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(読了後再生推奨/画質は720/60p、1080/60pがオススメです)


前回までのあすじ
激坂十傑集との戦いの最中、病に倒れたへるはん。
教会の尽力により復活を果たすも、体幹、脚力、スタミナ……坂に対する武器を全てを失ってしまった。彼に残されたのは「回復のため」と称した食欲だけだった。
戦う力を取り戻さねばならない。
だが、今の彼に必要なのは筋トレでも、有酸素運動でも補給食でもない。登らなければ死ぬ。殺るか殺られるか、あの血沸き肉踊る、坂との死亡遊戯の日々を思い出す事だ。
しかし、そのために差し向けられた刺客が、本当にへるはんを殺そうとしている事に、戦場の匂いを忘れ去った男が気付くはずもなかった……。
次のライドの行き先なんだけど……
本気のへまライドに誘ってくれても、今の俺じゃ完走できない。だから、俺が走りきれるかどうかは気にしないでルートひいて。死んだら途中で帰るから。
教会の尽力により復活を果たすも、体幹、脚力、スタミナ……坂に対する武器を全てを失ってしまった。彼に残されたのは「回復のため」と称した食欲だけだった。
戦う力を取り戻さねばならない。
だが、今の彼に必要なのは筋トレでも、有酸素運動でも補給食でもない。登らなければ死ぬ。殺るか殺られるか、あの血沸き肉踊る、坂との死亡遊戯の日々を思い出す事だ。
しかし、そのために差し向けられた刺客が、本当にへるはんを殺そうとしている事に、戦場の匂いを忘れ去った男が気付くはずもなかった……。









「脚力が足りずに足手まといになるから、ライドに参加しない」という選択肢もあります。ただ、私は遊ぶためにロードに乗っていて、他の皆もそれは同じ。せっかく“一緒に遊ぼう”と誘われているのに、「行かない」というのも寂しいものです。
足手まといを気にするのであれば、ローディーとして自己完結していれば良いだけの話。リタイアに備え、パンク修理などの当然の装備に加え、輪行袋の携帯、最寄り駅のチェック、「西伊豆に行くとしたら、どの山、何処で登坂を断念すれば下り基調で駅までたどり着けるか?」といったチェックをしておきます。ロードサービス付きの自転車保険に加入しているのも、自己完結の1つの手段と言えるでしょう。
もちろん最後まで一緒に走り切る事は大切ですが、一緒に遊び、一緒に苦痛を味わい、一緒に景色を楽しむ事にこそ大きな価値があります。簡単に言えば、「脚力とかどうでもいい。ダメでもいいじゃん、ゴチャゴチャ考えずに遊びに行こうぜ」というわけです。ただ、それを口にするためには、ダメだった時に人に頼らず、どうやったら安全に帰ってこられるのか? を、常に考えておく必要もあります。






予報では曇でしたが、どうやら奥多摩の上にだけ分厚い雨雲が残っているよう。我々のいる地域だけ、雨というか、寒いので雪が降っています。駅前では、チラホラと目につく程度ですが、今日はこのまま峠に突撃し、最終的には標高約1,000mのノコギリ山まで登る予定。さらに気温は下がるわけで、最悪、峠に雪が積もっている可能性もあります。
ただ、参加者は私/へま/ゆっけ/HAOさんという頭のネジが数本最初から搭載されていないメンバーであり、おまけに面白い写真を撮る事に過剰な情熱を傾けているメンバーでもあるので始末に終えません。「スタートしない」という選択肢は無く、雪が積りはじめていても、行けるところまでは進み、「雪をバックにロードバイク」というカッコいい写真を撮影してUターンしようという欲すら頭をもたげてきました。
しかし、走りだすとウインドブレーカーに雨だか雪だかわからないものがビチビチと当たります。気のせいか、ビチビチ音は強くなっているよう。ただ、走りながらずっとバカ話をしていたので、あまりビチビチ音が耳に入っていません。

へまルートなので、当然スタート直後にわけのわからない林道に突入。モーニングセットならぬ、モーニング斜度10%オーバーの世界が、寝起きのふくらはぎに襲いかかります。
今までの私であれば「ぎゃー」とか言いながらもクリアしていたでしょうが、今の私の脚力は駅の階段ですらヒーヒー言うレベルに低下中。悶絶しながら、もがくように前に進みます。
しかし、走りだすとウインドブレーカーに雨だか雪だかわからないものがビチビチと当たります。気のせいか、ビチビチ音は強くなっているよう。ただ、走りながらずっとバカ話をしていたので、あまりビチビチ音が耳に入っていません。

