
【今回のダイジェスト動画はこちら】
(読了後再生推奨、720/60p、1080/60pがオススメです)
私は関東平野に住んでいますが、峠や林道で修行しようと考えた場合、当然ながら山のある場所まで行かねばなりません。北(さいたま)や東(千葉・茨城)の方に進むとなかなか山が出てこないので、西(奥多摩)や西南(尾根幹や相模原、神奈川)方向に行くほかありません。もちろん“自走で行くなら”の話です。
最近は城山湖や津久井湖、江ノ島など“東京から西南方向”に行く機会が多かったのですが、東京の峠のメッカと言えば、やはり奥多摩。現時点の私にとって、ラスボスである都民の森が鎮座している檜原村方面です。
ただ、「ラスボス怖い」と逃げまわっているためか、この奥多摩地域の峠について、実はさほど詳しくありません。私が把握しているのは、「武蔵五日市駅から西へひたすら進むと都民の森があるので注意」、「檜原村役場で右折(北東方面)するとに豆腐スイーツ屋さんがあって、その奥にひらすら進むと藤原という集落があり、その先にあのDeroさんが“あそこはヤバイ”と言う風張林道があるので行かないように」という2点程度。

しかし、山だらけの奥多摩、峠は2個だけではありません。その手前や奥地には、多様なヒルクラポイントが広がっている……らしいです。
茶川探検隊(仮)の中でも、特に坂道が苦手で、ヘコタレ気質な私とゆっけさんが、へまさんに物腰柔らかくキルゾーンに案内されて半泣きになる秘密の坂特訓。入山峠、牧馬峠と来て、3回目となる今回の舞台は、奥多摩・梅ノ木峠です。場所はこちら↓
まずはBCから武蔵五日市駅までワープします。





ワープ完了。今日の物語は、ここ、武蔵五日市駅前からスタートします。…









つるつる温泉は、武蔵五日市駅から北西に進んだ山の中にあるそうです。駅から温泉までの距離は約8km。そこに、今回のメインターゲットである“梅ノ木峠”の入り口があるとのこと。つまり、これからしばらくはつるつる温泉を目指す、のんびりライドとなります。行ったことはありませんが、“つるつる”という可愛い名前ですから、さぞや平和で平坦な場所なのでしょう。






聞かなきゃよかった峠プロフィール。逃げ出したい気持ちを抑えて挑むためには、モノの力を借りるしかありません。ゴールドのウイダーinゼリーを登ってもいないのに投入。進撃の巨人ドリンクで流し込みます。巨人のパワーで峠をねじ伏せようという自己暗示です。

五日市線のガードをくぐり、北へと向かいます。駅の近くは建物も多いですが、景色はすぐにのどかな風情につつまれていきます。道路は三内川という川に沿って、北西へと続いています。



既に山の中なので、平坦とはいきません。わずかに登っていますが、斜度がキツイと感じるほどではなく、車も少なく、自然の音を聞きながらの快適なライド。
走っていて気付くのが、ローディーの少なさ。土日ともなれば、都民の森側はしょっちゅうローディーの姿を見ますが、こちら方面の道はたまーーにすれ違う程度。同じような場所なのに、峠の知名度の差なんでしょうか?


やがて“つるつる温泉まで2km”という看板が出てきました。家も少なくなり、途中のバス停の時刻表が、かなり寂しい事になっています。



しばらく走っていると、「サイクルギャラリーRIN」という真新しい自転車屋さんが。通り過ぎながら観察してみると、ママチャリを売るような自転車屋ではなく、DE ROSAやクロモリなどのロードが並ぶ、スポーツバイクショップのよう。木をふんだんにつかった内装もおしゃれです。
「ここで商売になるのかな?」、「どうせならば都民の森側にお店を出せばお客さん3倍くらいいそうだけど」、「でもこっち側でもヒルクラ大会とかはやってるから」……などと、いらぬ心配をしながら通過。


















