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前回までのあらすじ
奥多摩の魔界・都民の森。一度は倒したはずのラスボスは、鶴峠 + 風張峠という手下を従え、再びへるはんの前に立ちはだかった。獲得標高2,000m、以前の2倍の戦闘能力を備えてよみがえった裏・都民の森との死闘。これにへるはんは辛くも勝利した。
……これで奥多摩に残る強敵は四天坂の一角、風張林道のみかと思われた。
だが、アレフガルド街に帰還したへるはんは驚愕する。裏・都民の森を倒したハズが、街に日の光は戻っておらず、永遠の夜がまだ続いていたのだ。悪夢は終わってなどいない。奥多摩のさらに奥地で、巨大なノコギリを手にした奥多摩最恐の敵が眠りから目覚めようとしていた……。
都民の森の西側には鶴峠があり、うまく休憩を入れれば2,000mも登れるという事が、前回のライドでわかりました。
ふぁい
そこで今回は東側を探検したいと思います
せんせぇ見えません
心の目で
ちょwwwwwwwww
なんかあるwwwwwwwww
ピヤアアアア!! 地図にない道はピヤアアアアアア!!!
ああ、雪山遭難の記憶が蘇ってへるさんがPTSDってしまった
この道らしきものをずーっとたどっていくと、なんと!! 都民の森に行く途中に通る、数馬の湯あたりにつながっているっぽいのです。
未舗装路は少しで済むっぽいから、きっと大丈夫。というわけで、今回は檜原村役場を都民の森とは逆に右折し、藤原集落に行き、風張林道の入り口を見学。そこから、この未舗装路を通って入間白岩林道を抜け、数馬の湯まで出てみたいと思います。
出れるのかな……ほんとに
出た後で、都民の森に登り、風張峠も登り、奥多摩湖方面へダウンヒル。そこから東に少し進んで、鋸山林道を登り返して、武蔵五日市駅方面に戻ってくるコースになります。
鋸山(のこぎりやま)りんどう!?
名前がもうヤバすぎるwww
のこぎりって!! ギザギザしてるに決まってるじゃないっすか!!
どっかのサイトで、 「平均斜度10%以上で10km近くあって都民の森と同じくらい標高高くて、風張峠余裕で登れる人じゃないと無理」って書いてありましたよ確か。
ちなみこのこのコース全部走ると獲得標高どんくらいなの?
2,300m
人類は一回のライドで2,000m以上登ると左足がモゲルってこないだわかったじゃんか!! なんで増えてんの!?
過去最高にヤバイのは間違いないのできっと楽しいよ。奥多摩でたぶん一番キツイコースだと思う。俺もたぶんこれが限界だと思う。
……
というわけで、今回も武蔵五日市駅から物語は始まります。こんな恐ろしげなコース、武蔵境BCから自走なんて体力的にも時間的にもクリアは不可能なので、最初から輪行一択。8時過ぎにはすでにスタート地点です。
メンバーはへまさん、インナーロー教団(俺+スパイ)、と~るさんの4人。途中のクライモリの中で神隠しに遭い帰還が48年後になる可能性が52%ほどありますので、被害は少人数で済むに越したことはありません。
あ、と~るさんがいつものジーパン姿ではなく、覚悟を決めたレーパンになってる
なんかいろいろ落ち着かないんですがww
と~るさんトランポなんだから恥ずかしいとか言ったら甘えだよ。俺らなんかこのカッコで電車だもの。女子高生とかドバっと乗ってきて、もはやキョドらない境地に到達したよむしろ女子高前の駅から輪行をしたいくらいだ。
鋼の心臓過ぎるwww
それよりへるさん、鋸山林道(大ダワ)って山奥過ぎて熊出るらしいですよ、熊
大丈夫、熊よけ用の気づきベル持ってきたから。
すげえww
でも俺登るの遅えから、チリンチリンやっても、前方にいるゆっけさん達まで熊よけの効果が及ばないと思うから。道の先で熊に食われたらTwitterでDMしてきて。俺今熊ストマックナウwwみたいなやつ。
まずはラストコンビニで補給の買い出し。最近お気に入りの“赤飯おこわ”を背中にムギュッとして、檜原村役場を目指します。
なんか……今日速くないっすか
