
前回までのあらすじ
ヤビツ峠の偵察に行ったハズが、八甲田山に迷い込み、ヒルクラ無関係に雪中行軍スキルとパンク修理アビリティが向上したへるはん。これはヤビツの神による「オマエごときインナーロー教団が、私に挑むなど早すぎるわ。3年くらい」という啓示に他なからなかった。
今のへるはんに必要なのは、さらなる修行の時なのである……。
茶川探検隊(仮)の中でも、あまりにも坂が登れず、でもガチな人達のような練習は想像しただけで失禁。コッソリのんびり登って、坂嫌いをなんとかしようという坂練も、数えるのが面倒なほどの回を重ねてきました。
冗談のような辛い坂、そこそこの辛さなのに見晴らしが良い坂、遭難しそうな坂など、東京近郊にも、自然豊かないろいろな場所があると知ることができた日々と言いかえる事もできます。
【↓ダイジェスト動画はこちら↓】
(読了後再生推奨/画質は720/60p、1080/60pがオススメです)











獲得標高 にせんろくじゅうごめーとる




へまさんに言われて地図を良く見てみると、大きな峠に最短で向かっているのではなく、ウネウネと細かく寄り道が引かれています。つまり、メインディッシュの峠に行く前に、前菜やら食前酒やらシェフの気まぐれサラダやらのプチヒルクラが大量に追加されています。注文してないのに。メインディッシュを食べる前に脚をゴリゴリと削り、食べ終わって帰る途中にもゴリゴリ削るというまさに鬼のフルコース。











そんな関脇さんの愛車は電動コンポのキャノンデールですが、なんといっても眼を惹くのはホイール!! スポークが1本だけ黄色いのです。


これは「キシリウム125」。1889年に創業したマヴィックが、125周年を迎えたのを記念して昨年発売されたもの。黒白のシンプルなフレームに、鮮烈な黄色が栄え、得も言われぬカッコ良さ。


あれ、フレームに貼られてるステッカー、もしかしてDeroさんのショップと同じ?





ようやく出発。
というわけで、参加者はDeroさん、と~るさん、へまさん、ゆっけさん、関脇さん、私。そして、Deroさんプレゼンツの地獄ライドと知らずに参加希望をしてしまい、「まあキルハさんなら余裕でしょ」と勝手に俺が判断したキルハさんの7人。とりあえず、名栗方面を目指して多摩湖へゴー。
序盤は「ゆっけさん先行って」、「ゆっけさんホラ速く」、「いいから牽いて」など、全員の総意により、ゆっけさんが先頭を牽







ほどなくして、多摩湖の手前、武蔵村山のラルプ・デュエズに到着。

坂をもろともせずにかっ飛んでいくDeroさんと、それにピッタリついていくと~るさん。関脇さんもそのスピードについていきます。
と~るさんはジテツウしていて、痩せているので以前から「ヒルクラ得意そうだなぁ」と思っていましたが、その印象は正しかったようです。関脇さんは、マニアックな愛車なのでロード歴長そうですが、実は初めて1年も経過していないとか。脚力がありそうなので、速いスピードでグイグイ登るタイプかもしれません。ちなみに俺が1年未満でDeroさんの坂練に連れていかれていたとしたら、間違いなくJAFります。

撮影班としては、頑張る3人に食らいついて勇姿を記録すべきところ。特にDeroさんのパワフルで綺麗な登坂スタイルは、近くで見ていると「スッゲエー! もっと見たい!!」と思います。しかし、無理してそれについて行こうとすると、先ほどへまさんに言ったとおり、自分のペースが狂って大変な事になるのはこれまでの経験で学習済みです。
ただでさえ、今日のルートはどんなに脚を温存しても売り切れ間違いなしの構成。序盤だからといって脚は使いたくありません。脚にも下半身にも、上半身にも力を入れず、ペダルを回すために必要な力だけを最小限に小出しにしながら前に進みます。誰と、どこに行く場合であっても、頭フルに使って可能なかぎりロードバイクの上でダラける。それが躊躇なくインナーへ、脚をつかずに帰宅できれば全員優勝が合言葉のインナーロー教団の走り方です。



