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 苦痛にあえぎながら坂道を登りきると、目の前に広がる山々と青い空。

 ああ、こんな高いところまで自分の脚で登ってこれたのだ。

 感動と共に、iPhoneを取り出してパチリ。

 ……帰宅後、感動を反すうしようと画像をひらくと、確かにあの景色が写っているけれど、なんか違う。あの深呼吸したくなるような、自分が包み込まれるような景色の雄大さが、写真に残っていない( ;∀;)

 ……と感じた事はないでしょうか。
 
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 以前、カメラ初心者向けに、激坂を激坂らしく撮影するには、ややズームして撮影するのが良いという記事を書きました。人間の目は焦点距離換算すると50mmだとかなんだとか、そんな内容です。

 今回はヒルクライム後に目に飛び込んでくるダイナミックな絶景を、よりダイナミックに撮影する方法……というより、ある種の実験です。

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 多摩湖に到着しました。

 雄大なダム湖の上には青い空と白い雲。お馴染みの、自転車旅用カメラ「RX100M3」を取り出し、シャッターを切ります。

 激坂記事でも書いた通り、RX100M3のレンズは焦点距離24~70mm。まずはズームして、望遠端70mmでパチリ ↓

 【RX100M3:70mm】
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 ダムの一部を切り取ったという感じの写真。広いという感じはせず、逆に狭苦しいです。

 次に、人間が片目を閉じた時と同じ見え方となる50mmでパチリ ↓

 【RX100M3:50mm】
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 広くはなりましたが、雄大か? と問われると、あんまりそんな感じはしません。

 ずずっと引いて、24~70mmレンズのワイド端となる24mmでパチリ ↓

 【RX100M3:24mm】
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 一気に広さがでて、多摩湖の気持ちよさが写真に出てきました。

 しかし、見る人を驚かせるような、ダイナミックな写真……と言うほどでもありません。ちなみに、iPhone 6sのカメラは、焦点距離約29mm。つまり、この写真よりも狭いため、景色の雄大さはあまり出ません。

 では、さらに引いてみるとどうなるでしょうか? RX100M3に秘密のオモチャを装着し、無理矢理焦点距離を19mmまで引いてパチリ。

 【RX100M3:19mm】
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 だいぶ広々してきました。

 こうなったら、もっと引いてやれ。いくとこまで行ってやれと、違うカメラを取り出し、15mmでパチリ。

 【α7:15mm】
 (VoightLander SUPER WIDE HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II)
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 うっひゃー! 広いわー

 ついに手前の堤防部分まで写真に収まってしまいました。

 このように、焦点距離が小さくなるにつれてひろびろ具合がアップ。より広角なレンズで撮影した方が、開けた景色の雄大さを出す事ができます。

 先程も書いたように、代表的なスマホであるiPhone 6sの焦点距離は約29mm。それよりも、24mmや17mmといった焦点距離を持つカメラの方が、景色をダイナミックに写せます。スマホがあればデジカメはいらないんじゃね? という話もありますが、画質の良し悪しだけでなく、より広角なレンズを搭載したカメラであるならば、絶景をより広く撮影でき、スマホと別にカメラを持参する1つの理由になるというわけです。

 逆に言えば、ロードバイク旅に適したコンパクトデジタルカメラや、ミラーレス一眼用交換レンズを買おうと思った場合、持っているスマホより広角なレンズのカメラを選べば、スマホでは撮れなかった写真が撮れる事になります。

レンズ交換できないコンデジで、より広角な撮影をする


 先日出かけた渋峠

 雄大な景色が待ち受けているのはわかっていたので、その雄大さを写真に残そうと、ミラーレス一眼のα7に、15mmという超広角なレンズを装着して行きました(α7というカメラは、レンズが交換できます)。

 しかし、装着後のカメラの重さにゲンナリ。これを肩がけしたまま、2,000mオーバーの世界までヒルクラするのは苦痛でしかないとスタート前にヘコタレ、トランポの車の中に放置。いつもの「RX100M3」をぶら下げて出発するという情けない決断をしました。

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 しかし、長年生きていると、自分がどんな人間なのかを熟知しているので、「重いカメラとレンズを持参しても、スタート前にヘコタレそうだなぁ」とあらかじめ予測はしていました。

