苦手な坂も、少しは登れるようになりたい。けれどあまりキツイと練習以前に逃亡してしまう……。そうならないよう、貧脚に優しく、適度な練習にもなる坂を求めて放浪中なのはこれまで書いてきた通り。
いつもは自分で検索して「お、ココはどうかな?」と目星をつけ、一人でコソコソ走りに行っていますが、今回はちょっと趣向が違います。茶川探検隊のへまさんが、「尾根幹の近くで坂の練習にもなって、景色の良いコースがあるのでどう?」と誘ってくれたので、それにホイホイついていく事に。茶川さんと、ゆっこさんも参加する事になりました。
ただ、尾根幹と言えば、灼熱の夏場に単独チャレンジし、バターになったトラウマゾーン。あそこを走っている人は剛脚揃いという思い込みもあり、一抹の不安がよぎります。しかし、へまさんのコースは尾根幹そのものではなく、尾根幹を軸にしつつも、そこから離れた細い道をクネクネ行くというもの。俗に言う“裏尾根幹”というやつらしいです。
また、通常の(?)尾根幹は単なる幹線道路で、景色はいまひとつ。トレーニングにはなるかもしれませんが、走っていて楽しい場所でもありません。しかし、裏尾根幹は「景色的にも面白い」とのこと。どんなルートなのでしょうか。
お、コースマップが届いたぞ。
お、コースマップが届いたぞ。
あのー!! すいませーん!!
標高グラフが山切りカットで毛先が歯と歯の間にくまなく密着するビトイーンライオンみたいになってんですが、これは私が乱視だからでしょうか。
……そうですか。大丈夫ですか。そうですよね、平坦な多摩川CRからちょこっと入った場所に、そんな小刻みに昇り降りを繰り返すようなキルゾーンがあるわけないですよね。わかりました。すいません取り乱して。
スタート地点はいつもの武蔵境BCです。
お、ゆっこさんのバーテープが新しくなってる。
あ、これがマッキーで赤く塗ったCO2ボンベホルダだね。
どうよ、これでもう赤黒の調和は崩れないのだ!!
でも、上から見ると緑のパーツがまだチラッと見えるよ?
アヴァあーああああさsじゃい!!!!(色彩調和崩壊発作)
は、早く家に帰って黒いマッキーで重ね塗りしなければ。
色彩的持病はさておき、とりあえず尾根幹へ向けて出発。そこから多摩川CR方向に進み、まずは矢野口を目指します。
矢野口からまっすぐ進んで町田街道へと繋がるのが尾根幹ですが、へまさんは冒頭からいきなり脇道にそれていきます。アップダウンが連続する尾根幹本線とは違う、平坦な世界。楽ちん楽ちん。
車通りの多い尾根幹と異なり、車も人の姿もまばら。「一本横道にそれると、こんなに静かになるんだ」と思いながら、路地裏を進んで行くと……
!?
いきなり結構な斜度の坂が登場。まだ元気があるので、なんてことはない顔で登りますが、何の前触れもなくいきなり襲来した坂なので足がビックリしています。
少し登ったら、今度は急なダウンヒル。
……それが終わった直後に
ちょwwwwwwwwwwww
ちょww まっwwwwwww
……このあたりで薄っすらと理解しました。
尾根幹というのは、その名の通り、山の尾根、人間で言えば背骨の上を通るような道路。へまさんが編み出したこのルートは、その背骨の上をまっすぐ走るのではなく、尾根の上に登ったら、すぐに降りて、また登り、また降りて……というのを小刻みに繰り返しなら、背骨ラインにまるでアサガオのツタがからまるように先に進んで行こうというわけです。
激坂と言っても、てっぺんまでは100~150m程度しかありませんが、斜度が急なため、気合を入れないと途中で脚をつきたくなる誘惑に負けてしまいます。既に脚をついている隊長の姿が見える気がしますが見なかったことにします。
ただ、へまさんルートが絶妙なのは、このキツイ斜度の坂が例えば都民の森のように、ひたすら続くのではなく、すぐに終わるところ。つまり、「あーもうダメ、死ぬ、脚つくわ。え? ダメ? 脚ついたらダメなの? いや無理だってもう。つくよ俺は。つかせてホント、お願いだから。3万、3万やるから」という、やぶれかぶれ心情になる一歩手前で坂が終わるわけです。
終われば、ご褒美のハイスピードダウンヒル。でも、そこで一息ついたら、すぐにまた音を上げるギリギリのヒルクライム。そしてご褒美、そして試練、ご褒美、試練……のエンドレスエイト。
そしてもう1つ、驚くべきはこの景色。尾根幹は、多摩センターの街の裏側という感じで、無味乾燥なコンクリートの世界ですが、角を1つ曲がっただけで、いきなり現れるトトロの世界。里山の緑の中をヒーヒー言いながらヒルクライムしたら、新興住宅地の裏手っぽいところに出て一気にダウンヒル、角をまがったらまた里山でヒルクラ、住宅地でダウンヒル……のエンドレスエイト。
脚と脳に、試練とご褒美、田舎と都会を交互に与えるという、なんとも摩訶不思議なルート。もはや自分が何処を走っているのかサッパリわかりません。
どういう急カーブだ……そしてどういう斜度だこれ。
というかシクロクロスwwwwwwww
ほんとにドコなのここwwwwwwww
あー俺、ここ知ってるよ、サツキとメイがトウモロコシ持ってああだこうだやって、迷子になって、おばあちゃんがナンマンダブしてた池の先だよ。
前を向いているとトトロゾーンですが、後ろを振り向くと、ヒルクラの連続でオーバーヒート気味の隊長の背中越しに、蜃気楼のように多摩センターあたりのマンションがニョキニョキと立っています。
前を向くとこの景色。
後ろ向くとコレ。
そして交じり合う …… なんなんだこのゾーンは。
しばらく進んでいくと、農地に住人があつまり、子供達が芋掘りをしている風景に遭遇。明らかに外界と時間の流れが違います。
神社で心を落ち着かせて……。
再び脇道にそれてプチヒルクラ開始。
どこ!? どこなのここ!!