へまルートなので、当然スタート直後にわけのわからない林道に突入。モーニングセットならぬ、モーニング斜度10%オーバーの世界が、寝起きのふくらはぎに襲いかかります。
今までの私であれば「ぎゃー」とか言いながらもクリアしていたでしょうが、今の私の脚力は駅の階段ですらヒーヒー言うレベルに低下中。悶絶しながら、もがくように前に進みます。
ただ、14%、15%と斜度がアップしても、なんとか前に進めます。都民の森では、太ももが豆腐のようになり、まったく力が入りませんでしたが、今回は少し力を入れて回す事ができます。実は、都民の森で即死して以来、深夜の自室で秘密のスクワットを続けているなんて口が裂けても言えませんが、その秘密の筋トレの効果が少し出ているのかもしれません。


朝つゆならぬ、朝みぞれに濡れる林道。
深い森の中特有の、凛とした荘厳な雰囲気と、鳥の声すら聞こえない静けさ、車や人とまったく出会わない開放感を、肺の奥へと取り込みます。
気温は恐らく3度程度しかないでしょう。腕や顔はヒリヒリするほど冷たいですが、激坂をクリアするために体が発する熱でポカポカ。体と自然の境界線に、濃密な温度のバリアが張られているかのような不思議な感覚。かつて乗鞍で体験した“アレ”が、体を活性化させているのがわかります。
同時に、久しぶりの林道で気持ちもクリアに。「ああ、平日のストレスが体中の毛穴から霧散していくかのような……これが俺にとってのヒルクラなのだ」という、自分でもよくわからない多幸感がこみ上げてきます。


濡れた林道の美しさは、快晴時のそれを上回ります。林道そのものが陰の雰囲気を持つからかもしれません。写真に収めたい風景が多く、足つきなし登坂にこだわらず、皆、思い思いのポイントで停車し、カメラを取り出します。頻繁に休憩する事になるわけですが、結果的に、私のリハビリライドには良かったかもしれません。

雪の量が本格的になってきました。
降雪量が増えると、写真にも写るようになりますが、そのまま撮影するとまるでノイズのように見えてしまうのが難しいところ。そんな時は、フラッシュを強制的に発光させると……


雪の粒を光らせつつ、止める事ができます。今回はHAOさんの黒いジャージ部分がわかりやすいですが、暗い夜空をバックにすると使いやすいワザ。夜景と雪を一緒に撮影したい時はスローシンクロを使います。

高いところまで登ってきたなぁと、山に目を向けると、まるで温泉でも湧いているかのように湯気が立ち上っています。恐らく空気中の水蒸気が飽和して、霧のようになっているのでしょう。幻想的な雰囲気に、思わず撮影枚数が増えていきます。


時折日の光も降り注ぎますが、雪の強さは変わらず……なんとも不思議な天気。
幻想的な林道を撮りつくしたら、スリップに注意しながらゆっくりと下り、青梅側へとダウンヒルします。





ノコギリ山の入り口に向かって走行。ふと、これから突入するであろう方角の山に目を向けると……

完全に景色が長野レベルwww
アルプスかこれwwww

そうこうしているうちに、ノコギリ山の入り口に到着。
ここまでの平地(?)走行で体が冷えきってしまったので、温まりたいと、さっそく登り始めます。

鋸山林道の最高到達地点は約990m。都民の森を超える高さですが、スタート地点から横方向には6kmしかありません。おのずと、斜度はキツくなります。
ただ、救いはスタート地点で既に353mの標高がある事。高低差は約640m。平均斜度は約11%とかなり高めですが、いきなりぶっ殺されるというレベルではありません。とはいえ、アップダウンはほぼゼロ。ズーッと強パンチで殴られ続けるような、鬼坂である事に違いはありません。


まだ雪が降り始めだからでしょう。森の上に雪がコンモリ積もる前の、まるで粉チーズやプロテインの粉をまぶしたような不思議な光景。樹の葉の一枚一枚が、雪化粧で強調されています。

圧巻は山の上を見上げた時です。森が天に伸びていますが、重くたれこめた雲の白と、森の雪化粧が完全に同化。どこからが雲で、どこからが森なのかわかりません。しばし言葉を忘れてシャッターを切り続けます。




キツイ斜度にヒーヒー言いながらも、寒さから逃れるためにクランクを回し続けます。
標高500mくらいまで登ってきたでしょうか? 両側にある木々の上に、うっすらと積もった雪が見え始めました。銀世界に足を踏み入れるまで、後もう少しのようです。








ついに道路の両脇に、積もった雪が現れはじめました。自転車は問題なく乗れますが、さらに登っていけば、道路の中央部分にも雪が積り、乗ったまま進めなくなるでしょう。そうなった場合、さらに進むのであれば自転車を押して、徒歩で進む事になります。
雪中行軍と言えば、1年前の光景がフラッシュバックします。あの時は、初挑戦した林道で終わりがわからず、どのくらいで抜けられるのか不明のまま雪の中を歩き、えらい目にあいました。ただ、今回は一度クリアしているノコギリ山。あとどのくらいで終わるかわかっているので、いくらか気は楽です。願わくば、乗れないほど雪が積もる前に登り切れるといいのですが……







地面に雪が積もったら、やることと言えば雪合戦。ノリは完全に冬の小3の昼休みです。三十路なのに。いいんです、「大人の男と少年の違いは、オモチャの値段だけ」ってやつです。









