度計がぶっ壊れて、よくわからなくなってきました。
それでも歯を食いしばって耐え続けていると、ふいに斜度が4~5%程度の区間が登場。どうやらここから4kmか5km程度は、比較的斜度が緩いようです。
ホッと一息。それでも上り坂には違いありあせんが、スタートからずっと強烈な坂を登り続けていたので、このユルさだと、下り坂にすら感じます。風景は、軽井沢の高原を走っているかのよう。碓氷峠にも、少し似ています。
平和な高原区間はあっという間に終わり……。
再び、10%程度の強烈な坂が現れました。獲得標高は1,500m、1,600あたり。都民の森や風張峠の高さは、とっくに突破しています。残りの距離は5km程度でしょうか。高原区間で少し休められた脚の貯金が、瞬く間に消費されていきます。
マズイことに、両足が攣りそうな気配がしてきました。熱中症からの熱痙攣ではなく、単純に、高負荷をかけすぎたためでしょう。自転車を一度降りて、ストレッチ。引き足を使いすぎているので、太ももを解禁。同じ姿勢をとり続けないように、ハンドルを握るポジションも頻繁に変えながら、再びヨロヨロと登りはじめます。
もうスタミナはスッカラカン。標高2,000m付近になると、風がヒンヤリとする気温なので、体の温度も下がっていますが、もはや脚はロクに動きません。口からも「あうー」、「ああー」と、言葉にならないうめきが漏れるだけ。
の、残り2km……
これが普通の峠なら、もうちょっとだと言う気になれますが、1kmが「ふざけてんのか」とキレそうになるほど長く感じられます。斜度は落ちず……それどころか、コーナーでは11%、12%になる事も。
既に、斜度が緩くなる期待なんて頭から消え失せています。願うのは、この道が一秒でも早く終わってくれる事。そして、ゴールにたどり着く前に、両足が攣って身動きがとれなくなるのだけは避けたい……。まだ動く筋肉だけを、体と相談しながら使うようにして登っていきます。
木々の背が低くなってきた事もあり、見晴らしは良好。しかし、それゆえ「これから進む先の道路」まで見えてしまい、「ここまで来て、まだあんな場所まで行けというのか」と、心が折れそうになります。
しかし、既に高度は2,200mを突破。残りは100m程度。ここまで来てリタイアやUターンはありえません。這ってでも頂上には辿り着いてやります。
GARMINのルート表示を見ると、どうやら最後の直線に入ったようです。しかし、頂上付近の道路は、峠の駐車場からあぶれた自動車の違法駐車だらけ。
景観的には最悪ですが、もとより、華麗なラストスパートを決める余力も無く、ヨロヨロと駐車場へと到着。GARMINを見ると、標高は約2,300mを示していました。
つ …
… ついた ( ;∀;)
大弛峠・血の味指数:29
ヨロヨロと自転車に鍵をかけて休憩……の前に、やることがあります。
前述の通り、到着した峠は単なる駐車場。風景もへったくれも無いのですが、駐車場から10分ほど坂道を徒歩で登ると、「夢の庭園」という、なんともファンシーなネーミングの、素晴らしい景色が楽しめる場所に行けるのだそうで。
とりあえず、登山を開始します。
息は整えてから登り始めたハズですが、階段を登っていると、あっというまに「ゼーゼー」と呼吸が乱れます。それもそのはず、ここは2,300mの世界。空気が薄いのです。2,000m付近に到達してから、最後のヒルクライムが特にキツく感じたのは、もしかしたら、空気の薄さも関連していたのかもしれません。
息も絶え絶え、脚も攣り気味……はやく庭園についてくれと祈りながら登っていくと、ふいに、今までと明らかに違う、強い風が体に吹き付けてきました。
(パノラマ写真)
すっげえええええええええええええええ
表現が最悪ですが、絶景を通り越して、アホみたいな景色です。
連なる稜線が、本当に奥の奥まで見通す事ができます。地面のしわ寄せのように、盛り上がった山肌の1つに、自分がへばりくっついている事を、ひと目で強烈に実感できる大パノラマ。山の景色は今まで何度も見ていますが、こんな景色にお目にかかった事はありません。
そしてみなさんお忘れかもしれませんが、私は登山ではなく、自転車に乗ってここまで来たのです。ホントマジ、なんなんだココは、現実の世界かコレ。
呆然と風景を撮影していると、後ろから皆の声が。
どうやら、巨石に座って、記念撮影するのがセオリーのようです。
よいしょ。
高いところは嫌いじゃないですが、景色が景色なので、さすがに足の裏がゾワゾワします。天然の展望台と言うより、気分は山伏の修行と言った感じ。岩の上であぐらをかいていると、自分が役行者になったような、全能感にとらわれます。
ここに来るまで、本当にキツかったですが、そのキツさを帳消しにしてくれる絶景。天候に恵まれたのも、幸運でした。
上の写真で、どれだけとんでもないところに、この庭園があるのかわかると思います。左下にあるのが、登ってきた階段。右上の森の中に白いコンクリートが見えますが、アレが、大弛峠のてっぺんの駐車場。つまり自転車が置いてある場所です。なんかもうパースも遠近感も狂って、わけわかりません。
落ち着いたら、お腹がペコペコな事に気づきました。背中のおにぎりを食べてもいいですが、せっかくなので、峠にある山小屋にお邪魔して、カレーを頂く事に。
出来上がりを待っていると、次々とお店に入ってくるのは登山客ばかり。皆、宿泊をするようで、これからの登山計画などを話しています。