いつにも増してペースが速い、役場まで時速30kmってどういうこっちゃ
と~るさんが後ろについてるから、へまさんのスピードがどんどん上がっていくwww
このあと地獄なんだから付き合うのはやめよう。25km以下で行こう。
そうですね。……あ、役場で2人が待ってる。
あー疲れた……。ゆっけさん先頭行って、行ってくれないともう俺クタクタだから。
だから誰が後ろにいても自分のペースを守ってww
役場を右折すると、豆腐のちとせ屋さんが登場します。豆乳やおからドーナツ、豆腐のソフトクリームなんかが楽しめる、檜原村ローディー御用達のお店。しかし、今日は寄らずに先に進みます。ちとせ屋さんは行ったことがあるけれど、この先は行ったことがないという人も多いのではないでしょうか。
道の雰囲気は都民の森に登る時と良く似ていますが、こちら側は下りも多く、都民の森ほど「ぐへぇー」と閉口するほど辛くはありません。ただ、舐めて雑なペダリングをしていると、地味に体力を削られる……尾根幹みたいな感じでしょうか。
私は以前走ったことがあるので、なんとなく把握していますが、意外にも残りの3人は初めて通る道だとか。「意外にキツイ」、「へるさん楽勝とか言ってたけど結構長いじゃないですか」などと言いながら走っていると、時折「きのこセンターまであと◯km」という看板が。このきのこセンター、何を隠そう、四天坂の1つ、風張林道の途中にある施設。つまりこのあと◯kmが、最初の目的地までの距離とほぼ同じというわけです。
そうこうしていると、藤原の集落に到着。
確かに坂道だけど、オーラがないよ
ここで間違えたんですか? 恥ずかしい
おまえら
ちなみにここ登ると何があるんですか?
誰かの家ww
かつては坂道を見上げただけでテンパッて、「これこそ風張林道に違いない!!」とか言っていましたが、確かに今の感覚で見ると四天坂特有の“ヤバイオーラ”はあまり感じません。そして本当のヤバイ坂である風張林道と対面するには、ここからさらに奥に進まねばなりません。
へるさん
なによ
今日はこのまま進んで風張林道の入り口だけを見学して、その横にある地図にない林道を走るんですよねこれから
そうよ
つまりまだ坂メインディッシュ的には何も始まってないんですよね
そうね
にしては……おかしくないっすか。スゲエ辛いですけど
やっぱり? 俺の気のせいかと思ってたけど、クソ辛いねなにこれ。
奥に進むと現れたのは、斜度9~10%程度の坂道地獄。うねうねとしながら森の奥へと続いています。藤原集落までの広い道と明らかに雰囲気が変わり、田舎の小道という空気。すぐに現れるかと思っていた風張林道はなかなか登場しません。
さすが四天坂……入り口にたどり着くまでにこのオーラ……ハンパねえわ
やばいねこれww
あまりに暑いのでインナー脱いで半袖に。もはや真夏の恰好ですが、斜度がキツくて汗が吹き出し、それでも体温が下がりません。
……これはさすがにジョークですが、心境的にはこんな感じの斜度が続きます。
ゆっけさんと2人で恨み言をブツブツ言っていると、視界の右上方、山の壁の上に白いものがチラチラ見えはじめました。鳥肌が立ちます。そう、白いモノの正体はガードレールです。この先に風張林道があり、凄まじい斜度で登った先の道が、今、私の頭上に現れたわけです。冷や汗をたらしながらそのまま進むと……
でたあああああああああああああああああ
これやべえwwwwwwww
これぞ四天坂の一角、風張林道の正真正銘、本物の入り口。wikipediaで「激坂」と検索すると、右肩に写真が出ているのも納得のオーラ。今日はこれに挑む予定はありませんが、前に立っているだけで脚がすくみます。
ゆっけさん、斜度が何%くらいなのか知りたいからちょっと登ってきてよ。
なんで俺なんすか、へるさん行ってくださいよ。
俺はほら撮影しないといけないから
そうだゆっけさん行ってよ
行ってくださいよ
俺だけ行って脚使ったらこの先のライド死ぬじゃないですか!!
大丈夫俺達も行くから
ホントですか? 絶対ですよ
ほら後ろについていくから、行こう!!