ウエルカム激坂どころの騒ぎじゃありません。つるつる温泉前の道は、無慈悲な9%台の坂攻撃の連発で、たまに10%パンチも。「つるつるって名前が可愛いよね」とか言いながらノコノコやってきた初心者ローディーのふくらはぎを釘バットで殴打する鬼の仕打ち。
つるつる温泉前で写真でも撮ろうかと考えていましたが、歯を食いしばりながら通過するのが精一杯で、立ち止まる事すらできません。こんな斜度で立ち止まったら、走りだす時にゴッソリ足を削られるのは目に見えています。
おや、背後から車の音が
あれ? 車きました? あああああああああ

あー!! ゆっけさん足ついたー!!(小学生)
ちょwww、いまのは車が来たので横に寄ろうとして失敗しただけで
やったー!! これで今日はもうどこで足をついても俺の勝利が確定した。(小学生)
三十路がハシャグ理由は1つ、迫る梅ノ木峠の恐怖から逃れるための防衛本能に他なりません。
このつるつる温泉の前を通りぬけ、さらに奥まで行くと、梅ノ木峠の入り口があるとのこと。入り口にたどり着くまでに死にかけているので、このまま峠に突入したら瞬殺されるのが目に見えています。
それを見越して、今回もインナーローでひたすら耐える戦法を駆使するのみ。同じく、インナーローに絶対的な信頼を寄せる、インナーロー教団の教徒であるゆっけさんと、2人でタラタラと登る後ろ向きな気合は満タンです。
また、ゆっけさんとはゴールまで足をつかないバトルのライバルでもあります。彼が足をつかない限り、私が足をつくわけにはいきません。






三十路がハシャグ理由は1つ、迫る梅ノ木峠の恐怖から逃れるための防衛本能に他なりません。

入り口に立つと、暗い林が奥に続いており、“入るって事はどうなるかわかってるんだろうな”と語りかけてくるようです。また、見たくありませんが、左の山肌を見ると、木々の葉に紛れて白い1本のラインが天空に伸びています。

これはガードレール、つまり、ここに足を踏み入れたら、あの白いラインを登っていく事が確定するわけです。しかし、ここまで来た以上「じゃ、そういうことで」と帰るわけにもいきません。大きく、重いため息をついて、クランクを回しはじめました。



序盤の斜度は想像よりキツくありませんが、ぶっちゃけ、つるつる温泉の手前でエライ目にあったので、斜度感覚がおかしくなっている可能性があります。確実に言える事は、斜度は9%を超えていますが、10%には到達していません。それもそのはず、この峠の平均斜度は9.6%とのこと。
9%は今の私にはキツイですが、インナーローで喋りながらノロノロと登る事は可能です。これが名栗湖手前の坂のように常時10%を超えると、途端に喋る余裕が無くなり、気を抜くと足をついてしまうという恐怖に脂汗が浮かびます。たった1%ですが、この差には天と地の開きがあります。
このまま9%程度が続けば、インナーローで黙々と耐えてさえいれば、いつかは頂上に辿り着きます。しかし、10%を超える区間が出てきてしまうと、耐えている間にみるみると足が削られ、耐える事すらできずにノックアウトされる可能性が高まります。

つまり、殺られる一歩手前の負荷を延々と与え続けてくるのが、この梅ノ木峠。確かにタダモノではありません。
ヒルクラ練習の第1回目で挑んだ入山峠は、斜度が7~8%程度でずっと変わらず、「インナーローで修行僧のように耐える」というよりも、「わー景色が綺麗だねー」とか言いながら登れるイメージ。登坂能力にばらつきのある茶川探検隊の皆で挑戦するのに、ちょうど良いのでは? と考えているのは、そうした面もあります。
ヒルクラ練習の第1回目で挑んだ入山峠は、斜度が7~8%程度でずっと変わらず、「インナーローで修行僧のように耐える」というよりも、「わー景色が綺麗だねー」とか言いながら登れるイメージ。登坂能力にばらつきのある茶川探検隊の皆で挑戦するのに、ちょうど良いのでは? と考えているのは、そうした面もあります。
とどのつまり梅ノ木峠は、入山峠の上位互換版のような感じ。斜度があまり変化せず、休む場所は少ないですが、時折絶景を見せてくれ、心理的な負荷を和らげてくれるところも似ています。
でも、景色は入山峠の方が綺麗かなぁー…… 。
でも、景色は入山峠の方が綺麗かなぁー…… 。





