レンジファイダー用レンズの弱点は、最短撮影距離が長いことです。理由はレンジファイダーの距離計の精度などですが詳細は割愛。「最短撮影距離ってなに?」という人は、「被写体にどれだけ近づいて撮影できるか」と思っていただいて構いません。
安物コンデジや携帯電話は、機構的に鬼のように近寄れるので、そもそも「最短撮影距離」なんて気にしている人は少ないかもしれません。しかし、レンジファイダーカメラが全盛だった頃は、そんなに近寄って撮影するなんて一苦労。例えばライカMマウントのレンズでは、最短撮影距離70cm程度が当たり前。50cmまで近寄れて「どうだ凄いだろ」という世界です。
以前、このブログで購入自慢したフォクトレンダーの「NOKTON classic 35mm F1.4 MC」。お散歩レンズとして、仕事無関係の時はNEX-7のボディキャップ代わりに装着してウロウロしていますが、このレンズも最短撮影距離は70cmです。
別に風景などを撮影している限りは、70cmでも問題はありません。しかし、例えばお店で出された料理など、近くのものを撮影するのは一苦労。だって70cmですよ? 70cm!! テーブルに置かれた料理を、椅子に座ったまま、70cmカメラを離して撮影しようとすると、自分の頭よりも高く持ち上げて撮影せねばなりません。当然ファインダーも見えないし、「あの人なにやってんの?」という目でも見られます。諦めて椅子から立ち上がって撮影しても良いですが、そんな面倒なことしてる間に料理が冷め、麺がのびていくのも辛いです。
そんな状況打破ツールとして、今、一部のカメオタの間で話題なのが「ヘリコイド付きのマウントアダプタ」です。マウントアダプタは前にも書きましたが、通常取り付けられないレンズを、カメラに装着できるようにするリング状の下駄のようなもの。これに、ヘリコイド(簡単に言うとレンズを前にせり出したり、引っ込めたりする機構)を付加した製品がイロイロ出てきているのです。
少し前に注文して、ようやく到着したのがHawk's Factory製の「Eマウント用 補助ヘリコイド付 Mアダプタ(ノブ付) Ver3」。NEX-7のEマウントに、ライカMマウント用のレンズを取り付けるアダプタに、ヘリコイド機能を入れたったというモンです。
下の写真、左がヘリコイド付き、右が今まで使っていた単なるアダプタ。素材やデザインの違いは別として、左のアダプタには、上部に"ノブ”がついているのがわかります。
というわけで 「NOKTON classic 35mm F1.4 MC」に装着するとこんな感じ。
百聞は一見にしかず。適当なもんに、できるだけ近寄って撮影してみましょう。まずは、今までのヘリコイド機能無しのアダプタを使った写真。
角度を見るとなんとなくわかると思いますが、70cm離れなければならないので椅子に座って撮影はできず、立った状態で下を向いて撮影しています。なお、NEX-7に35mmのレンズをつけると、約50mm相当になります。
んでヘリコイド付きアダプタ。
寄れすぎだろwwwwwwwww
部屋にあった30cm定規で適当に図っただけですが、おおよそ25~26cm(センサーまでの距離)まで寄れます。「凄い」と聞いてはいたし、「寄れるようになるんでしょ?」と頭ではわかっていましたが、実際に使ってみると凄まじい衝撃。レンジファイダーの銘レンズ群が、マクロ撮影し放題になり、F値の明るいレンズでは、今まで撮れなかった広角接写でボケ味を活かした撮影が撮り放題になるわけです。
なんでヘリコイドでレンズをせり出したら、最短撮影距離が短くなんだよという説明は鼻血が出そうなのでググって何処かの親切なサイトを読もうとして3秒で諦めたりしてください。そういうもんです。つまりケント・デリカットみたいな感じです(大嘘)。
実際に装着した感じ。レンズのピントリングのノブ(上)と、マウントアダプタのヘリコイド用ノブ(下)の2段構成。むろん、慣れないとどっちのノブ触ってんだかわからなくなりますww
しかし、このマウントアダプタ結構良くできていて、ヘリコイドを使わない状態から、ノブを回してレンズをせり出す時に、少し固めの”引っ掛かり”を設けています。つまり、外をウロウロしながら風景を撮影する時は標準状態で固定してレンズ側のピントリングだけを操作。近くのものを撮影したい時は、逆にレンズ側のピントリングを70cmに固定。アダプタ側のヘリコイドノブだけを操作して接写すれば良いわけです。
というわけで、原宿の人気ラーメン屋「AFURI (阿夫利)」でテスト。塩ラーメンが基本ですが、チャーシューに特徴のあるお店です。
スゲー。普通に座ったままラーメン撮れるよ。このレンズで。信じらんねえ。
当然NEX-7であれば、背面ディスプレイや有機ELファインダーで、画像拡大、さらにピーキング機能なども組み合わせて厳密なピント合わせが可能。逆に、こんな芸当ができるミラーレスカメラがイロイロ出てきたおかげで、ヘリコイド付きマウントアダプタなんていう変態的なツールが生まれ、過去の銘玉が新しい表現方法を獲得できたとも言え、非常に面白いです。
このお店の特徴は、炭火で、その場で炙ったチャーシューを乗せてくれるところ。基本はトロトロのチャーシューですが、炭火焼肉にも似た、香ばしい香りがアクセントとなって楽しませてくれます。
麺は細麺で、塩ラーメンによくマッチしますが、個人的にはもう少しコシが欲しいかなぁという印象。
ご馳走様でした。
これだけ寄れるようになると、散歩用レンズとして求められる「小ささ」、「格好良さ」、「寄れる」を完璧にクリア。しかもF値も1.4なので夜の徘徊にも最適。とりあえずレンジファイダー用レンズをつけるなら、ヘリコイド付きアダプタを使わない手はありません。ただ唯一の難点は値段が高いこと。安けりゃ「とりあえず5個くれ」とか言いたいとこですが……。まあしばらくすれば価格破壊も進むかもしれません。