……
…
やっぱりついてきてねえええええええええ
とかいうドリフ的なお約束コントも完了。試しに私も玄関くぐるところまで登ってみましたが、目に見えている最初の坂は、ビジュアルに反してさほどキツくはありません。ただ、左にカーブしたあたりからヤバそうな匂いがぷんぷんと……。
とりあえず、まだこの強敵と戦うレベルではありません。今回はここまでにして、大人しく先に進みましょう。
ちなみにここから先はどこに行くんですか?
ちなみにここから先はどこに行くんですか?
ここ
砂利置き場wwww
現れたのは案の定未舗装路。ここから、地図にない道、こと入間白岩林道のスタートです。
地面に散らばるのは小石と砂。幸い尖った大きな石は少ないようですが、もし踏めばパンクは免れません。注意深く大きな石を避けながら登坂を開始します。
恐ろしいのはこの悪路で、10%近く斜度がある事。舗装路と違い、後輪にトルクをかけすぎると砂ですべってズルっと空転し、前に進まないどころかバランスが崩れます。しばらくは「ひいいいいいいいい」っとテンパッていましたが、慣れてくると「これってインナーローゆるゆる登坂の練習にちょうどいいな」と思い直しました。
ペダルを回す時に、ゆっくり前に進む最低限の力を使うのがインナーローゆるゆる登坂の基本ですが、この道で力を入れすぎると、後輪がスベり、せっかく投下したパワーが前に進む事に使われず、無駄に消費された事がハッキリと実感できます。
ゆっくり、じっくり、過不足無く、前に進むために必要なパワーだけを脚に入れてクランクを回す。速度が遅くて左右にブレそうになりますが、そこは体幹を使ってこらえます。上半身や腕にも力は入れずに、だらりと進みます。逆にそれができないと、荒れた路面を安定してまっすぐ走る事はできません。
「サガンとかもそうだけど、マウンテンバイクで野山を走ってた人がバイクコントロールが上手になるってのは、たぶんこういう事なんだろうなぁ」というのが、こんな短い距離を走っただけでもよく理解できます。
「サガンとかもそうだけど、マウンテンバイクで野山を走ってた人がバイクコントロールが上手になるってのは、たぶんこういう事なんだろうなぁ」というのが、こんな短い距離を走っただけでもよく理解できます。
悪路にも慣れはじめた頃、唐突に舗装道路が。へまさんによれば、ここから先はもう舗装されているとのこと。未舗装躯幹は1km程度だったでしょうか?
いやぁ、当たり前に感じていた舗装道路のありがたみがよくわかります。とはいえ、人はぜんぜん通らない山奥、あたりには落石もチラホラ。石を慎重に避けつつ、前に進みます。
へるさん!!
なに!? 熊が出た??
カニがwww
カニ!?
わけのわからない事に、道路にサワガニがいます。奥多摩のハンパなさは重々承知しているつもりでしたが、さすがは謎の林道、自然っぷりの格が違います。
濃い緑を吸い込みながら、激坂をひたすら登り続けていると、視界が開けた場所に到着。彼方にある山の中腹を、へまさんとと~るさんが指差しています。
そこに向かってカメラをズームさせてみると……なにやら建物が。あそこが、先ほど我々が逃げ出した風張林道を登って行くと、中腹に現れるきのこセンター……らしいのです。つまり我々は、風張林道と同じ場所からスタートし、違う山の中腹の、ほぼ同じ高さまで上がってきているという事。
風張林道と、入間白岩林道、どちらの方がツライのかは比べてみないとわかりませんが、もしかしたら似たようなものなのかもしれません。
ちなみにこの謎の林道、最高高度は850m。都民の森よりも少し低いところまで登らされます。だがしかし、この林道はゴールまで進むと、都民の森の手前、数馬の湯あたりに出るハズ。数馬の湯は標高600m程度。つまり、せっかく850mまで登ったのに、ダウンヒルがあり、600mまで下らされるのです。
「あーなんで下ってんだよー」と、文句を言いながらダウンヒルを楽しんでいると、右側に凄まじい激坂が登場。なんでも浅間坂という民宿に至る道とのことで、ヒルクラマニアの中では有名なスポットとのこと。名前に坂がついてる民宿って……しかしこの斜度……鬼だ……
と~るさんとへまさんが嬉々として登って行っちゃったよ。もう1人、登る人の絵が欲しいなぁー。
へるさんは行かないんですか
こんな坂誰がのぼるか!!