とは言え、「和田峠と同じカテゴリに入るほどキツイかな?」という疑問が頭をもたげます。先週挑んだ牧馬峠と同レベルの辛さである事に間違いはなく、都民の森と比較してもおかしくないキツさではありますが、あのへまさんがクリアできるか心配になるほどの難易度とは感じません。この場にけるさんや、のぼうさん、HAOさんらがいたら、「わーい」とか言いながら凄いスピードで視界から消えていくでしょう。
つまり、梅ノ木峠にはまだ何か、恐ろしい敵が潜んでいるに違いありません。恐らくそれは激坂区間。9%の斜度が崩れ、10%を超える場所の出現を意味します。事前情報では「17%の場所もあるって書いてあるブログもあった」とのこと。17%と言えば、私の限界である9%を遥かに上回ります。間違いなく、吐血して轟沈する数字。せめてその場所まで脚を温存しようと、ゆるゆる登坂が続きます。


我々2人に付き合って、ゆっくり登っていたへまさんが「思ったほどキツくないね」と言いながら、まるで斜度など無いようにスーッと加速して小さくなっていきます。上体はまったくブレず、脚の回転もスムーズな円運動のまま。
対する私とゆっけさんは、上体ブレを抑えようと思ってはいるけれどブレブレ、脚の回転は不規則な「うんしょうんしょ」状態。へまさんの後ろ姿と比べると、無駄な力がかかりまくっているのは明白です。「あんな感じに効率的に力を使ってクランクを回さないとダメだよ、回らないけど」などと、ワイワイ言いながら勉強します。

そんなことを繰り返しながら、しばらく進むと、今までの9%斜度から一段アップ、明らかに10%オーバー(11~12%くらい?)区間が。インナーローでゆるゆる作戦にほころびが見えはじめ、「あーやばいやばい」、「つれえww」の連呼。

道の先を見ると、大きな岩の切り通しに向かって右折しており、その右折部分で斜度がさらにアップ。推進力が足らず、フラついて、脚をつきそうになる恐怖に冷や汗がドバッと出ますが、なんとか体幹でふんばり「やばいやばい」を連呼しながらクリア。

正直、25%みたいなネタ激坂以外で、これまでで一番“脚をつきそうでヤバイ”区間ではありましたが、今のが17%区間だったのでしょうか? シッティングで登りきれてしまったので、私の脚感覚だと「17%は無くて、あっても13~5%くらいじゃないかなぁ?」という感じ。
そうなると、この先にさらに激坂区間があるという事でしょうか? 今のクラスの坂がもう一度来たら、脚をつく可能性はかなり高くなります。「今ので終わりであってくれ」と祈るような気持ちで進むと、2週間前に降った雪が溶け残っているポイントがそこかしこに。かなり高いところまで登ってきたんだという実感が湧いてきました。

すると、前方から、頂上に到達したへまさんが降りてきました。「もうすぐで頂上。身構えていたよりキツくなかった。もう激坂は無い」とのこと。その言葉を聞いて、ホッと一息。現金なもので、安心すると、回らなかった脚がクルクルと周りはじめ、スピードアップ。すぐに頂上の絶景へと到達しました。





入山峠も絶景でしたが、それに負けない景色。こちらの方が山深いイメージで、遠くの峰まで続いている送電線の群れが圧巻です。
梅ノ木峠、入り口のつるつる温泉も含めた上で、血の味指数:9.2。
せっかくなので愛車の記念撮影。

