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 前回までのあらすじ

 ヒルクラスキーの聖地、ヤビツ峠を攻略したインナーロー教団。聖地から下界に帰還した彼らの背後に、遂に四天坂、第三の刺客・子ノ権現(ねのごんげん)の影が迫る。最大30%とも言われる、関東屈指の激坂魔王。今のままでは即死は免れない。

 「へるはん……まともに戦えば、おぬしのブレイブソードは根本からたやすくモッキリ折れるじゃろう。しかし、ブレイブソードをところてんで作っておけば、子ノ権現に一太刀浴びせられる可能性も、無くはないかもしれん嘘だけど。あと百草園行って来い」

 サッカスキー老師は、たくわえた白ひげをなでつけながら、対・子ノ権現に備えた秘密の特訓を彼らに課すのだった……

 【↓ダイジェスト動画はこちら↓】
 (読了後再生推奨/画質は720/60p、1080/60pがオススメです)

 

 かつての中国で、仙人が住む超級山岳にチャリンコで挑み、ふくらはぎが爆発した偉い人が「坂を知り、己を知れば平地に逃げる……」と涙目で言い残したという記録がアカシックレコードに残されていますが、強敵を前に、その情報を事前に収集、自らに不足している部分を補ってから戦いに挑むのは兵法の初歩です。

 インナーロー教団の前に立ちふさがる四天坂こと、都民の森、和田峠、子ノ権現、風張林道。これまで、なんとか都民の森と和田峠を制覇。それ以外の強敵とも、いろいろ戦ってまいりましたが、そろそろ四天坂、第三の刺客・子ノ権現と戦わねばならない時が近づいてきました。

turayogoshiのコピー

 その前に、子ノ権現の事を知らねばなりません。伝承によると、四天坂は単に“キツイ坂×4個”の集まりではなく、それぞれタイプが異なります。都民の森は「激坂無いけど距離が長くてスタミナが必要」、和田峠は逆に「距離は短いけれど激坂まみれ」でした。

 そして子ノ権現は「距離は短いけれど最後に超激坂」、それらを超越する最後にして最強の刺客・風張林道は「距離が長くてずっと激坂(爆笑)」と古文書には記されています。

 一方で、私が唯一装備しているスキルは「インナーローで脚に負担をかけない、超省エネ牛歩登坂」のみ。坂道が長くて高い山も、時間をかけてひたすら耐え続けてなんとかしてきました。しかしこのスキルには大きな弱点があります。それは「超激坂」に弱いという点。

 よみがえるのは、近場にある超激坂の代表格・百草園の苦い記憶。座ったまま突入したら、間違いなくウイリーするような激坂の場合、私が得意とする「時間をかけたウダウダまったり登坂」が通用しません。まったりユルユルでは、そもそも登れない坂の場合、いくら時間をかけても登れないわけです。

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 そうした異次元の斜度を持つ超激坂をクリアするためには、ダンシングが必要。それも単純なダンシングではなく、負荷が高い中でも安定して姿勢を保持する筋力や、力強く登っていく脚力、超激坂の中でもまだ斜度が緩いラインを見極めるテクニック、そして何より、壁のような坂を前にしても“ビビらない”強い精神力が求められます。

 というわけで、打倒・子ノ権現を実現すべく、“超激坂”に慣れるための練習ライドがスタート。ルートは以下のとおり。まずはお馴染み、城山湖に向かいます。



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 記憶力の良い読者の方は、「城山湖なんてヒルクラ入門で行ってた場所じゃん」と思われるかもしれません。その通り、これまで城山湖に行く際に通っていた“穴川林道”は、8~9%程度の斜度が1kmほど続くだけのスナック感覚の林道。血の味指数「7」と、今となっては低めです。

 しかし、この城山湖……ダムに行くための林道は1つではなく、実は南側に雨降林道というもう1つの道が存在し、そちらの斜度はなんと最大22%(!)。初心者向け林道のすぐ隣に、鬼の中ボスが隠れているというのです。

 行き方は、尾根幹から尾根緑道を通り、町田街道などを使って「大戸交差点」を目指し、そこから城山湖方面へ曲がると、「城山湖野球場 第1球場」が現れます。その手前にある意味のわからない光景が雨降林道の入り口です。

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 スタート直後からクライマックス、20%程度の斜度で出迎えてくれる雨降林道。手前の広場でキッチリインナーローに落として、落ち着いてから勝負を挑みます。

