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※フラフラなので揺れが多くてすみません。全画面表示は酔うので注意!! 


 頭がおかしくなったローディーが集まると、95%の確率で「どこの激坂が一番ヤバイか」という話になります(俺ニールセン調べ)。

 私が良く出かける奥多摩や飯能方面にある“笑えるほどの激坂”と言えば、お馴染みの「子ノ権現」や、ボコボコにされた「鳥居観音」、尻子玉抜かれた「風張林道」、風張林道ミニバージョン「埼玉のラルプ・デュエズ」などが浮かびます。どこも登っているだけで解脱できそうなので「出家いらずの坂」とも呼ばれています。

 一方で、相模原方面をホームグラウンドにしているローディー達と話すと、和田峠などに混じって心の琴線に触れるワードが現れます。それこそ激坂十傑集に名を連ねるスタジオ・ズブリ作「ラピュタ坂」です。

激坂十傑集2

 ラピュタ坂……なんとまあ、冒険心をくすぐり、白い雲を眺めたくなる名前なのでしょう。そういえば、九州の阿蘇には、天空を走るようなロケーションの「ラピュタ道」があると話題になりましたっけ。きっとラピュタ坂も素敵なところに違いありません。相模原方面のローディーがラピュタ坂の名前を出す時、全員青い顔をしているのが気になりますが。

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 どこにあるんだという話ですが、このブログで何度も登場している“和田峠”の近く。和田峠は都心からアプローチしよとすると、多摩川CR→浅川CRと乗り継ぎ、八王子あたりから陣馬街道という道にスイッチ。そこをひたすら走ると到着します。

 その和田峠、いつもは登りきって休憩してUターンしていましたが、最近、道路工事が終わり、峠の反対側へ降りられるようになりました。その降りた先にあるのが、ラピュタ坂だそうです。

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 激坂と聞いて震え上がるローディーは多いと思いますが、天空の城ラピュタを100回以上視聴し、セリフも暗記している重度のジブリファンとしては、恐れよりも好奇心が勝ります。坂を登りきった先に本当にラピュタがあるのか。確かめてみないわけにはいきません。

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 一緒に走ったメンバーがHAOさん、トミィさん、キルハさんと、まともじゃない道スキーな人達揃いだった事もあり、ラピュタ坂に挑む前に、わけのわからない謎の林道にアタック。詳細はよくわかりませんが、雰囲気は抜群。斜度もそこそこキツく、和田峠ほどではありませんが、早朝フレッシュな脚をゴリゴリと削られます。

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 なんやらかんやら疲れた後で、和田峠の裏側、“裏和田”と呼ばれるゾーンに到着。山深い雰囲気ではありますが、点在する集落の数は多く、表和田よりもむしろ栄えている気がします。こんなところに、相模原のローディーを恐怖に陥れるラピュタがあるとは思えません。

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 ラピュタ王家の伝承によれば、裏和田を下りながら、八幡神社の脇にある川で右折。そのまま集落の合間を北へと少し進むと、ラピュタ坂の入り口に辿り着くそうです。

 飛行石の光が指し示す通りに進んでみると、斜度がグンと上がり、7%、8%のヒルクラに。風張林道もそうでしたが、大ボスクラスの激坂は、そこに辿り着く段階でこうした坂が現れるのです。

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 嫌な予感を感じながら進んでいくと、広間のような空間があり、HAOさん達が止まって何かを見上げています。私もそちらに目をやると……。

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e3e05b84竜wwのww巣wwwww


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 坂ではありません。螺旋階段です。

 目の錯覚で激坂にみえる場所も存在しますが、これは光学的な誇張ではなく単なる壁です。

 ここでラピュタ坂の坂スペックを見てみましょう。



 距離は711mと峠としては極めて短く、さいたまのラルプ・デュエズ(根性坂)の1.3kmや、苦労坂(東都飯能カントリー倶楽部の激坂/約1km)よりも短いです。ただ、一瞬で終わる激坂というわけでもありません。

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e3e05b84あほかwwwwwww



 ローディーには「平均斜度を調べて安心して出かけたら、実際の数値は+3%だった」という「嫌がらせ3%の法則」が存在しますが、ラピュタ坂は事前調査の数字の時点で、凶悪さを隠す気はありません。足を踏み入れたら、あとはもうずっと20%レベルの激坂を食わせ続けるぞという狂気の宣言です。

 普段は「そうですか、それじゃあ」で帰るところですが、この先にラピュタがあるとわかっているのに挑まないのはジブリストの名折れ。生きて帰ってきた父を信じて、竜の巣に飛び込んだパズーを見習わねばなりません。

 撮影していると、HAOさん達がどんどんスタートしていきます。坂の上から爆笑とくぐもった悲鳴が聞こえる気がしますが、気のせいでしょう。入り口の螺旋階段から先がどうなっているのか、まったく見えないのも嫌らしいところです。

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 広場をぐるぐる周り、ギアをお決まりのインナーローに戻してスタートします。入り口の激坂を、ダンシングでサッサと抜けてしまいたくなりますが、最初からパワーを使ってしまうと後のスタミナ配分がグダグダになり、かえって勝率が下がるのは今までの経験でよくわかっています。苦しさと恐怖に耐え、シッティングでゆっくりと進みます。