コンビニ休憩中に、ゆっけさんのブレーキを調整するDeroさん。自転車整備の専門学校とか通って、簡単な整備が一通りできるようになりたいなぁ……。

実は今回のライド、ルートを良く見たところで、恐ろしくなるのはわかりきっていたので、あえて細かく見ずに挑みました。いつ坂道が登場するかわからないドキドキ感、不安感はありますが、知らないことで「いつか終わる」という希望も持てると考えたのです。
最初のコンビニ休憩後、さっそくジャブ的な坂が登場。「けっこーキツイ」と半笑いながらも、脚を極力使わずにクリアします。

その後もワン・ツーパチのように繰り出される前菜坂。皆に離されても慌てず、自分のペースを保って登ります。



幾つかの坂を超えて、2度目のコンビニ休憩。こまめに、食べられる時にはしっかり食べて補給する。坂とは直接関係ありませんが、100km超えのライドでは、序盤の定期的な補給が後半に効いてきます。体の中からエネルギーが無くなり、スッカラカンになった時に「胃袋も疲れてなんも食べたくないー」となるのが一番危険です。
駐車場でモグモグとフランクフルト食っていたら、1台の赤いロードバイクがスーッと……。

なんと!! ちまちまさん!!
仕事が一段落したので、名栗方面に行こうとしていたというちまちまさん。車通りが激しいので、坂の方に迂回していたら、「見たことあるローディー集団がいるw」と、偶然我々に遭遇したとのこと。平地スキーなちまちまさんは、「Deroさんの坂練かぁー」と頭を抱えますが、出会ってしまった以上、諦めてもらうほかありません。


いよいよ名栗方面へ。緑が多くなってくると、気が引き締まります。



幾つかの坂を超えた末に、見覚えるのある分岐点が……。先頭のDeroさんは、右の道へと進んでいきます。曲がった先を目にした瞬間、記憶がフラッシュバック。
昨年の7月、まだ私が1人で「手頃な坂で練習しよー」とか言ってウロウロしていた頃、「名栗湖ってところに行ってみよう」と出かけて、ひどい目にあった場所です。この坂、やはりローディーの中では有名で、「東京バーディー坂」とか「バーディー坂」とか言うんだそうな。

あの時は一人で発狂して、脚をついて「だめだー!」とかやっていましたが、今ではキツイながらも、脚がつく心配はなく登っていけます。斜度的には10%を超える場所も一瞬ありますが、そうしたキツイポイントも、覚悟ができていれば対処は可能です。
とか言うとカッコイイですが、もちろん力でねじ伏せるのではありません。最小限の力で、膝に負荷をかけず、スルリとスルリと、忍び寄るようにゆっくりと……。そんな登り方をしていると、視界に入るのはゆっけさんだけになりますが、んなこと気にしたら負けです。

バーディー坂を超えると、すぐにまた中ボスクラスの峠が登場。名栗湖に行く時にはお馴染み、山王峠です。斜度はさほどキツくありませんが、直線の坂が視界の先までズッと続く、いわゆる“ダラダラ坂”タイプ。インナーロー教団にとっては攻略しやすい部類ですが、スタミナが無いのであまり楽観もできません。

ゆっけさんと2人で、ダラダラ登っていると、前方から、とっくに登坂を終えたDeroさんがUターン。
私の後方にいるゆっけさんの背中に、Deroさんがピッタリと張り付き、特訓開始。追い立てられたゆっけさんが、「あひゃー!」とか言ってるのが聞こえますが、心を乱してはいけません。
聞こえないフリをして黙々とペースを維持していると、いつの間にか隣に上がってきたDeroさんが、私の背中をグイー!!と押して「このくらいのペースで登るんだ」的な強制スピードアップwww
ゆっけさんと悲鳴をあげながらクランクを回していると、ようやく山王峠の頂上に到着しました。



山王峠のダウンヒルは、ド直線で路面が綺麗なので気持ち良さは満点。まとめ動画でお楽しみください。


ここからは、のどかな山間を進みます。目指すは最初の大ボス・山伏峠の入り口。恐ろしい事に、ここまで坂をいくつも超えたのに、まだメインディッシュの1品目すら出てきていないのです。
ふと、振り返ると、今までずっと前を走っていたはずのキルハさんの姿が遥か後方に。私なんかより遥かに走れるキルハさんが遅れるのも妙なので、気になって立ち止まってみると。なんと、「体はまだ疲れていないのに、なぜか脚が攣った( TДT)」とのこと!
急遽、攣りを治す薬を飲みつつ、休憩してマッサージ。確かに、疲労が蓄積したとか、そういう明確な理由が無い時に攣る事ってあります。姿勢とか、心理的な緊張とかもあるらしいですが……ともかく、大ボスを前に、はやくもサバイバルライドの様相を呈して来ました。脚の具合を見ながら、ゆっくりと再スタート。