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 ウイリーするほどではなく、その一歩手前という感じの斜度なので、ダンシングは封印。歯を食いしばってシッティングで登っていきます。上下に揺れてしまいそうな上半身を体幹で抑えつけ、サドルに前乗りし、ヤケにならず、ゆっくりと噛みしめるようにクランクをクルクル……。

 力いっぱい踏み込んでもパワーが無駄なので、引き足を重視。引き足が上手く回るように太ももで補佐するようなイメージ。速度が遅くなると倒れそうになりますが、そうならない一歩手前の速度を維持する、最低限の力で進んでいきます。

 私のように重い人間は、ともすると登坂に過剰なパワーを使ってしまいたくなりますが、それも激坂への恐怖から発生する事。のまれてはいけません、存在しているだけでスタミナが、痩せてる人より急速に減っていくデブだからこそ、クレバーにスタミナを温存しなければ複数の敵に対処できないのです。

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 それにしれもこの雨降林道、スタート直後のウエルカム激坂に加え、ご丁寧に「22%」という黄色い斜度看板も掲示してローディーの心を折りにきます。しかし、この序盤激坂をクリアすれば、中盤に休憩ゾーンが登場。息を心拍を整え、ボトルをグビッとやり、最後の激坂区間に挑みます。

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 ただ、後半の激坂区間は、前半より斜度が低め。キツい事はキツイですが、恐らく最初の激坂をクリアできた人なら、問題なく制覇できるでしょう。登り切った場所は、穴川林道の終盤地点。ゆっけさんと「ここに出てくるのかー!」と関心しきりでした。

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 そのまま津久井湖へ。

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 お馴染みのZEBRAで、しばし休憩。ビーフシチューうめえw超オススメw

 まったりした後は、多摩川方面に戻ります。

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 超激坂訓練、2つ目は多摩動物公園の近く。野猿街道を使って多摩川方面に帰りつつ、ちょいと横にそれたところに現れるのが「程久保の激坂」。コンビの裏手、川沿いの住宅街にあります。

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 到着して皆で爆笑

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 だまし絵かこれwwww

 道路が文字通り塗り壁にしか見えませんが、平均斜度27%、最大にヤバイところはおそらく30%近くになるという噂もある、激烈な坂です。

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 先ほどの雨降林道はシッティングでなんとかなりましたが、25%を超える、このクラスの強敵相手にはシッティングは最初から通用しません。ダンシングで突撃、ハンドルを超えて大きく身を乗り出してバランスをとりながら進む……というか、感覚的には“這い上がって”いきます。

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 この斜度になると、自分の顔のすぐ前に道路があるような錯覚を感じますが、歯をくいしばって、その恐ろしい錯覚を振り払います。ほぼフルパワーでダンシングをしているので「あとどのくらいダンシングが続けられるかわかんない!」という恐怖、倒れる前にとビンディングを外したくなる衝動にもかられますが、そこもグッと我慢。「住宅街の激坂なのだからそんなに長いわけはない」と言い聞かせ、なんとか最後まで這い上がりました。

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 恐らく、距離は100mとか150mとかそんな程度。逆に言えば、この短さだからこそ、鬼の斜度でもなんとかなりました。すぐに終わると自分に言い聞かせて、落ち着いて、姿勢の維持に気をつけていれば25%を超える斜度もなんとかなる……ようです。子ノ権現攻略に向け、少し自信がつきました。

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 調子にのって、もう1個行きましょう。「程久保の激坂」のすぐ近く、川崎街道沿いのガストの向かいにひっそりと入り口があるのが、知る人ぞ知る「ガスト坂」。尾根幹の中にある「バーミヤン坂」と似たような名前ですが、バーミヤンほど生易しい相手ではないハズ……。

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 案の定、スタートしてすぐに20%を超える激坂。斜度としては雨降林道のしょっぱなと似たようなもので、先ほど「程久保の激坂」よりも緩いですが、ガスト坂の嫌らしいところはうねうねと曲がりながら、この激坂区間がなかなか終わらない事。30%近い斜度をクリアするような、瞬間最大フルパワーは必要ではありませんが、85%くらいのややフルパワー出力の継続が求められるので、難易度的には「程久保の激坂」より上だと感じます。

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 全行程は600m程度。その中に、キツイ斜度の区間が2.5回くらいあり、なかなかの強敵。

 つ……つらい…… 泣いちゃう ( ;∀;)

 逆流しそうになるパピコをグッとこらえ、途中、わずかに存在する平坦区間で息を整え……なんとか足つき無しでクリア。いやぁ、多摩川の近くにこんな美味しい激坂があったとは……世の中広いもんです。

