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 前回までのあらすじ

 奥多摩に眠る恐怖のノコギリ山を制覇し、残りの四天坂、風張林道と子ノ権現攻略に向けて勢いに乗るへるはんとインナーロー教団。

 しかし、そこに一通の召集令状が届く。これまでの頑張りが認められ、ついにヒルクライマー憧れの地への扉が開かれたのだ。差出人の名はヤビツ峠。関東の……いや、日本全国のロード乗りで知らぬものはいない、ヒルクライマーの聖地(サンクチュアリ)。

 果たしてインナーロー教団の登坂技術は、聖なるヤビツ峠で通用するのだろうか……

 

-5xqteuTへるさん、どっか走りに行きたいんですけど。



e3e05b84俺も行きたいけど、何処行きゃいいんだよ。



-5xqteuT今日はへまさんもDeroさんもいないので、特にルート案無いんですよね。



e3e05b84どうせならアレだよ、有名だけどへまさんとかが“それだけじゃ生ぬるい”と言いそうなトコロに行くチャンスだよ。例えば表ヤビツ峠とか。


-5xqteuTあー、前に自走で裏ヤビツは途中まで行ったけど、表は登ったことないですね。



e3e05b84やっぱヒルクラはじめたのなら、一度は表ヤビツ登っとかないとさ。あそこを登れば、自分がどのくらいのレベルなのかわかるんでしょ?


-5xqteuTタイム計測するんですか?



e3e05b84誰が測るか!!



 とかなんとか、ほぼ思いつきで決まったヤビツ峠アタック。ルートは私が適当に引っ張りました。



 輪行で秦野からスタート。表ヤビツを登り、裏ヤビツをダウンヒル。以前食べそこねた宮ヶ瀬湖のオギノパンを食べて、尾根幹を飛ばして自走で帰宅……というプラン。

e3e05b84おお……なんという事だ、峠が1つしかないぞこのコース。


-5xqteuTなんですかねこの罪悪感は



e3e05b84俺らあたまおかしくなってないか? 普通はコレでいいんだろ。何も毎回ふとももモゲルまで登らなくてもいいではないか。

 参加者は、私と同じく表ヤビツに登ったことがないというトントンさん、トミィさん。そして既に何度も登っているクライマーのと~るさん。そしてゆっけさんを加えた5人。今日は先生役になってくれる人がいないので、生徒達によるダラけた自習ライドと言える雰囲気。

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 まずは新宿から小田急線に乗り、秦野へ。駅前で自転車を組み立て、ヤビツアタックのスタート地点となるコンビニに向かいます。その前に驚いたのは、秦野の駅に大量のローディーがいる事。最近は輪行準備しているローディーの姿も珍しくなくなりましたが、秦野は人数が桁違いです。

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 コンビニ(交差点付近のセブンイレブン)に到着するとさらに驚きの光景が。コンビニのお客がローディーだらけww 駐車しているバイクも、高そうなものばかり。流石はヒルクライムの聖地。何かのイベントなのかと思うほどの賑わいです。

 これだけの人を集めるヤビツ峠。そもそも、いったい何がそんなに凄いのでしょう? 何がローディーを惹きつけているのでしょうか。今回のライドはそれを調査するのが主な目的です。

 では恒例の坂スペックを。スタート地点は人によっていろいろあるそうですが、一般的なのは246号線名古木(ながぬき)交差点や、そのすぐ脇にあるセブンイレブンなど。今回我々はセブンイレブンをスタート地点とします。



 そこから市街地をしばし登って行くと、山の中へ。ヤビツ峠自体は、丹沢の山と、その西側にある大山の間を貫くような峠で、登り切って向こう側に下ると宮ケ瀬湖が出てきます。

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 距離は約11kmと、峠としてはやや長め。平均斜度は約6%とさほどキツくはなく、最大斜度も11~12%程度らしいです。スタートコンビニの標高は約100m、ヤビツ峠のてっぺんは約760mで、高低差は約660m。今までの坂で似たものを探すとあまり無いですが、強いて言えば「都民の森」の距離を半分にして、休憩できる平地・下り区間を取っ払ったような感じでしょうか。

 「脚つき無しでの登坂」を目標として挑みますが、ぶっちゃけ、坂スペックを見るかぎり脚をつくような激坂ポイントも無く、これまでの強敵達と比べれば、問題なくクリアはできそう。なに俺超えらそう。
 
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 ただ、気になるのは約11kmというなんとも言えない微妙な長さ。3~4kmの峠であれば、辛くても勢いでなんとかなったりしますが、11kmにもなると勢いではどうにもならず、ペース配分をうまくやらないとヘロヘロになる可能性大です。