どこかの大学のラグビー場の裏手にある森だか山だかの隙間のような道……だったハズ。このあたりから、白昼夢に脳がシェイクされて記憶が曖昧になっています。
夏にヒーコラ言って、「ビルと広い幹線道路と車ばっかりで、景色つまんない。写真撮りたくならない」とかボヤいていた尾根幹の、ほんの目と鼻の先にいるとは信じられません。このあたりの細かい地理に詳しくはありませんが、駅名で言うと、若葉台、黒川、栗平あたりでしょうか。
とどのつまり、もともとこの一帯は、このような里山的風景が広がっていて、そこに急に住宅地や尾根幹が出来上がったため、それ以外の場所との対比が強烈になっている……という事なのでしょう。
幾度めかのヒルクラポイント入り口で、へまさんがストップ。え? なになに、撮影スポット?
これのこと? 休耕田?
都心ではあんまり見ないカーブミラーがあるけど……。
撮影スポットって、記念撮影ってことかwwww
キツくても10%半ばくらいの斜度。とにかく坂の距離は短いので、なんとかここまで脚をつかずにクリアできています。ここまで来たら、最後まで脚をつかないで走り切ろうと腹をくくりました。キクミミさんが「座ってクルクルまわして楽にヒルクラするのも大事だけど、同じ姿勢で同じ筋肉ばかり使うのも良くないので、たまにダンシングを混ぜると良い」と言っていたので、最近はシッティングに固執せず、たまにダンシングを混ぜるようにしました。
そして、NHKの「チャリダー」で習いましたが、体幹を意識し、腕に力を入れ過ぎないようにするのも大事。帯体幹体幹……と念仏のように唱えながら前に進みます。どうすれば脚をつかずに登りきれるかというだけではなく、どうすればさっきの坂よりも楽にクリアできるか? 頭を使いながら登るのは結構新鮮な気分です。
コースも終盤に差し掛かると、白昼夢にも拍車がかかってきます。上の写真、普通に右にカーブしている道路に見えますが、よーく見ると、先頭を走るへまさんが、森と、それを抑えている柵の間にアプローチしようとしています。つーか、そこ道なの!?
道だったwwwwwwwww
というか、誰がこんなルートを見つけてくるんだwww
クリアし終わったら、ゆっこさんのペダルにデカイ石がはさまってるwww
シクロクロスかwww
もうどんな景色が出てきても驚かなくなってきました。
ハッキリ言って、檜原村とか都民の森とか、秩父とか、名栗とか、あのあたりよりも、ここの方がよっぽど大自然です。森を抜けたら2035年でしたとか言われても「やっぱりね」と言いたくなる神隠し感が充満しています。
グギギギ…… 脚はつかない。なんとしても脚はつかないぞ!!
脚はぜったいに…… あれ、剛脚のへまさんが脚ついてる。
へまさん「ごめん、道間違えたwww」
3人「オイwwwwwww」
正しい道に戻ってもこの激坂www
ゆっこさんと隊長の心が同時に折れたww
なんとか脚だけはつかずにジリジリと進みます。
以前、百草園の激坂に叩きのめされた事がありますが、あの後、ヒルクラ師匠と仰ぐDeroさんに「そもそも、ダンシングでも耐えられないような坂が出てきたらどうすればいいの?」と、聞いたところ、「車が来ない安全な道であれば、蛇行すれば斜度は緩くなる。そこで一息ついたり、勢いをつけて次の斜度に進むと楽」と教わり、脚をつくくらいなら蛇行戦法を積極的に採用。すると、今までならば「ムギギ……もーだめ」と脚をついていた斜度でも、なんとかクリアできるようになりました。時間はかかりますけども。
なんとか登りきって、ゼーゼーと一休み。
へまさんと「ゆっこさん、自転車結構重いのに根性あるなぁ」と言いながらパチリ。
う、牛が!?