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 下りが怖すぎるww

 この勢いで、最後の敵にも挑みましょう。もうおわかりでしょう、川崎街道沿いと言えば、すぐ近くにあるのが、百草園。私がかつて挑み、ここをロードバイクで登れるビジョンが描けないというレベルのトラウマを負った、あの百草園です。

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 ああ…… あの悪夢のキルゾーンが近づいてくる……

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 初挑戦の時に「こんなもの登れっこない」「そもそもどう登ればいいのかすら想像がつかない」というほどコテンパンにされたので、再挑戦は「恐ろしい」の一言。しかし、25%近い坂を、今こうしてクリアしてきたので、最大斜度25%程度のハズの百草園も坂スペック的にはなんとかなるハズです。

 「いやしかし、あの百草園さんがそんなにヌルいわけない。ネットでは25%とか言われているけど、恐らく78.9%くらいはあるんじゃないのか実は……」などと心配しながら登坂を開始しました。

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 おさらいになりますが、百草園は序盤の住宅街で7~8%程度のキツいストレートの坂があり、看板を右折すると10%程度に斜度がアップ。そこから木が生い茂る曲がり角を左に曲がり、百草園の入り口に至る部分がクライマックスの即死ゾーンです。

 クライマックスゾーンの手前で精神統一。「登れる」、「距離は短いから落ち着いてダンシングすればイケるはず」と言い聞かせて、いざ、トラウマの克服チャレンジ開始!!
 
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 やっぱり鬼じゃんこの坂ww

 ダンシングで這い上がっていきますが、どうしたことか、今までの激坂と似たような斜度にも関わらず、道路が顔により近く感じます。地面と鼻が接触するんじゃないか? アスファルトの匂いを直接かいでいるのではないか? という凄まじい恐怖。激坂が途中でうねっているから、そう感じるのでしょうか?

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 最初の左カーブをなんとかやり過ごし、そのまま右斜め上空に向かって登坂を継続。以前は、最初の左カーブの段階で、心が折れ、転倒が怖くて脚をついてしまいましたが、今回は歯をくいしばり、さらに前傾ダンシングでやり過ごしていきます。

 これは……イケる!?

 右上空への登坂がクリアできれば、大きく右折すれば百草園の入り口。つまり、登坂成功です。後輪がスリップしないよう注意はしていますが、倒れそうな気配は無く、筋力は限界に近いですがパワーが底をつくほどではありません。

 しかし、そのままの勢いで登りきろうとしたところ、坂の上からクルマと人(複数)が同時に降りてきました。この区間は道幅が狭いため、歯をくいしばったダンシングのまま両者を上手く避けることは困難と判断。やむおえず脚をついて横の砂利の部分に退避しました。

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 気を取り直し、その場から再スタート……は斜度的にちょいと無理なので、自転車を横にして斜度を緩くしつつ再スタート。無事に登り切ることができました。不可抗力で脚はついてしまいましたが、見栄ではなく、恐らくあのまま行けていればクリアできたでしょう。とりあえず、なんとかトラウマを克服することができました。清々しい気分! \(^o^)/

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 それにしても、過酷な筋トレを毎日欠かさずやったり、食事制限で体重を落としたりしたわけでも無く……。体はたいして変化していないハズなのに、なぜ登れたのでしょう?

OK-NBhMoたぶんへるさん、いろいろ坂行ったから、激坂に慣れたんだと思うよ。



 Deroさんの言うとおり、百草園に挑んで瞬殺された当時の私は、肉体的に登れるか登れないかという話の以前に、「こんなのむりいいいいいいいいい」という言葉で脳内が埋め尽くされ、「本当に無理なのかどうか」を考える冷静さのカケラも無かったのでしょう。

 「このくらいの坂なら、◯◯坂と似たようなもんだ」とか「さっきの坂よりちょっとキツイだけじゃん」と思えるようになれば、「むりいいいいいいい」というテンパリも抑えられるようになる。つまり、今まで乗り越えてきた坂が、ある種の鎮静剤になってくれたようです。やっぱりメンタルなスポーツだなぁこれ。

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 ご褒美は、アルティジャーノ・ジェラテリアのジェラート

 ミルクやマンゴーも美味しいですが、ソルト、つまり塩味も意外な美味さ! あまじょっぱくてうまうまー!

 ……さて、これで打倒子ノ権現の準備は万端!!

 ……だとよかったんですけどね……