以前、皆で名栗で遊んだ時に焼きカレー食べたターニップさんを通過。




そして最初の関門、山伏峠に到着しました。この峠を越えていった先は、めんまライドの最終目的地であった秩父。今となっては、懐かしさすら感じる峠です。
あの時は、真夏のまっただ中。日差しの中にいるだけで立ちくらみがするような外気温35度オーバーの中を、初の本格ヒルクラで挑んだら、塩分・水分補給が足らずに熱中症に陥り、両手両足が痙攣して視界から色情報が消えるという、なかなかダイナミックなオチがつきましたが、今思うとただのバカでした。

ただ、臨死体験をしただけあり、この峠の事は夢にうなされるほどよく覚えています。序盤の住宅地部分が意外にキツく、中盤も同様で、後半がむしろ斜度がゆるくなるタイプ。つまり、最初でハッスルせず、峠の半分以上を一定ペースでクリアできるような負荷で登っていければ理想的です。
また、今回のライドはコレだけで終わりではありません。この後には、さらに恐ろしい仁田山峠が控えています。山伏峠で全力を出しきるのではなく、余力を残しながら登らねばなりません。



坂スペックとしては、長さが約4km。平均斜度は約7%。途中でキツくなるところもありますが、道幅があるので、車に気をつけて大回り気味にカーブをクリアすると、斜度を必要以上に上げずに登ることができます。



走っていると、登場するのはかつてのんれす氏と倒れこんで休憩した日陰や、体中が痙攣して立っていられずに座り込んだ草むらなど。「あの時はペースも何もなく、力いっぱい漕げば坂が登れるんじゃないかとまるで勘違いしてたなぁ」なんて思いながら、ゆるゆると登っていきます。




山伏峠の特徴は、登坂中に、これから進む先の道路がよく見える事。予想よりも遥かに高いところを道路が走っていて、「あんなトコまで上がるの? 冗談じゃないよ」と心が折れかかるので、心が弱い人は黙々と前を見ながらクランクを回すしかありません。

谷側の景色は最高なので、行く先を見るより、横の景色を見ながら登った方が、気分的には楽です。




ゆるゆると、無事に脚つき無しで、山伏峠をクリア!!
山伏峠:8血の味。入山峠あたりと同じくらいです。


楽しい楽しいダウンヒル♪
山伏峠は路面が綺麗で道幅が広いので、ダウンヒルは快適そのもの。ただ、途中でガードレールが無い区間があるので、くれぐれもスピードの出し過ぎには注意!! 下ハンブレーキでないと、減速しきれずに谷底へさようなら確率もゼロではありません。
あっというまに山伏峠を降りると、そのまま来た道を戻ります。下り基調なので、平均速度35kmオーバーでかっ飛ぶことしばし……。浅岡屋商店さんに到着したら、店の脇に目をやると、そこが第二のボス、仁田山峠の入り口です。

2014年の血の味ランキングでは、9.2血の味で2位を獲得している仁田山峠。しかし、前回は敗走しているので、この血の味指数は峠の辛さを正確に表わしてはいません。恐らく今回、脚をつかずに登り切る事ができれば、この数値はさらにアップするでしょう。
脚をつかずに登り切れるかどうか? 実のところ、その答えは意外にはやく出ます。というのもこの仁田山峠、スタート直後が猛烈にキツイのです。
入口付近は桜の名所として知られているそうですが、その桜並木ゾーンの入り口、ゾーン全体、ゾーンを抜けるまでが、恐らくズーッと10%オーバー。左カーブを過ぎた後は、12、13%くらいはあると思われます。ここで脚をついてしまうか、脚を削られ過ぎると、脚つき無し攻略は困難になります。

スタートしてしばし、ここで関脇さんがUターン。山伏峠をクリアした関脇さんですが、頑張りすぎたのか膝が痛くなり、このまま仁田山に挑み続けるのは難しそうです。先に、昼食をとろうと考えている飯能のカフェキキさんに、山を迂回して先に行っていてもらうことに。残念ですが、ロングライドで無理は禁物です。