じゃちょっと行ってみますよ、助走をつけて、せーの
ガチャン!!
ああああああああああああ!!
またチェーン落ちたwwwwwww
春の風物詩を眺めながら、ダウンヒルを終えると大きな道路に出ました。
間違いありません、見慣れた都民の森へと続く檜原街道。つまりここが数馬の湯です。
広くて綺麗な道路に出られた事が嬉しくて、「とりあえず都民の森まで行こっか」と、そのまま休憩を挟まず登坂を開始。恐ろしい話ですが、かつては到達するだけで瀕死だった都民の森を、いつのまにか途中通過ポイントの休憩所扱いしている自分がいます。
しかし、登り始めて休憩を挟まなかった事を後悔。お馴染みの旧料金所からの地獄区間。いくら登りに慣れたといっても、このラスト区間の辛さに慣れる事はありません。「都民の森よ……通過点扱いして悪かった、お前はやっぱり強敵だ……」などと思いながら、ゆるゆる登坂でクリアしていきます。
既に余裕で1,000m以上登っている計算になるので、疲れているのは当たり前。カレーパンと冷たい飲み物で英気を回復。ついでに、ラストコンビニで仕入れた赤飯おこわも腹に詰め込みます。
今日はここで終了ではなく、この後さらに登って風張峠をクリア。奥多摩湖側にダウンヒルをして、さらに鋸山林道(大ダワ)を登り返して戻って来ねばならないのです。しかし、モグモグやっていると、パラパラと雨が……次第に雨粒が大きくなってきました。
スマホで雨雲の状態をチェックすると、大きめの雨雲が檜原村地域に向かって幾つか進んで来ています。このままパラつき続ける程度であれば良いですが、かなり強く降る可能性もあります。一番困るのは、難易度の高い鋸山林道を登っている最中や、ダウンヒルをしている時に大雨に降られる事です。
今回はここで挑戦終了とし、都民の森からダウンヒルして駅へと帰るのが三十路のオッサンとしての大人な判断だと思いますが、いかがでしょうか。
俺は雨に降られても気にしないよ。寒いのはやだけど。
確かにここで引き返すのが大人ですよねぇ
俺達が十代後半とかなら、こんなトコまでせっかく来たんだし、どうせ汗まみれで登るんだから雨で冷やしてもらったほうが好都合だぜヒャッハー!! とか言って調子こいて強行して、帰りの輪行でずぶ濡れになって車両に乗り込んで、足元に水たまりができて、車掌さんに放り出されるってオチになりそうだわな。
ありそうww
じゃ先に進もうか
そうだね
そうですね
やっぱりこうなるのかwwww
今まで落石まみれの道なき道を進み、雪山で遭難しかかるライドもこなしてきたのです。頭のネジなど、全員とうに2、3本抜け落ちています。水がパラパラ降ってこようが、どうってことはありません。要するにダウンヒルで調子こいてスピード出してズルッ→アイキャンフライコンボを決めなければ、あとは汚れるだけの事。汚れたら洗えばいいのです。
周囲のローディーが「雨だから駅まで降りよう」とか「急いで下山したい風張林道を下ろうか」なんて言っている中、我々は雨合羽変わりにウインドブレーカーを着こみ、都民の森を出発。風張峠を登り始めます。
以前のライドで反対側は登りましたが、表側の風張峠を登るのは今回が初めて。斜度はやはりキツめで、都民の森のラスト区間がそのまま最後まで続くイメージ。ここまでダメージが蓄積してきた脚には正直ツライですが、ゆるゆる回していれば進めない事はありません。
雨も強くなり、早く登り切ってしまいたい欲求にかられますが、ペースを乱すのは厳禁。無心で回していきます。しばらくすると「この付近に林道出入口」の看板が。風張林道の出口、つまり、風張峠の頂上へと辿り着きました。
日頃の行いのせいか、このあたりに来ると雨がやみ、ところどころ日差しが。標高が高いせいか、雲の具合で降っているところ、降っていないところがクッキリ別れているようです。路面はドライ。濡れているとダウンヒルは怖いですが、これ幸い、雨が降ってくる前にと、奥多摩湖へのダウンヒルを開始します。
ぎぼぢいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!