 さらに、最も大きな問題は「ヤビツに来たのなら、せっかくだからタイムを計って己の実力を試さねば」という気持ちになる事。普通のローディーであれば、それでまったく構わないのですが、ご存知の通り、我々は“速く登る”とは無縁のインナーロー教団。できるだけ脚を温存し、坂道をゆるゆるとやり過ごし、なんとか家に帰るための走法を得意としています。まさにヤビツ峠タイムアタックで求められるものとは、正反対の登坂スタイルなのです。

 これまで様々な峠はクリアしてきたので、私があたかも山を颯爽と登れるようになったと勘違いしている人が多いと思いますが、実際は今にも止まりそうなノロノロスピードで、「あひー、死ぬ―、うぎゃー」とか言いながら、ひたすら時間をかけて耐え続けているだけ。傍から見たら非常にカッコ悪い登坂スタイルで、登れる同行者にも迷惑をかけますが、そんなことは気にしない神経の図太さがインナーロー教団の教えの根幹です。

 よって、“速く登る方法”など何もわかりません。限界を超えて一生懸命脚を回して、自分をストイックに追い込んだ経験もゼロ。このヤビツでふざけて「タイムアタックじゃー」とか言ってぶん回したら、クリアタイムどころか、スタート直後に道端で大の字になって「3年後に起こして」状態になるやもしれないのです。

 私の中で目安となる登坂スピードは“時速10km”。これを超えていると「今日は頑張って速く登っている」モード、割り込んで時速5km、6kmに突入すると「ヘロヘロでなんとかやり過ごす」モードと分けられます。

 ヤビツ峠は約10kmなので、頑張ってる“時速10km”モードで走り続けられれば、1時間でクリアできる計算。よって、目標タイム“1時間切り”を掲げてスタートしました。
 
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 コンビニを出て走りだした瞬間、歩道にいたワンコ様が、真剣な顔でうん◯をしはじめるという幸先の良いスタート。ですが、序盤の市街地から、想像していた以上の斜度に面食らいます。

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 10%近くはあるでしょうか、序盤は元気なのでなんとかなりますが、サイコンを見ながら「時速10kmを切らないように」と頑張ってしまうと、無意識のうちにゴリゴリと脚を削られます。「序盤は抑えて抑えて」と思いながらも、サイコンの速度を見ると思わず脚に力を入れてしまうという悪循環。今にして思えばこの住宅街区間で、もう少し落ち着いて、柔軟なスピードの増減をしながらクリアすべきでした。

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 途中、赤信号につかまるアクシデントもありましたが、キツイ序盤区間をなんとかクリア。小さな橋を渡ると、次第に緑が増え“山の中に入った”という感じがします。
 
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 山の中に入ると「うぎゃー、峠だ、キツイわー」と思い込んでしまいますが、斜度的にはこれまでの市街地区間の方がキツイ印象。たまーにワインディングでキツイ斜度も出てきますが、それは外側ギリギリを走って斜度を緩くしたり、坂の手前で心拍を落ち着けたりするこれまでのテクニックを使えばなんとかなります。

 斜度が低い場所や、たまにあらわれる僅かな平地区間では、できるだけ脚を回してタイムを稼ぎます。10kmを大きく超えるスピードで走った区間が長ければ長いほど、キツイ坂のノロノロ登坂で時間がかけられます。
 
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 全行程の3分の2を超えたあたりで、「このまま行けば、1時間を切れるかも!」と希望が見えてきましたが、そう簡単にはいきません。左脚のモモの裏側からふくらはぎにかけて“攣りそうな気配”がしてきたのです。

 クリートの位置を大胆に変更し、脚に必要以上の負荷をかけない登坂スタイルを貫いた結果、2,000m以上を登っても攣らなくなり、私の中で“脚が攣る”という問題は過去のものになったハズ。それが、7kmくらいしか走っていないのに、攣りそうなった事に衝撃を受けました。

 追い込むと、こんなにもたやすく攣ってしまうのです。逆に言えば、“いつもどれだけ脱力してクランクを回しているか”という証拠でもあります。

 慌てて封印していたダンシングに切り替え、脚をのばしてストレッチ。それ以降も、シッティングで攣りそうな気配がしてきたらダンシングでストレッチ……という組み合わせで登り続けます。
 
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 ちなみに全員一斉にスタートしましたが、序盤の終わりでゆっけさんに抜かれ、既に背中は見えません。やはり奴はスパイに他ならないと確信。トミィさんは序盤でとっくに見えなくなっており、振り返る余裕は無いけれど、バックミラーにチラチラ見えているので、私の後ろにトントンさんがついて来ている……という布陣。