私に登山趣味は今のところないので、山小屋に泊まったこともありません。よく、NHKのドキュメンタリーなんかで見る光景で、「あー、山小屋って、ホントにこんな感じなんだ」と、なんだか嬉しくなりました。
ちょww カレーうめえwwww
山小屋なので、てっきり素朴な、フツーのカレーが出てくるのだろうと思っていたら、スパイスの効いたとっても美味しいカレーが!! 皆も「うめえうめえ」と、あっというまにペロリ。疲れた体に、栄養が染みわたるようです。
ここでちょっと相談。
予定していたルートは、来た道をそのまま戻らず、水ヶ森という山のほうにちょっと遠回りするルートを通り、塩山駅に戻る……というもの。しかし、そのルートにはわずか(300~400m程度)の登りが含まれています。
私はぶっちゃけ、そのわずかな登りも、もうクリア不可能状態。ゆっけさんも(スパイなので本当はクリアできるはずですが)もうギブアップとのこと。
そこで、私とゆっけさんは、来た道をそのまま下る事に。残りの、余力があるへまさん、HAOさん、りょうさん、トミィさんは、当初のルートで下る事になりました。
ダウンヒルをしていると、大弛峠の恐ろしさを改めて実感します。当たり前ですが、平地がまったく無く、本当にずううううううううううううううううううっと下りなのです。調子に乗るとスピードが出すぎて危ないので、ブレーキをしっかり使い、スピードは控えめでゆっくり下っていきます。
そもそも、こんな凄まじい峠、めったに来れません。急いで下る理由も無く、登りではヘロヘロになってロクに撮影もできなかったので、頻繁に立ち止まって、撮影しながら下るとしましょう。
撮影といえば、ゆっけさんが最近デジカメを買いました。機種は私の真似っ子で、RX100M3……ではなく、1つ前のRX100M2のようです。
おや、ストラップもどこかで見たことあるような……。
ゆっけ@最優先事項@yukke_memo@akiki1 @toorudayon @akia1025 @HELL_HOUND_No9 ストラップ選びはトライ&エラーらしい http://t.co/NgwP6F9xaA
2015/06/11 23:25:36
へるはうんど@精神は木崎湖在住@HELL_HOUND_No9@akiki1 @yukke_memo @toorudayon @akia1025 いきなり俺の結論パクってやがるwww
2015/06/11 23:30:00
そういえば、登ってる時に、良い感じの古い橋を道路脇に見つけたんです。
お、これか。確かに苔むしてて、渡ると神隠しでヤバイ世界に行っちまいそうな橋だね。とりあえず、俺が渡ってみるから、撮影してよ。
え、でもどうやって撮影すれば……
まあ、ゆっけさんの感性のおもむくまま、お任せします。
走るよー
ど、どう?
ふつー
ひどいwww
じゃ、俺が撮るからゆっけさん走ってみて。
ふぁい
あーなんか、良い感じ
進行方向の空間を広くとると、先に進む感じになって、「この先に何があるんだろう?」感も出る。あとは全体的に露出をアンダー目で撮って、わざと橋の下とか暗部を潰すと想像の余地が出るよ。この写真の方が、「その後、ゆっけさんを見たものはおらなんだ」感が強いでしょ。
なるほど
さっき命を救われた自販機の近くの、この小学校もノスタルジックで良いねぇ……。
なんかこう、大分麦焼酎・二階堂のCMみたいな、郷愁を誘う、ふんわりした夢っぽく撮りたい。ゆっけさん、絞りをめいっぱいあけてみて
こう?
そう。そんで腰をぐいっと落として、例えばそのへんの花をメインにして、校舎を校庭をわざとボカすかんじで。もっとしゃがんで……
あーなんか、うしろがボケてる
そうそのままシャッター切って
ええね
でも右の木がこんなにいらない。あと校庭の広さがわかんないので広角にして、ホワイトバランスもノスタルジックに赤っぽくするとたぶんもっとイイ。
こんなかんじ
とか遊んでたら、塩山駅についたらすっかり夕方www
駅前で喫茶店探して、遠回りしてるへまさん達待ってようかとか言ってたけど、もうすぐへまさん達到着するらしいですよww
……
かくして、大弛峠チャレンジ、無事終了。脚つき無し登坂といういつもの目標からすると、惨敗もいいところですが、あれを休憩無しで登るのは、私にはハッキリ言って不可能です。序盤の熱中症もどきが無ければ……、もっと体調が万全であれば……なんて事も考えなくもありませんが、高負荷の登坂を連続で長時間すると、オーバーヒートするという私の欠点が招いた事象なので、ある程度気温が高い時期に挑む以上、遅かれ早かれ同じ事は起こるでしょう。
逆に言えば、気温や湿度が高い時に、長距離の登坂をする時は、体がオーバーヒートするよりも前に、早めに水をかけながら登るというテクニックの大切さを痛感した次第。ボロ負けではありますが、得る教訓も多いライドでした。いやぁそれにしても、辛さも、長さも、景色もまさに桁違い。数ある日本一の1つではありますが、日本一はやっぱり、日本一でした。
川崎市在住のものです。
昨日、行ってまいりました大弛峠!
しかも、何をトチ狂ったか自走で・・・汗
柳沢峠越えからの大弛峠はまさに地獄そのものでした。
さすがに往復はできませんでした。笑
記事を拝見していると、行動範囲が被ることが多いので
いつか、どこかの峠でお会いできるかもしれません。
その時を楽しみにしていたいと思います。