ここが前述の桜並木ゾーン。比較対象物がないのでわかりにくいですが、10%近い坂が続いています。

ここを左折した先が、さらにキツイ……。ハンドルを引き寄せて、上半身や腕の力でなんとかしようとすると、無駄に体力を使うわりに先に進まないので、「体幹体幹」とぶつぶつ繰り返して、その他の筋肉は脱力。脚の力も最小限に抑え、ペダルを効率よく回す事だけに集中します。
すると!! 今度はちまちまさんが「頑張りすぎて両足攣ったww」と笑いながら降りてきて、そのままカフェキキへ。さらに進むと、草むらでキルハさんが「攣りが治まったと思ったけどぶり返したww」と座り込んでいます。ということで、キルハも先にカフェキキへ。
倒れた仲間の上を進んでいくこの感覚。まさしくサバイバルライド。Deroさんは当然のこととして、と~るさん、へまさん、そしてゆっけさんまで見えなくなってしまいましたが、ここで動揺しては仁田山峠の思うツボ。深呼吸をしてひたすら一定ペースで進んでいきます。







前回心が折れて、半笑いで見上げていた坂も、来ることがわかっていれば覚悟はできます。激坂区間の手前でスピードをさらに落として、心拍を落ち着け、急ぐことなくそのままのまったりスピードで登っていきます。
仁田山峠の恐ろしいところは、小刻みなアップダウンがある事。それが平均斜度詐欺を生み出す要因なのですが、それよりも怖いのは、短いダウンヒル区間で調子にのって、「勢いをつけてこのまま次の坂をのぼりきってやろう」と色気を出す事。
下りのスピードを有効活用したいばかりに、「あと少しで登りきれるから」と、強い力を入れてクランクを回したり、急に立ち漕ぎしたりすると、坂をのぼりきった時に思わぬダメージが残ります。登りきった場所の次が、下り坂か平地であれば、息を整え、ダメージを回復する事も可能ですが、もしその先がもう一つ登りだったら、一気に脚つきの危険性がアップします。先が読めない時は、ダウンヒルに惑わされず、一定ペースを守った方が結果的には良い事も多いです。

そんなような事を考えながら、飽きるほどのアップダウンを繰り返していくと……いつのまにかアップが無くなり、ダウンばかりになりました。恐らく、仁田山峠の頂上地点を抜けて、下り区間に入れたのでしょう。予想通り、序盤のキツイ桜並木ゾーンを脚つき無しでクリアできれば、最後まで脚つき無しで追われる可能性はグッとアップする峠のようです。
ダウンヒルとなれば、スピードアップして皆に追い付きたいところですが、まったくスピードが出せません。理由は路面の状態。落石が多く、そんな場所をダウンヒルすると、頭をよぎるのは先週の裏ヤビツでのカットパンク。これだけ苦労して脚つき無しでクリアしたのに、ダウンヒルでパンクでもしようものなら、それが無になってしまいます。慎重に慎重を重ねて、ようやく仁田山峠を抜けました。

仁田山峠:9.6血の味

峠を抜けると、Deroさんが看板を指さします。そこに記されていたのは……

この先がそうなのか!!

そう、恐怖の四天坂の一角、子ノ権現。伝説では、和田峠の最大斜度をも超えると言われていますが、山伏、仁田山を越えてきた今の私では、その姿をチラッと見に行っただけでも、即死する可能性があります。

ああ恐ろしや……まさに触らぬ坂に、痙攣無し。
ここは大人しく退散し、皆が待っているカフェキキで、今日のライドが奇跡的に脚つき無しで終われた事を喜ぶことにしましょう。


さすが、Deroさんオススメのカフェキキさん。1個あるだけで、ありがたくて泣けてくるバイクラックが2台もあります。
ロードバイクは盗難が心配ですが、大丈夫。


ジバニャンとコマさんがしっかり見張っていてくれます。

え、ブログで紹介すると100円引きしてくれるの? 俺のためにあるお店かここは。

バイクラックが2台あるだけで、ブログで褒めちぎる気満々ですが、なんとマスターのサービスで食前のスポーツドリンクをいただいてしまいました。峠の連打でカラッカラだったので、意味がわからないほどうめえ

さらに、補給食の塩羊羹まで!! な、なんだこのお店は、いつも飲食店で肩身が狭い思いをしているローディーに、神が与えたエルドラドか。父さん、ラピュタは本当にあったんだ!! 飯能に。店内BGMジブリだし。

カフェですが、本格的な料理もラインナップ。カロリーをガッツリ補給したい人は、もちろん大盛りも可!! ナポリタンにオマケでついてるソーセージが美味しそー (*^^*)

カルボナーラも疲れた体に最適!