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 だいぶ登ってきたので、恐らくあと1km程度のところまで来ているハズ。山深くなり、時折見える下界の眺望は素晴らしいですが、ハッキリ言ってちゃんと見ている余裕はありません。写真撮影なんてもってのほか。「10km切らない、10km切らない」と念仏のように頭のなかで繰り返しながら進みます。
 
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 しかし、最後にまた斜度がキツくなりはじめ、体幹で支えられなくなってハンドルがフラつきます。スタミナが無いので、約1時間の高負荷運動を終える前に、体の方が悲鳴を上げているのです。

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 「そろそろ終わってくれないとヤベエな」と考えていると、視線の先の坂道が唐突に終わっており、そのちょっと先に茶色の屋根が見え隠れ……。「あれがゴールかな?」、「でももし間違っててスパートかけちゃったら死ぬな」などと迷っていると、大勢のローディーの姿が。

 慌ててスパートをかけてゴール!!

 
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 時計を見ると、約55分。

 なんとか1時間を切れました\( ;∀;)/

 ヤビツ峠:血の味指数10

 ちなみにトミィさんは約50分、ゆっけさんが約53分、トントンさんが芸術的な59分と、だいたい3分間隔のフィニッシュ。と~るさんは約46分とか宇宙人なので、50分台がおそらく人間味あふれる一般的な記録なのだと思われます。

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 で、登り切ってどうだったのか? という話ですが、

 一言で表すと、ヤビツ峠は超ちょうどいい峠

 何がちょうどいいのか、それは斜度のキツさと距離です。途中に自転車を投げ出したくなるほどの強烈な激坂は無く、かといって鼻歌交じりに終えられるほど緩くはなく、一定の負荷をかけて一生懸命登らなくてはならない適度な難易度。そして、「え? もう終わり?」と言うほど短くなく、かといって私のようなスタミナ不足の野郎が、「もーそろそろダメだ」と音を上げるか、上げないかのギリギリのところで終わってくれる短さ。

 歯ごたえがあって、達成感が得られ、でも登ったことを後悔するほどキツくはなく、都民の森のように長くてダラける事もないという、奇跡的なバランスの良さ。これは確かに、多くのローディーが集まるのもうなずけます。いやぁ、家の近所に1個欲しいわ、この峠。

 しばらくヒルクラ談義に花を咲かせた後は、少し下って、気まぐれ茶屋に移動。お昼ご飯に、優雅にカレーやら何やらに舌鼓。もうこの先、坂が待っていないと思うと、こんなにもゆったりと心安らかに食事ができるんだなぁ……。
 
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 その後は、裏ヤビツの木漏れ日の中を気もち良くダウンヒル。以前、真冬に来た時は津軽海峡冬景色みたいでしたが、今日は生気に満ちた、希望にあふれる光景に見えます。

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 宮ヶ瀬湖に辿り着いたら、このあいだ食べそこねたオギノパンへ。学校給食のあげパンも作っているという、パン屋さん……というか、パン工場。当然、揚げたてのあげパンが名物だそうで、各所にランドセルや学校の机が配置されたユニークなパンのテーマパークのようになっています。

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e3e05b84あげパンなんて、別に揚げたてだからって、そんなに騒ぐほど美味しいものでもないんじゃね?



 サクッ

e3e05b84うめええええええええええええええええええ


e3e05b84え、なにこれ!!


e3e05b84なんでこんな美味いの!? クシュってなって、口の中で砂糖と一緒に溶けて無くなったよ!! 


 あまりに美味しいので、きなこパンも追加で購入。

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e3e05b84うめえええええええええええええええ!!


e3e05b84え、なにこれ!!(以下無限ループ)



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 移動販売のコーヒーも来ていたので、レモンスカッシュを注文。

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e3e05b84うまうま。サッパリしていいわー。
あれ? この机に置いておいた俺のパンは?

BFQit6Dg_200x200ゆっけさんが机の引き出しの中に隠してましたよ



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e3e05b84おいwwwwwwww
小4ぶりにやられたぞこのイタズラww


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 峠もキッチリクリアして、美味しいランチとおやつも食べ、あとは優雅に尾根幹を飛ばして帰るだけ。思いつきで決行した表ヤビツアタックでしたが、獲得標高は1,000mちょいで疲労も適度、夕方には家に帰れて、参加者全員意外なほど高評価なルートでした。

 最近2,000mオーバーな凄まじいライドばかりだったので、このまったりした時間の使い方や、心地良い範囲で終わる疲労具合、帰宅後に自転車の掃除でもするかという元気の残り具合などが逆に新鮮。こういう大人なライドってのも良いもんです。

-5xqteuTというか、普通のロード乗りのライドはこんな感じなんじゃないですか?



e3e05b84たぶんそうwww



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