もはや何がなんだかよくわからなくなってきました。撮影される写真がなにもかも八甲田山のようです。我々はロードバイクに乗りに来たハズですが、もはや些細なことはどうでもよくなりつつあります。頼まれてもいないのにハードなライドに挑むおバカな写真を撮るという動機だけで前へと進みます。



ついに自転車に乗れなくなったwww



歩きにくい雪の上で、シクロのように自転車をかついで登り続けるのは不可能です。結果的に、両手でハンドルをつかんで歩く事になるのですが、その際には自分の腰の横あたりにハンドルが来るよう、自転車の前方付近を歩くと、少し楽に前に進めます。
逆に、自転車の中央や後方近くを歩き、中腰になって自転車を押し上げるようにすると、体力の消費が大きくなります。1年前の雪中行軍の終盤に会得した自転車押しスキルが、脳の奥底からよみがえってきました。二度と使わないスキルだと思っていたのに。


雪が深い場所は降りて歩き、雪のない場所では少し乗って楽をする……この繰り返しで、ジリジリと頂上へと登っていきます。



ロードバイクで使わない筋肉をフルに使って押し歩いているので、体中の筋肉が悲鳴を上げています。しかし、GARMINの表示では頂上まであと少し。気合を入れ直します。

途中には、雪の上に真新しい動物の足あとも。鳥か何かでしょうか?








雪中行軍で疲れきり、頂上にあるトイレの屋根の下に座り込みます。足先が冷たいので装着していたシューズカバーは、雪でボロボロに。一方で、HAOさんのホイールのハブはグレードアップされていました。




投げやすそうな雪の固まりを発見








とか、バカなことをしていると雪が降り積もって帰りがヤバくなるので下り始めます。
幸い、積もり始めのサクサクした雪で、凍結はしていないのでズルズル滑らず、自転車に乗ることができます。
ただ、油断は禁物。クリートははめず、両足をぶらんとたらしたまま、下ハンで強くブレーキをかけつつ、ゆっくりゆっくりと下っていきます。もしすべった時や、ブレーキに雪がつまって効かなくなった時に備え、脚でブレーキをかけるためです。
また、ノコギリ山の頂上付近はアスファルトがガレてデコボコになっているトコロが多く、不用意に踏むとパンクします。雪でそのガレ部分がマスキングされていて見えず、踏んでしまう危険性もあります。雪の表面の凹凸をチェックしながら、「この雪の下には岩があるのでは」と予測し、出っ張りを避けながら降りていきます。








標高が低くなってくると、路面から雪が無くなりました。あまりにも美しい白銀の世界をカメラに収めつつ、残り少ないダウンヒルを味わうように降りていきます。



ノロノロ雪中行軍に、ノロノロダウンヒルで時間はかかりましたが、無事にノコギリ山をクリア。恐らくあと数時間早くても、数時間遅くても、この景色は楽しめなかったでしょう。
数時間早ければ、雪はここまで積もっていなかったと思われます。逆に数時間遅ければ、道路に降り積もった雪がさらに分厚くなり、歩いての登坂も困難に。途中で「こりゃダメだ」と引き返していたでしょう。
降り始めのサラサラとした雪が、薄く積もっていたからこそ、そこまで雪中行軍に時間をかけずに、この絶景を楽しむ事ができました。だからといってバカ過ぎるので、震えながらの雪中行軍はまったくオススメしません。また、これが翌日などであったら、雪解け水が凍りついて、スケート場のようにツルツルになっており、徒歩だろうがなんだろうが、登ることも、下ることもできなかったでしょう。

ダウンヒルした先に登場するのは、神戸岩。以前はここで、いろいろなポーズを撮りながら撮影を楽しみましたが、今回はノコギリ山のダウンヒルで体が冷えきったので、ササッと撮影して下界を目指しましょう。





アーッ! だいしぜんマンだ!!


ガタガタ震えながら駆け込んだのは、檜原村役場にあるカフェ・せせらぎさん。ガスストーブの前に陣取らせていただき、ストーブを抱きかかえるようにして体温を上昇させます。あったけー


出していただいたのは、あつあつのカレーや美味しいサンドイッチ。生き返るとはまさにこのことです。



登りきれる自信はまったくありませんでしたが、白銀世界の撮影に夢中になっていたら、なんか獲得標高1,500m程度を走りきれてしまったリハビリライド。やはり絶景のご褒美は、苦痛を低減してくれる効果があるようです。ただ、撮影休憩を随所に挟んだから登り切れたような気がしなくもなく、まだまだ本調子には程遠いという実感もあります。




>ディレイラーのワイヤーが凍って変速できなくなったり、ホイールがフレームに凍りついてタイヤが回らなくなったり、なかなかできない経験でした
ひえええええええええええええwww
聞いてるだけで寒くなってきます(^_^;)
いやぁ、そんなハードなライドはさすがに無理ですww