 25%に見えた螺旋階段は、実際に突撃すると15%。恐らく内側を走ると20%近くは行くでしょう。この斜度ならなんとかなるとホットしたのも束の間、ガーミンの数字は16%、17%と上がっていきます。

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 住宅の狭間を進むようなラピュタ坂。螺旋階段を抜けて一息つく暇もなく、目の前には20%を超える激坂のストレートが。その先はT字路になっており、左に道が続いているようです。

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 T字路まで這い上がれば、一瞬休憩ができそう。終わりが見えていることもあり、20%オーバーのストレートをクリアするためにダンシングを解禁。無駄な力を使わないように、ゆっくりと踏みしめるように立ち漕ぎして、T字路でシッティングに戻して呼吸を

e3e05b84整えられねえwwwwwwww

 

 左折すると間髪入れずに再び19%、20%地獄が再開。こんなところで連続ダンシングを使うわけにもいかないので、シッティングで無理矢理進みます。

 体幹は悲鳴をあげ、ハンドルが暴れます。悪条件は重なり、アスファルトはボコボコ。ひび割れもあり、タイヤが斜めを向くと、裂け目にハマって倒れてしまいそうになります。

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 超激坂の中、ひび割れていない部分を縫うようにしながら進む繊細なハンドルさばきも要求されます。倒れないのがやっとの体幹状態に、この難題はというほかありません。脂汗が浮かび、酸素が足りない肺に痛みが走ります。

 それでも我慢しながら進むと、足をついて苦笑いするキルハさんの姿が。さらにその先には、トミィさんとHAOさんも足をついているのが見えます。当たり前です。こんな場所で頑張って楽車しても何の得もありません。ただ、あのラピュタを前にして、そう簡単に勝負を投げ出すわけにもいかないのです。

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 声をかける余裕もないまま、3人の脇を抜けていきます。ちなみにこの区間もおそらく18~20%。体重が軽いクライマーなら、全てダンシングで抜けるのでしょうが、体重が重く、それもできない私は、前輪が浮かないように体幹で荷重のバランスをとりながら、ひたすらジリジリとシッティングで耐えるほかないのです。

 途中で休憩できる10%程度の斜度ゾーンがあれば、そこでじっくりと回復し、次の区間に備えるという持久力作戦が使えます。数kmの峠であれば、いかに瞬間的な斜度がキツくても、途中にそうしたゾーンがあるもの。

 しかし、短いラピュタ坂の場合は、そうした区間が一切なく、ひたすら20%レベルの激坂パンチを繰り出してきます。純粋にその攻撃に、私の体幹やら筋肉やらが耐えられるかどうか、極めて原始的で、テクニックもクソもなく、身体的な能力が人より劣っている私には一番苦手なタイプの敵です。

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 既に体幹は底をつきかけ、ぶるぶるとふるえる腕の力だけで自転車を前に向かせているような状態。見上げると、鬼のような激坂ストレートが先まで続いており、そのずっと先に左へカーブしているのが見えます。事前情報で、あのカーブの先にゴールがあると知ってはいましたが、そこに至るストレートを登りきれる気がしません。

 その時、私の胸にぶら下がっている青いペンダントが光輝きはじめました。きっと、王家の末裔である私のピンチを察知し、不思議な浮遊パワーを発揮し、負荷を軽減してくれるつもりなのでしょうが私のふくらはぎは砕け散りました。飛行石がカバーできる体脂肪率は20%までだったのです。


e3e05b84バルス!!!!!


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e3e05b84ラピュタ無かった!!!!



 これはもう、作戦がどうこう、登り方どうこうというレベルではありません。純粋に私の筋力が足らず、体が重いのが敗因。ドーラ一家に信用され、小さなタコで雲の外に出て偵察しろと命じられたのに、タイガーモス号から分離された瞬間に、荷重オーバーで海の底に沈んでいくようなものです。

 歩いて最後まで進み、ラピュタからの景色や、ここがなぜラピュタ坂と呼ばれているかの調査などしようかと一瞬考えましたが、いずれまたここに戻るような気もしたので、それらは再チャレンジ時までの保留としました。

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 その後は、HAOさんの案内で上野原方面に。和見集落という場所まで登りました。

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 この和見集落、なかなかキツイ斜度の末に現れますが、ひじょうにのどかな風景で、走っていると自然にニコニコしてしまいそうな暖かさがあります。

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 途中にわけのわからない激坂もありましたが見なかった事にして、さらに集落の先まで進むと、深い森の中に伸びる1本の林道が。

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 和見棚頭線というらしく、標高500mほどの集落から860mほど登るようです。

 ここも雰囲気の良い林道でしたが、斜度は常時10%オーバーのなかなかの強烈ぶり。ラピュタ坂やらなんやらで削られた足では、息も絶え絶えにクリアするのが精一杯でした。ただ、道幅は広く、クルマもほとんど通らず、快適ではありました。

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 しかし、ラピュタの謎に挑もうとした不届き者への呪いなのか、下りでパンク×2連続。日暮れの峠で、ひさしぶりにハニワ顔になり、上野原サービスエリアですた丼かっこんで蘇生。大垂水峠を越えて帰りました。

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 あー失敗した。登りながら、スマホでうすーく久石譲のBGMでも流しておけば、テンション上がって登りきれたかなぁ……。