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【↓ダイジェスト動画はこちら↓】

 クルマと都会の喧騒から逃れるためにクランクを回し、ローディーが辿り着く場所といえば、林道かダムと相場は決まっています。私もロードバイクを買う前は、自分がこんなに何回もダムに行くようになるなんて、思いもしませんでした。

 私がよく行く多摩湖・狭山湖もダム。都民の森がある奥多摩にも、奥多摩湖という立派なダムがあります。荒川サイクリングロード沿いにある彩湖も、ある種のダムです。

 ただこのダム、広くて開放的なのは良いのですが、逆に言うと景色としては単調で、何度も行くと新鮮味がなくなってきます。ドローンを持参して、無理矢理新鮮味を出すという強引な手法もありますが、そんなアホな事をする人は滅多にいません。



 そんな今年の夏、Twitter上で「雨不足で干上がったダムから現れた、かつての道路や廃墟が神秘的でカッコイイ」というのが話題となりました。廃墟や廃道、廃神社などが大好物、もともとそういったものを撮影するための移動手段としてロードバイクを買った私としては、見逃せない話題。水不足自体は憂慮すべき事案ではありますが、枯れたダムに、新鮮な景色を見に行くというのも面白そうです。

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 思い立ったが吉日。水没した街の規模が大きいと聞き、宮ヶ瀬湖へと走り出しました。

 思い立つのが遅くて、真夏の一番熱い時間になってしまいましたが、深く考えない事にします。

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 宮ヶ瀬湖へ楽に行く道はないかと、考えながら走っていたら、仙川に遭遇。成城学園前とか千歳烏山とかあのへんにある川です。

 川がある事は知っていましたが、川沿いをじっくり走った事はなく……後学のために見物してみましたが、緑豊かな綺麗な川で驚きました。自転車で走るには、川沿いの道幅が少し狭いのですが、気分転換にブラブラするにはよさそうです。

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 仙川を離脱したら、ジリジリと焼けるような日差しに逆戻り。尾根幹はまさに地獄のような暑さ。GARMINの気温表示も、地球上とは思えない数値を叩き出しています。

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 あまりにも熱いので、ドリンク補給の間隔がぶっ壊れはじめます。ロードバイクで目的地へ走ると言うよりも、POPメロンソーダが売っている自販機間を自転車で繋いでいくと言った方が正しい状況。POPメロンソーダを繋げていった先に、宮ヶ瀬湖が現れるかどうかは神でしか知りえません。

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 つwwいwwたww



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 そしてわかったことが

 ダムは熱い

 理由:日陰がない


 確かに水が少ないように見えます。両脇に広がる山肌を見ると、いつもは水の下に沈んでいるのであろう、土壁が大きく露出しています。あのどこかに、かつての道路とか、廃屋とかがあるに違いありません。

 本来ならばテンションが上がる場面ですが、汗や謎の汁と共に、やる気がほとんど流れ出てしまったため、帰りたくなってきました。

 もうどうでもいいから、水没した建造物を何枚か撮って帰れればいいやというテンション。

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 おおお!!

 なんか道路を発見!!



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 いいですねぇ、暗い水の底へ水没していく道路。

 ディストピアSFで、荒廃して水没した都市などが出てくるとワクワクしますが、あの感覚に通じるものがあります。

 もっとグッと来る建造物が露出していないか? 欄干から下をチェックしながら、ロードを走らせますが、なかなか見つかりません。そしてこのあたりで、私は重大な事に気が付きました。

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 宮ヶ瀬湖クソデカイ

 試しに、彩湖とサイズを比べてみると

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 こんなにデカイ

 やばいです、外気温35度オーバーの中、日陰もないダムの周辺を、あてどもなく彷徨うだけでライフゲージはフルスピードで減っていきます。このままでは、カッコイイ廃墟を撮影する前に乾燥ミイラになってしまいます。

 そこで、スマホのマップを見ながら、しばし長考。
  • 俺は水が減って地面が多く見えている場所に行きたい
  • ダムは川をせき止めて作るもの
  • せきとめた堤防の近くではなく、その反対側の方が水は少ない?
  • 川の上流、つまり山が険しい方が、水位が減った時に地面の露出は多くなるのでは
 以上のような仮説から、ダムの山側のはじっこを目指してクランクをくるくる。

 具体的には「土山峠」というバス停の近くまで移動してみました。

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 なんか水がより少なくなった!!

 ビンゴかもしれない!!


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 (゚∀゚)!!

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 いやぁたまりません。

 人の力で自然を切り開き、人が使わなくなったものが、自然の力によって再び自然に還ろうとしている過程に儚さと美しさを感じるのが廃道や廃隧道、廃墟などの醍醐味ですが、ダムから現れた廃墟は、山奥にある廃墟とは少し雰囲気が違います。

 最も大きな違いは”綺麗さ”。普通の廃墟は、木々が生い茂り、森の中に取り込まれたようになっていますが、ダム湖の廃墟は森どころか木の1本すらなく、建造物だけが、文字通り洗われたような状態で露呈。この綺麗さは、異様であり、時が止まったように神秘的ですらあります。

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 さながら、核戦争で樹木が一瞬で吹き飛ばされた街に、数百年後訪れたような……Falloutシリーズのような景色が広がっていました。

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 もっと近くで見たくなりますが、ダムの底に降りるのはご法度。そこで、ブイーンとドローンを飛ばして撮影してみたのが、冒頭の動画です。

 ただ、橋の上からでも、このグッと熱いものがこみ上げる感覚は味わえるので、いつものダムも、新鮮な気分で楽しめるかもしれません。個人的には、沈んだ街はどんな場所だったのか? 宮ヶ瀬の歴史にも興味が沸いてきました。

 水不足は深刻な問題なので、本当は廃墟が見えない方がいいのですが、自然の雄大さを身をもって知るというロード趣味にとって、刺激的な1日になりました。


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