私とDeroさんは食べやすそうなカレーをチョイス。スパイスが効いていて、少し辛いですが、ロードで疲れて食欲が無くなるなんて人には、この辛さが刺激になってバクバク食べられそう。現に私が胃袋までヘトヘトでしたが、かつてないスピードで平らげてしまいました。


ゆっけさんが追加でオーダーした、焼き餅入りのお汁粉。ユニークなのは、生クリームがトッピングとしてついてくる事。和洋折衷ではありますが、この組み合わせが美味しくないハズがありません。

ウサギ的な誰かがおしるこ内に隠れてるぞ。

隠れていると言えば、お店の中を見回すと、そこかしこに猫の姿がある事に気づきます。

時計もクロネコ…… ん?

なんと!! サイクルジャージにも猫の肉球が!!
なんでも、カフェのロードバイクチームがあり、そのチームジャージなんだとか。ホントに可愛いデザイン。これだとガチライドもいいですが、胸を張ってグルメポタリングできそうww
ちなみに、Deroさん経由でマスターは、なんと茶川探検隊(仮)をご存知だそうな(驚)。






あまりに居心地が良いので、すっかり長居してしまいました。ごちそうさまでした。
マスター、ブログもやっていらっしゃいます。我々一行の自転車の写真も貼っていただきました。100円引きしてもらったから書くわけじゃありませんがw とりあえず「ロードバイクで外食ってツライよなぁ」と思った事のあるローディーは全力で行くといいです。世の中捨てたもんじゃありません。またお邪魔しますー。
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CAFE KIKI
Tel:042-977-2020
住所:〒357-0125 埼玉県飯能市上赤工15-5(地図)
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あれはヤダ。一度通った道を二度通るなど、言語道断だし。その、ゴルフ場のとこでいいよ。





ていうか、この先にいったいなにがあるの?





意味がわかりません。さっき私は、心やすらぐ空間で、美味しいカレーを食べていたハズ。それから3分とたたずに、目の前にクライモリと壁が現れました。坂ではありません、壁です。
恐ろしくてDeroさんのルートを良く見ずに参加した今回のライド、私が不要に選んだ選択肢により、最後の最後に現れたのは、東都飯能CC(カントリークラブ)の激坂。
美味しいカレーがリバースエンジニアリングしかける、しょっぱなから12、13%越えの完全なキルゾーン。頭が状況を理解できないまま進むと、斜度も上がり続け、恐らく15%程度まで達しつつあります。
普通に挑んでもツライですが、ここまで山伏、仁田山と越えてきて、脚はすでに売り切れ寸前。そこにこの激烈な斜度。あまりの辛さに悶絶しながら前方を見ると、すでにちまちまさんとキルハさんが押して歩いているという、異次元光景。
その前方にゆっけさんが見えますが、上半身を上下に大きく揺らしながら、ゆっくりと進んでいます。私だけが知っている事ですが、この揺れは、ゆっけさんがマジでキツイと大きくなる傾向があります。つまり、この先はもっとキツイいという事です。

この激坂、恐ろしく見通しが良く、先までこの異常な斜度が続いているのがわかり、心が折られそうになります。
歯を食いしばりながら、そのまま数十メートル進むと、視界にありえないものが写り、鳥肌が立ちました。ゆっけさんの更に先を進んでいるへまさんが、横に進んでいるのです。道はまっすぐなのに、横に進んでいる。つまり蛇行しているという事。あの和田峠ですら、へまさんが蛇行をしているところなんて今まで見たことがありません。

最初は、「最後の最後にこんな坂を配置して、Deroさんは鬼だなぁー」みたいな事を言って、笑って終わるビジョンが頭をよぎっていましたが、ふざけている場合ではないとようやく理解しました。これは、インナーロー教団として持てる技のすべてを使わないと、本当に脚をついてしまう坂です。
へまさんの蛇行を見た瞬間に、ハンドルを切り、私も蛇行に切り替えます。先を進むへまさんが、蛇行せざるおえないような場所がこの先にあるのは間違いありません。今のまま直線で私が進んで、その場所に辿り着いた時、私の余力では、蛇行してもクリアできない可能性があります。
であるならば、そこに至る現時点から蛇行を開始。少しでも斜度を緩めて、心拍を落ち着かせ、脚の力を温存させながら進むのが最善です。しかし、この激坂があとどのくらい続くかわからない以上、こんな作戦でどこまで通用するのか見当がつきません。
そして衝撃第2弾……