路面が綺麗で道幅が広く、斜度が一定な奥多摩周遊道路。こちら側を登った時に、「この道をダウンヒルしたら気持ちいだろうなぁー」と思っていましたが、実際にやると凄まじく楽しいです。登っていた時は余裕がなくてあまり見えなかった奥多摩湖を見下ろしながらの長い長いダウンヒル。たとえこの先で、雨にドバっと降られたとしても構わない、そう思えるほど気持ち良いダウンヒルでした。
この気持ちよさは、都民の森→武蔵五日市駅よりも格段に上。1,000m登坂がギリだという人は、輪行袋持参で都民の森を目指し、奥多摩湖側をダウンヒルして、奥多摩駅あたりから輪行で帰る……ってライドも、楽しいかもしれません。
雨が大丈夫そうなので、下りきった湖畔の蕎麦屋さんで昼食&大休憩。続く、最後にして最凶の敵・鋸山林道に挑む鋭気を養います。
食後、幾つものトンネルを抜け、湖畔のアップダウンをクリアしていくと、ノコギリを手にした魔王が、我々の前に姿を表しました。鋸山林道、別名大ダワです。
ここで鋸山林道のスペックを見てみましょう。スタート地点は奥多摩から流れでたばかりの多摩川のほとりで、既に353mの標高があります。ここから、鋸山の頂上まで上がるのですが、標高はなんと! 約990m。都民の森と同レベルです。高低差は約640m。そんなに上昇するのに、距離は6kmほどで、平均斜度は約11%。グラフを見るとわかりますが、アップダウンはほぼゼロ。ズーッと強パンチで殴られ続けるような、かなりの鬼坂である事がわかります。
人気がまったく無く、道は荒れ気味、木々も鬱蒼とした、重厚な雰囲気。へまさんが好きそうな神秘的な感じで、熊の目撃例があるというのも頷けます。道の段差でサドルバッグにぶら下げた気付きベルがチリンチリンと音を立て、応えるようにウグイスが鳴く。それ以外は一切無音。
じっと立っていたら、森に溶けていくような感覚に陥るのかもしれませんが、体には凄まじい負荷がかかり続けています。肉体は限界まで酷使されているのに、意識は鼻筋を通って木漏れ日の中に霧散していくような乖離感。辛すぎて逝きかけているのを、別の自分が冷静に俯瞰しているような状態です。
坂スペックから予想していた通り、鋸山林道、マジでヤバイです。ゆっけさんもそうだと言っていましたが、登り始めた瞬間に感じる雰囲気が「和田峠にソックリ」。キツイ斜度でウエルカムパンチを食らってから、ずっと攻撃の手が緩みません。少しの平地も無く、蛇行をしたくても道が悪くて思うようにいかず、カーブではせめて斜度のゆるい外周を回りたくても、落石を避けているとそれもかなわない……。和田峠の上位互換のような激烈さです。
さらに、私はここまで入間白岩林道と都民の森、風張峠をクリアし、既に獲得標高は1,500mを程度しています。脚は売り切れ間近で、力を入れようにも、力なんて残っていません。そんな状態で、和田峠を超えるレベルの強敵に挑むのですから、脚付きの危険性も大。それどころか、クリアできる自信も揺らいできました。
本当にどこまで続くのかという長さ。斜度は変わらないどころか、徐々にキツくなっていきます。限界省エネ登坂は、極限まで出力を絞っていますが、次第にその出力では登れない斜度も出現。同じ姿勢でずっと登っているので、背中も痛くなり、時折たまらずダンシングを数回交えて筋肉をのばします。
ガミ夫の高度グラフを見ると、表示は700m後半。あと200mほど登れば終わるはずですが、数字の増えるスピードが遅いこと遅いこと。それでも歯を食いしばって進みます。
ようやく標高は800m台後半に。しかし、辛すぎて朦朧としてきました。「これは……マジでやばいかも……」と思い始めた頃、さらに道が荒れ放題に。ところどころ舗装が剥がれ、土が見えており、それが雨にあたってドロ沼のように。このラスト区間でのシクロクロスはキツ過ぎます。