なぜローディーが行くところには、牛の放牧やら、ジェラートやらが必ずあるのだろうか……。
隊長がヒルクラの連続で幽体離脱しかかっているwww
ああ…… 何かに似てると思ってたんだけど、今わかった。サウナだこれ。
サウナの中で限界まで我慢して、我慢して、
飛び出して水風呂にざぶーん。
そんでまたサウナに限界まで入って、水風呂に……
あの感覚とソックリです。
なんかいつのまにか、ゴルフ場の中通ってるんだけどwww いいのこれ!?
確実に言えることは、今ここでへまさんとはぐれたら、家に帰れねえ。
どう考えても、世界線が違う場所にいる気がする。
数えるのもおっくうなほどの坂をクリアし、いよいよ最後のキツイ登りのようです。
こ…… これは確かにキツイ …… しかも道幅がせまくて、新技の蛇行走行が使えない……
!? 車がキタ!!
道幅狭くて危ないので、仕方なく降りて、脇に退避。
仕方なくだから。脚ついたのは車が来たからだから。来なかったら脚をつかずに…… 最後まで登れ …… た……
斜度がキツイので、その場から漕ぎ始めるもの大変ですが、半ば意地でその地点からライド再開。「俺は今の車に救われたのだろうか」と自問自答しながら進みます。
そういえば、百草園に挑戦した時にも、ダンシングをしてもスピードが上がらず、徒歩以下の速度になり、楽車しそうになって脚をついてしまいました。
Deroさんによると、そんな時は低速時のバイクコントロール能力も重要になるとのこと。そういえば、Deroさん信号待ちの時、よくスタンディング(両足をペダルに固定したまま、前にも後ろにも進まずにバランス感覚と体幹でその場にとどまる事)をしていますが、低速でも倒れない能力があれば、激坂でも踏ん張れるという事なのでしょう。蛇行ができない場所では、低速走行と向き合う必要があり……まだまだ問題は山積しています。
それでもなんとか歯を食いしばって、最後の坂も脚をつかずにクリア。もうあとは激坂ないらしいです。はーよかった。
森林の中をダンヒル。そして、最後にご褒美のような絶景が待っていました。
もうマチュピチュ弱みたいになってんだがwww
景色的に、もう驚かなくなったつもりですが、この区間は思わず「ほわー」とか言いながら走りました。ホントに尾根幹の脇なのかココは……。
ライドの後は、パン屋さんでランチタイム。
うまうま。
結構パンにボリュームがあったので食べきれず、お店で袋に包んでもらい、ツール缶に収納して帰りました。ツール缶万能過ぎる。
帰りは尾根幹をストレートに戻ります。
戻りとはいえ、尾根幹なのでアップダウンの繰り返しはクリアしなくてはなりません。ただ、先ほどまでの坂と大きく違うのは下りの勢いを維持したまま登りに突入できること。辛い坂でも半分くらいは勢いで登れ、あとは落ちた勢いを継ぎ足すように漕いでいけば、歯を食いしばって登るような区間はわずかです。
夏に、あれだけ辛いと思っていた尾根幹が、もっと辛い坂をクリアした後だと快適に感じるふしぎ!
そしてダウンヒルと平地になって完全復活する隊長。流石平地番長、ダウンヒルの勢いで駆け上るのが早い!! ディープリムを活かして、平地での加速の伸びが以前より格段に速くなったのが後ろから見てるとよくわかりいます(上写真は信号ブッチして走っていたローディを激写するためにスプリントでゆっこさんを追い抜く隊長ww)。
というか、ゆっこさんも速いのでついていけねえww
というか、ゆっこさんも速いのでついていけねえww
……というわけで
山奥まで行かなくても、坂道があれはヒルクラの練習は可能。しかし、都心部では景色がイマイチ……と思っていましたが、探せば景色が良いところもあるもんです。非常に勉強になりました。
それと、山奥で激坂に挑戦すると、「家からこんな離れた自然の中で、こんなに脚を使っちまって、俺大丈夫なのか? 家に帰れるのか?」と不安になりますが、今回のルートであれば、ヘコタレたらすぐに街中に逃げられるという利点もありそうです。ただ、このルートを再び迷わず走れる自信がまったくないwww
ルートの復習をしつつ、多摩川CR走行時のアクセントとして、いろは坂同様、活用していきたい所存です。
ペダルの穴に、ジャストフィットする石がカポッと入ったような感じだったので
そのままポコンと抜いて大丈夫だったようですww
どんな道なんだって話ですけども(^^;;
>それにしても、すっかりヒルクライムにはまっているようですね。
>今回の道、怖いもの見たさで私も走ってみたいかもwww
登れないなりに工夫すると少し登れるってのはちょっと面白いですね。
でもあまりにも何本も連続で来ると「俺なにやってんだ感」が
頭をもたげてしまうのは相変わらずですが (^^;
探検隊で走ってみても良い道だとは思いますが、全部なぞるのは恐らく
記憶力的に無理というか、スマホのGPS見ながらでも自信が無いレベルww
いろは坂みたいに、代表的な坂を多摩川ライドのついでに取り入れるとかなら
アリかもしれないですね。