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 息を止めてジッとしようとしても、なかなかジッとできないのが人間。特に、手に何か重いものを持ち上げた状態で、微動だにしないというのは困難です。本人は止まっているつもりでも、こまかーく観察してみると、ゆらゆら動いているもの。

 手に持っているものがカメラだった場合、そのゆらゆらで写真やビデオの映像がブレてしまいます。これがいわゆる“手ブレ”。写真の場合は被写体がズレて不明瞭に。ブレブレの動画は、見ていると気持ち悪くなってしまいます。

 最近、あまり買う人が少ないビデオカメラ。昔は子供が生まれると、成長記録をせねばと買い求め、幼稚園の発表会や運動会でも大活躍という製品でしたが、最近はデジタル一眼カメラの動画機能も充実。さらにスマホでも4K映像まで撮れてしまうので、本格的なビデオカメラを買おうという人が減っています。

 そんな人達に、ビデオカメラを買ってもらうためには、スマホやデジタル一眼では逆立ちしても実現できないような機能を搭載するのが手っ取り早い。そんな差別化要素として、ソニーのビデオカメラに搭載されているのが「空間光学手ブレ補正」という機能です。

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 なんだか難しそうな名前ですが、中身は非常にシンプル。レンズと光を受けるセンサー(撮像素子)……要するに、カメラで最も重要な2つのパーツを1つのユニットにまとめ、そのユニットがカメラの中で“うにょうにょ”自由に動くようにした機構の事です。

 このユニットは、人間の手ブレを検出すると、それにカウンターを当てるような感じで動作。超強力に手ブレを補正してくれます。要するに、手の上のビデオカメラの内部に、すんげぇ平衡感覚の良い、足腰が柔らかな小さな小人が入っていて、その小人がカメラをかついで撮影開始。地面である人間の手がゆらゆら動いても、「ほっ!! はっ!!」とか言いながら、足腰で吸収してブレない映像を撮影してくれる……みたいな感じです。

 便利なことこの上ないのですが、カメラの前玉を見ると、巨大な目玉のオヤジみたいなレンズが、ゆーらゆーら動いているという、ちょっと気持ちが悪い見た目である点でも、インパクトのある機能です。



 知っている人は知っているこの空間光学手ブレ補正。

 驚愕する事に、この補正機構が超小型化され、アクションカメラに搭載されました。6月24日発売の、4Kモデル「FDR-X3000」と、フルHDモデル「HDR-AS300」に採用されています。AS300は、私が現在メインで使っているAS200Vの後継モデルにあたります。

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 (完全にアクションカメラバカと化している俺)

 何が凄いのかは、先ほど書いた通り。ビデオカメラで培われた超強力な手ブレ補正機能が(同等かはさておき)、アクションカメラに内蔵。アクションカメラは手で持って撮影するものではありませんが、自転車の路面からの揺れや、バイクの揺れ、人間が走っている時の揺れなど、様々なブレを補正し、滑らかな移動映像を撮影できるようになる……という事です。

 以下はソニーの公式サンプル。自転車ではなく、手持ちで階段を登っている様子ですが、歩行によるブレがほぼ完全に補正できているのがわかります。まるで大昔に紹介したステディカムに乗せて撮影しているかのようです。



 
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 ここまでであれば、「路面が荒れているようなところをロードで走っている動画でも、ガタゴトせず、スムーズに撮影できてイイよね! 気になる新製品だね! 今からアクションカメラ買おうという人は要注目だよ!」というだけの話。しかし、もう1つ、空間光学ブレ補正には良い事があります。

■このブログの動画ではブレ補正を使っていない

 実を言うと、このブログでいつも掲載している動画は、アクションカメラ(AS200V)の「電子式ブレ補正機能」をOFFにして撮影しています。

 ブレ補正が超強力な新モデルが出たぜ!! 要注目だぜ!!

 とか言っていながら、私は普段、ブレ補正機能そのものをOFFにして使っているわけです。これには1つ、大きな理由があります。

 旧モデルとなるAS200Vには、光学式ブレ補正は無いですが、その代わりに“電子式ブレ補正機能”というのが入っています。電子式、つまり、デジタル処理でブレを補正しているのです。

 大雑把に説明すると、電子式ブレ補正をONにすると、映像として記録しておく部分より、もう少し広い範囲をカメラが撮影します。要するに、周囲に余白というか、オマケというか、そういう部分を加味しながら撮影します。

 デコボコなところを走りながら撮影すると、映像も揺れます。電子式ブレ補正では、その映像を解析。「お、道路のこの部分が、右にちょっとズレたな、これは振動によるブレだな」とカメラが把握。映像を記録する時には、そのズレた分を補正して、ズレてないっぽく戻して記録する……という処理をしています。

 感の良いひとはピンとくると思いますが、右にズレたから戻して、左にズレたから戻して……などという処理を行なうためには、あらかじめ、記録する映像よりも、ちょっと広めに撮影しておかないと、戻すための映像素材が無いわけです。

 ここに電子式ブレ補正の弱点があります。

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 上の写真はAS200Vの画角の違いを示したもの。左が120度、右は170度の視界を撮影したもので、AS200Vではこの2つの画角をユーザーが選択できます。しかし、一番広く撮影している170度の画角を選ぶと、電子式ブレ補正は強制的にOFFになります。ブレ補正が使えるのは120度の画角のみなのです。

 理由はもうおわかりでしょう。170度の場合は、電子式ブレ補正を行なうための余白が撮影できないのです。

 ブレの少ない動画を掲載するという目的であれば、120度設定で撮影すべきです。しかし、私はそうしていません。理由は2つ。

 1つは、より広く撮影した方が、周囲の景色などが見渡せ、「こんな場所だったんですよ」という説明に適していると考えている事。

 もう1つは、「そんなに凄まじいブレブレ映像でなければ、ブレ補正が無くても不快にはならないし、少しくらいガタゴトしていたほうが、迫力のある映像に見える事もある」と考えているためです。

■空間光学ブレ補正はどの画角でも使える

 ポイントはここからです。空間光学ブレ補正は、先ほど書いたようにレンズとセンサーを一体化したユニットを、カメラの中でゆらゆら動かして、デジタル映像処理ではなく、機械的にブレをキャンセルしています。要するに“撮影した映像に手を加えてなんとかブレてないように見せる”のではなく、“そもそも揺れないカメラで揺れない映像を撮影する”のが空間光学ブレ補正なのです。

 そのため、新モデルでも画角は120/170度が選べますが、170度でも空間光学ブレ補正が同時に利用できてしまいます。私がこだわっている「広い視界」を撮影しながら、今までの電子式ブレ補正では到達できなかったブレ補正能力を同時に実現してくれるわけです。

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 個人的に、ソニーのアクションカメラは画質面で他社と較べてトップのクオリティだと考えています。そこに、ビデオカメラでは他社の追随を許さない空間光学ブレ補正が投入された事で、限りなく「ぼくのかんがえたさいきょうのアクションカメラ」に進化したと感じるのが、新モデル「FDR-X3000」と「HDR-AS300」。

 ダラダラ書いてきましたが、何が言いたいのかというと、クソ欲しいwww