前を走るゆっけさんに「ちょっとここらへんは道が悪すぎるから歩こうか、カットパンクしてもつまらないし」と話していると、「と~るさんがカットパンクしちゃったー」と、頭上からへまさんの声が。
見上げると、つづら折れが続く上空のガードレール付近に2人の姿。この悪路では無理もありません。まだ脚をつく限界まで少し余裕はありましたが、悪路を無理に乗り越えてパンクしてもつまりません。どのみちと~るさんがパンクしたところまで登れば脚をつく事にもなるので、潔く、ロードを降りて押して歩いてクリア。高度は900m台に入っており、既にほぼ頂上に来ていたようです。
鋸山林道(奥多摩湖側)、血の味指数:18.9
終わりかけた脚で挑んだので、指数は大幅に底上げされていますが、どのみちここに挑むには幾つかの峠を抜ける必要があるため、アクセスの難しさも含めてのこの数字です(参考値:東都飯能CCの激坂:19 / 和田峠:18.3)。
斜度や長さも強敵ですが、悪路でパンクの危険性も高いので1人で挑む場合にはキチンとした準備をしないとダメです。
いやー、カットパンク対策のタイヤブートが最近大活躍だわ。買っといてホントよかった。皆さんもポンプやチューブだけでなく、タイヤブートかガムテープはマジで携帯しておいた方が良いです。
心配した雨ですが、幸い鋸山林道にアタックした頃にはほぼやんでおり、結果としてたいして降られずに難所を抜けられました。
あとは、悪路を慎重にダウンヒルして、檜原村役場方面へと戻るだけ。途中、夏季に営業するのであろうロッヂの施設が沢山登場します。自販機も置かれていますが、この時期は可動していないので注意が必要です。
ダウンヒルの途中、へまさんが「面白いものがある」と停車。視線の先には川(神戸川)が流れ、その両脇に凄まじいサイズの巨石がせり出しています。これぞ、東京都の指定天然記念物“神戸岩”。確かに、見ようによっては石の戸が開き、奥から川が流れてきているようにも見えます。
岩場や滝のカッコイイ写真を撮るには奥に行く必要がありますが、濡れた岩場をクリートで歩くのは恐ろしいの一言。「押すなよ、絶対に押すなよ!!」と言いながら岩に登り、ゆっけさんに脇腹をつつかれるお約束をこなしていると、奥へと続く岩の道を発見。
岸壁には命綱的なチェーンが渡してあるので、それを掴んで皆で恐る恐る奥へと進みます。進まなくても焦らず、慎重かつ確実に。インナーローゆるゆる登坂と通じるものがあります。
俺たちなにやってんだ。
へるさん、この穴を別荘にしたらどうですか。ヒルクラ得意になれますよきっと。
即身仏しろってか
これがホントの茶川探検隊(仮)という感じの写真が沢山撮れた秘境ライド。
文明世界に戻ってこれました。
んーこの豆乳ソフト、何かに似てるんだよなぁー。
雪見だいふくのまわりのふにょふにょしたトコの味ですよ。
あああああああああああああ!! それだ!!!
おからドーナツマジうま
かくして、無謀かと思えた獲得標高2,300mのライドを無事完遂。しかし、予想通り、かつてない疲労度で、だいぶ無理をした感じ。やはり2,000mが今の私の限界なのでしょう。あるいは、もっと斜度が緩いルートで登り続けるのであれば、この疲労度も変わってくるのかもしれません。
いずれにせよ、前々回の鶴峠も含め、驚愕すべきは奥多摩の奥の深さ。知れば知るほど、異界や魔界が次々と表れ、皆、違った難易度や景色を見せてくれます。
都民の森へのルートは、ローディーが沢山いて、まさに定番コースといった感じ。しかし、今回我々が挑んだルートでは、ローディーの姿は皆無で、そもそも人影もほとんどありませんでした。マイナーもいいとこな林道ばかりを突き進んでいるので仕方のない事ですが、都民の森に飽きたら、こんなルートに挑んでみると新鮮で楽しいかもしれません。一人だと心細くてちょっとキツイかもしれませんが……。