恥も外聞もなく、即効で蛇行に切り替えた私に対し、ゆっけさんは直線で進んでいたため、脚の負荷が許容範囲を越えてしまったのでしょう。今まで「ゆっけさんが脚ついたー! 俺の勝ちー!」というギャグを何度もやってきましたが、車が来て後ろを振り向いたらバランス崩したとか、チェーンが落ちたとか、いずれも辛くて脚をついたわけではない、ある種のネタばかり。
しかし、今回は脚が売り切れ寸前とはいえ、本当に坂がキツくて脚をついたわけです。ここでもし、私が最後まで脚つき無しでクリアできれば、初の勝利と言っても良いかもしれません。逆に、私まで脚をついてしまったら、今までインナーローゆるゆる登坂作戦で、なんとか敵をやっつけてきた教団の方法論そのものが否定される事になります。これはなんとしても、クリアせねばなりません。
ゆっけさんをイジるために口を開く余力すらなく、歯を食いしばって先に進みます。

カーブを曲がると長い激坂。カーブを曲がると長い激坂。カーブをまがるたびに抱く、かすかな期待を、無慈悲な斜度で粉砕していく冷酷さに震えます。
後にわかることですが、この東都飯能CCの激坂、距離は1kmちょいと短いものの、最大斜度22%という、あの和田峠(最大約18%)をも超える強烈なヒルクラスポット。世の中知らない方が良いという事はあるものです。

もはやテクニックもクソもありません。腕にも上半身にも力を入れず、蛇行を繰り返し、かろうじてその状態で前に進むだけの最低限の力でペダルを回す。もはや、回す力の半分は、脚が重力に引っ張られる重さと言っても良いかもしれません。私にできうる、究極の省エネ走法。それが続けられずに息絶えるのが早いか、息絶える前に坂道が終わるか、ただそれだけの勝負です。

もう写真がなんだかよくわかりませんが、谷底から這い上がるように地面を進んでいる私の前に、山肌があり、その上に木があり、そこにゴールしたDeroさん、へまさん、と~るさんがいます。
誰だこの道作ったの、ホントに。ハシゴ置いておけ


最後のカーブ。もはや記憶がありません。ゴルフ場のカートではなく、レールの上を走るゴンドラのような設備が目に入ります。高級外車で頂上のカントリークラブに乗り付け、このゴンドラに乗ってコースを回る中年ゴルファーの姿が頭に浮かび、極めて逆恨み的な理不尽さに気が狂いそうになった事は覚えています。
もっとも、カントリークラブに金も払わず、その裏山を、誰に頼まれたわけでもなく自転車で登って死にかけている私の方が、一方的にわけがわからない事をしているのですけれど。

意地以外のなにものでもありませんが、脚つき無しでクリア!! 立ち漕ぎも無しのオールシッティング、いつものスタイルで登り切れた事が、正直嬉しかったです。
東都飯能CCの激坂:19血の味

和田峠が18.3血の味なので、和田以上なのか、以下なのか、正直悩ましいところです。今回は、CC激坂の前に、幾つも峠を越えているので、血の味指数が底上げされているのは事実。坂スペック的に比較すると、恐らく和田峠の方がキツイ数値が出るかもしれません。
ただ、脚がフレッシュであっても、最大22%の勾配を含むこの激坂はタダモノじゃありません、激坂までアプローチする苦労を含めて導き出すのが血の味指数。距離が短めなので、「名栗に来たらこのCC激坂だけで終わるわけではなく、周辺の坂も幾つか行くであろう、その中でのCC激坂の辛さ」として和田超えの19血の味を進呈します。

あー、頑張りすぎて脳の血管切れるかと思った。




Deroさんの坂練、やっぱりハンパなかったですが、「こんな場所に、こんな坂があるのか」と目からウロコ。そして、それらをつなぎあわせれば、意外なルートでも負荷の高い練習ができるというのがよく分かりました。けれど、脚つきの危険性は、間違いなく今までで最高レベル。インナーロー教団の限界が薄っすら見える、示唆に富んだライドでした。


仁田山峠からエンドレスに下界へ降りれない奥武蔵グリーンラインのようなルートでした。
延々と続く林道に半泣きになりつつ、夕方になってもルートの8割くらいしか消化できず、心が折れて、途中で帰路につきました。
DEROさんの凄さと怖さ(?)がよくわかった気がします。