 さらに、実際にそうなった時に、少しでも広角の撮影ができるようにと、こんなオモチャを背中のポケットに忍ばせておきました。

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 これはワイドコンバージョンレンズ、通称"ワイコン”と呼ばれるもの。

 レンズ自体が交換できない、コンパクトデジタルカメラのレンズ前に取り付けて、焦点距離をより広角にできるという裏ワザみたいなレンズです。私が持っているのは、リコーの「DW-6」というワイコン。

 これを通して撮影する事で、焦点距離は0.79倍となります。RX100M3のワイド端は24mmなので、24mm×0.79=18.96mm。要するに、ワイド端が約19mmに変化するわけです。

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 しかし、この組み合わせ、正規の方法ではありません。

 というのも、RX100M3のレンズには、もともと、レンズの前にワイコンを取り付けられるようにはなっていません(ネジ切りがない)。さらに、DW-6というワイコンは、リコーのコンパクトデジカメにアダプタを介して取り付けるためのもの。ソニーのカメラと組み合わせる事など、考えられているわけありません。

 要するに、レンズの口径が似たようなサイズなので、なんとなく使えてしまうという怪しげな使用方法。ネットでは、こうしたワイコンをRX100のレンズ前に固定するために、両面テープを使ったり、マグネットを使ったり、様々な工夫をしている人の工作報告も存在します。

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 私はどのように固定しているかというと、超原始的に、左手でワイコンを持っているだけ。

 私にとってワイコンは常時必要なものではなく、出番は山頂からの絶景をワイドに撮影する際にだけ。山頂で休憩しながら、ワイコンを取り出し、RX100のレンズ前に左手でピタッと合わせてパチリ。そのカットの撮影が終わったら、ワイコンを布にくるんで背中のポケットに仕舞う……という使い方で、渋峠を撮影しました。

 【RX100M3:24mm】
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 【RX100M3+ワイコン:約19mm】
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 上の写真では、左右の道路がどこまで写っているかを見ると、違いがわかりやすいです。

 下の写真では、上部の虹がどれくらい写っているかに注目すると、”写っている広さ”の違いがよくわかります。


 【RX100M3:24mm】
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 【RX100M3+ワイコン:約19mm】
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 たった5mmの違い。数値としては小さいですが、見比べてみると、景色の雄大さはグッとアップしているのがわかります。

 【RX100M3:24mm】
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 【RX100M3+ワイコン:約19mm】
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 面白いオモチャですが、正規の周辺機器ではない他社のワイコンを、固定すらせず、手で持ち支えて撮影するというのは、かなり邪道というか、無理矢理な撮影方法です。慣れていないと、ワイコンやRX100側のレンズにキズをつけてしまう可能性もあり、あまりオススメはできません。

 また、レンズの前に、別のレンズを置いて撮影しているので、当然ながら写真の解像力は低下。わかりやすくいうと、輪郭などがボケた、眠い絵になります。

 【RX100M3のみで撮影した写真から一部を切り出し】
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 【RX100M3+ワイコンで撮影した写真から一部を切り出し
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 しかし、私の写真はブログ掲載がメインで、写真のサイズが大きい必要はありません。RAW現像からJPEGに書き出す際に、縮小すると共に、シャープネスをかけるなどしてシャッキリした絵に補正をして誤魔化しています。

 このように、いろいろ面倒な事はありますが、それを我慢しても、絶景のダイナミックさを出すために、より広角で撮影したい!! というのが、今回の話の根幹です。

ロードバイク旅に向いたコンデジをレンズから探す


 私は殴れば人を殺せるような巨大なカメラから、中型のミラーレス、小さなミラーレス、コンデジと、いろいろなカメラを持っています。それらを背負って走ってみた結果、ヒルクライムやロングライドで辛くならない軽さと小ささ、そして画質のバランスを考えると、1インチのセンサーを搭載した、俗にいう“高級コンパクトデジカメ”が、ロードバイクと相性が良いと現時点では考えています。

