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 仕事に追われる平日、ダルい休日出勤……世のローディーは何をしているのかしらと、Twitterを開くと「絶好のロードバイク日和!」、「凄く晴れて気分サイコー!」などという書き込みと共に、皆が様々な場所を走っている写真が表示されます。

 憎しみと妬みのオーラに包まれて、仕事がより手につかなくなるわけですが、そうした写真を眺めていると、2つの事に気が付きます。1つは「やたらとソフトクリームやジェラートの写真が多い」、2つ目は「それらの写真がたいていピンボケ」だという事です。

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 1つ目の「ソフトクリームやジェラートの写真が多い」というのは、すぐに理由がわかります。

 ロードバイクはクルマや歩行者が少ない道を走ると格別に気持ちが良く、それを追求するとついサイクリングロードばかり走ってしまうもの。しかも、サイクリングロードを人のいない上流へ、上流へと遡っていくので、人家が消え、店が消え、コンビニも消え……残るは牛が草をはむ牧場くらい。

 補給と休憩を兼ねて、そこで売られている美味しいソフトクリームやジェラートを食べる……というのが、全国のローディーあるあるパターン。

 そして多くの人が、食べながらスマホを取り出してパチリ。「○○牧場到着!」などとつぶやくわけです。つまり牧場直売のソフトクリームやジェラートは、ローディーにとって最も身近な補給食であると同時に、最も身近な被写体の1つと言えるでしょう。

 では、なぜソフトクリームやジェラート写真はピンぼけが多いのか。

 その理由は、ソフトクリームを買った後のローディーの行動と、スマホカメラの弱点を知る事で見えてきます。

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 今、あなたはレジでお金を払い、しぼりたてミルクのジェラートを購入しました。店内で食べる場所が少なく、天気は快晴。外で食べる事にしましょう。置いたロードバイクが視界に入っていたほうが、安心して食べられるってもんです。でも、立って食べるのもアレだからと、ベンチに腰掛けます。

 さあ一口……の前に、写真を撮ってツイートする事を思い出します。片手でスマホを持ち、もう片方の手でジェラートを持ち、そのままシャッターアイコンをタップしてパチリ。

 ここでストップ。

 自分の姿勢をチェックしましょう。あなたは恐らく、椅子に腰掛け、斜め下方向を向いているはずです。視線の先にはスマホ、その先にはジェラート、そしてその先にはアスファルトの地面や、砂利などが広がっている事でしょう。

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 スマホは、シャッターボタンが押されたので、写真を撮ります。どこにピントを合わせるか、あなたが指定しなかった場合、大半のスマホは、スマホ自身でどこにピントを合わせるのか考えます。

 スマホを構えたあなたは当然、ジェラートを手にしているのだから、ジェラートにピントが合った写真が撮れるだろうと思い込んでシャッターを切っています。しかし、その無言のメッセージは、スマ太郎には伝わっていません。

 スマ太郎は「ご主人様は写真を撮れって指示してきたけど、どこにピントを合わせるかは言わなかった。どこに合わせればいいんだろう? たぶんココかな?」と、想像しながらピントを合わせ、写真を撮影します。

 その際、スマ太郎が「ココかな?」と判断するポイントは、コントラスト(明暗差)です。

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 スマ太郎は、画面全体をチェックして、明暗のコントラストがクッキリしている場所を、「ここが大事な、ピントを合わせて欲しい場所なんじゃないかな?」と予想。オートの場合、そこにピントを合わせて撮影します。要するに、草原をシマウマが歩いていたら、バシッとシマウマにピントが合うわけです。

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  コントラストという視点でジェラートやソフトクリームを見てみると、なかなかやっかいな被写体である事がわかります。明暗差は少なく、全体的にふわっとぼわっとした物体。コントラストをチェックしているスマ太郎の目線で見てみると、ジェラートよりも、その背後にある砂利や、椅子の脚など、明暗差がクッキリとしたものに目がいってしまい、「きっと、あそこにピントを合わせて欲しいんだろう!」と誤解してしまいます。

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 要するに、スマ太郎はアホなのです。

 被写体がソフトクリームだとか、ジェラートだとか、そういう事は一切認識しておらず、単に"明暗差がクッキリしたところはないか”と探しているので、ピントがスッポ抜けて、地面に奪われてしまうような事が起こります。

 しかし、アホな子だとわかってさえいれば、以下の様な対策が可能です。
  • コントラストが低めの被写体を撮影する時は、背後にコントラストが高いものを持ってこない
  • コントラストが低めの被写体に明暗差をつけるような光を当てて撮影する
 
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 クッキリした明暗差がある、ゴチャゴチャした背景は避け……

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 空に向けてジェラーをを持って撮影するなんてのも良いかもしれません。

 うつむいて撮影すると、ジェラートに光が当たらず、低いコントラストがさらに低くなるという問題もあります。

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 一方で、こうした失敗を減らすために、スマホ側は日々進化しています。例えば、昨今のスマホであれば、撮影前に画面の一部を指でタッチする事で、そこにピントを合わせる事ができます。要するに、「タッチした周囲で、コントラストの高いところを探してね」と、スマホにお願いするわけです。

 ただ、コントラストでピントを探す事には変わりないので、ソフトクリームの真っ白な部分をタップするよりも、カップやコーンの近くで影がある部分や、ミニスプーンが刺さっている部分など、少しでもコントラストが強い部分を指定すると、よりピントが合いやすくなります。

 また、最近では「顔検出AF」、「ペット検出AF」なども登場。カメラ側が「人間やペットの顔はこんな感じ」とあらかじめ把握しておく事で、画面の中に、顔っぽいものがあったら、そこに優先的にピントを合わせるという賢い機能もあります。ただ、当然ながら「ジェラート・ソフトクリームAF」機能でないと、今回のケースでは役に立ちません。

 最新のスマホでは、「像面位相差AF」という、被写体とカメラの距離を測って、素早くピントを合わせる機能と、コントラストAFを組み合わせたものも登場しています。こうした機種の場合は、ジェラートが手前に掲げられている事を認識し、ピンボケもある程度防げる事でしょう。

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 逆に言えば、なぜピンボケになるのか? コントラストAF(オートフォーカス)の弱点を理解していれば、必ずしも高機能なスマホやカメラは必要ではありません。ピンボケ写真になってしまった時や、なかなかピントが定まらない時は、"コントラストの高さ””コントラストを高めるためには明るい場所に移動する”事を覚えていれば、かなり撮れる写真は変わります。

 そもそも、食べ物は明るい光の下で撮影した方が美味しく見えます。暗い砂利やアスファルトをバックに、自分の影と重なったようなジェラートは、あまり美味しそうに見えません。ちょっと姿勢や向きを変えるだけで、失敗の無い、より美味しそうな写真は撮影できます。

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