 そんな1インチセンサーのデジカメ。売れ筋なので、各社から様々なモデルが登場しています。カメラに詳しくないと、全部同じに見えて、どれを選べばいいかサッパリわかりません。カタログを眺めても、よくわからない数字がイロイロ書いてあるだけ。

 しかし、先ほどの“ダイナミックに風景を写そう”という視点で人気モデルを眺めてみると、ちょっと面白くなります。

 パナソニック「ルミックスDMC-TX1」:25~250mm F2.8-5.9
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 キヤノン「PowerShot G7 X Mark II 」:24~100mm F1.8-2.8
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 ニコン「DL18-50 f/1.8-2.8」:18~50mm F1.8-2.8
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 ソニー「DSC-RX100M4」:24~70mm F1.8-2.8
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 なんかニコンから、一人だけ「18~50mm F1.8-2.8」なんて、すげえ広角なレンズを装備したカメラが発売される事に気づきます(現時点でまだ発売日未定)。ただその代わり、テレ端が50mmまでしかないという、なかなか割りきったレンズになっています。

 ただ、「ロードバイク乗ってる時にあんまりズームしないし、絶景を広くダイナミックに撮影したいからニコンのDL18-50 f/1.8-2.8が欲しい」なんて言うと、「お、こいつはわかってるな」的な感じになります。


 思い返せば、初めてのロードバイク購入。右も左もわからないかつての私は、中二病的カラーリングやメーカー名のカッコよさ、予算でふるいにかけ、「レースで培われた性能」などのカタログ文句をふむふむと暗記。「これこそが私に最適な一台」と、知ったような気になって1台目のバイクを購入しました。
 
 しかし、何年か乗ってみると、レースでタイムを競う事もなく、絶景を求めて坂道で苦しみ、ボトルの水の残量に恐怖し、泥のように疲労した体で輪行袋を引きずる私にとって、ツール・ド・フランスで培われたなんちゃら機能は無用の長物。それよりも、輪行のしやすさや、ボトルケージが3個取り付けられるネジ穴なんかの方が、本当に必要な性能だったのだと痛感しました。

 やがて、シンプルなフレームに高価なホイール+コンポの美しさに目覚めたり、無数のライトとサドルバッグで武装したブルベ仕様車をカッコイイと感じたり……要するに、"自分が必要とする機能と、そこから派生したデザイン”に魅力を感じるように変化していきます。

 この真理はカメラにも通用します。

 初心者がカメラで注目しがちなスペックは、レンズのズーム倍率。カタログにはたいがい、「光学10倍ズーム」、「25倍ズーム」などの単語が並び、よくわからないまま、、「10倍より20倍の方がスゲエ」という理由で、「これこそが私に最適な一台」と、高倍率ズームモデルを選びがちです。

 しかし、買った後で「そんなにズームして撮るものがない」という真理に気付くのがよくあるパターン。普通の人が、F1カーを客席から激写したり、魚を狙うカワセミをとらえたり、大空を飛ぶブルーインパルスを激写する機会はあまり無いのです。

 「自分にとって何が必要なのかわからないまま、購入する製品を選ばねばならない」という点で、初めてのロードバイク選びと、よく似ています。

 よくわからなくなった時は、家を出発して、山に出かけて、坂道で泣いて、山頂でヤッホーして、美味しいごはんを食べて……と、ライドの流れを思い返し、その瞬間瞬間で、どんな写真を撮りたいかを想像。それを撮るために必要なレンズはどんなレンズか? を考えると、製品選びが少し楽しくなると思います。

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 オマケ

 広角レンズは楽しいゾという話をしたいがために、今回、α7と15mmという変態広角レンズを引っ張りだしてきたので、よくあるライドを、15mmで切り取るとどんな景色になるのかという写真集をお届けします。超広角で無駄にダイナミックに表現すると、近所のゆるポタも、なんかドラマチックに見えてきます。

 【RX100M3:24mm】
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 【α7:15mm】
 (VoightLander SUPER WIDE HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II)
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 【α7:15mm】
 (VoightLander SUPER WIDE HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II)
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 【α7:15mm】
 (VoightLander SUPER WIDE HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II)
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 【α7:15mm】
 (VoightLander SUPER WIDE HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II)
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 【α7:15mm】
 (VoightLander SUPER WIDE HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II)
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