展望台的な場所で撮影する場合、カメラのアングルによって、高さの表現と、メイン被写体の強調具合がガラッと変化します。
上の写真は、メイン被写体とロードと水平の位置から撮影。遠くの山や青空の面積が増えますが、遠くてディテールが曖昧かつ、コントラストも低いので、結果的に手前にあるロードバイクが際立ちます。人間や愛車がメイン、風景はオマケであれば、このアングルが適しています。

ちょいとカメラを持ち上げて、見下ろすようなアングルで撮影。眼下に広がる谷や木々の面積が増える事で、“うっひゃー高けー!”感がアップします。
ただ、その代償として風景がメインとなるので、左下のロードバイクは、背景の中に埋もれ、存在感は希薄に。悪く言うと背景が“うるさく”なり、手前の自転車はそれらに埋もれたとも表現できます。どっちが良い悪いという話ではなく、その場の何を伝えたいのかによって、アングルを変化させるという話。面倒な時は、両方撮っとけば間違いありません。

水平。おそらく左のへまさんのロードに最初に目が行きます。

ちょい上から……。おそらく中央の谷に最初に目が行きます。……まあ、微々たる違いですけど。

カーブミラー記念撮影。


石碑を見ると、制覇したんだなぁという実感が湧いてきます。
さて、お次ぎはお楽しみのダウンヒル。爽快に下っていこう……と思いきや、日当たりが悪いのか、青梅側はご覧の雪景色……。








雪でテンション上がってますが、サクサクの雪ではなく、溶けて滑らかになったスケートリンク状態。こんな場所にビンディングシューズと、グリップ力の弱いロードバイクで突入するのは自殺行為。回れ右するか、凍っていない部分をゆっくり歩いてクリアしていきます。

青梅側もなかなか鬼畜な斜度。こちら側の方が、五日市側よりもキツイのかなぁ……。展望という意味では、五日市側の方が良さそうです。にしても日が当たらないので寒いww


完全に雪に埋もれていますが、途中で別の林道の入り口も発見。確かめる術はありませんが、この奥はいった、どんな事になっているのだろう……。


標高が下がると雪は無くなり、ようやくロードに乗れるようになりました。ただ、枯れ葉などが堆積しているカ所も多いので、慎重に進んでいきます。




青梅側に出ました。こちら側の入り口は、街道の脇にあり、これはこれで味のある入り口です。





お腹がすいたのでお昼ごはんにしましょう。うな重やお蕎麦がメインの和食屋さんですが、体力を回復させたいので焼肉定食や唐揚げ抵触をチョイス。……安いなこのお店。


家庭的な味でうまうま。お味噌汁があったまるわー。

メインイベントの梅ノ木峠はクリアしたので、このまま青梅から羽村などを経由して帰るのが予定していたルート。しかし、へまさんが「梅ノ木峠を含め、ここには3つの峠がある」と言い始めました。















何が起こったのかよくわかりませんが、梅ケ谷峠の入り口にいます。梅ノ木峠をクリアして、今日はバンザイハッピーエンドで終わるハズだったのですが、誰も拍手していないのに自然な流れでアンコールがスタートした状態。ぼんやりしていると、峠が次々と運ばれてくる、これぞまさにヒルクラわんこそば。


大垂水峠クラスだから、すぐに終わる。斜度もそんなにキツくないはず……という情報を心の拠り所にして進みますが、徐々に斜度がアップ。どう考えても8~9%程度になり、徐々に「話がちげえww」状態に。
また、誤算だったのは、梅ノ木で脚のパワーを使い果たしている状態で挑むと、例えどんな楽勝坂でも、強敵に豹変するという至極単純な物理法則をスパンと忘れていた事。
しかし、それを加味してもなかなか強敵です。脇をトラックがガンガン追い抜いていくので、気持ち的にものんびりできず、景色的なご褒美も無く、救いは距離が短めだという点のみ。
ゆっけさんと「あーもうダメだー」、「全然初心者向けじゃないww」、「やっぱり峠は1日1個までですよ」などと、ボヤキながらなんとかクリアしました。血の味指数的には、梅ノ木の疲労をプラスした状態だと6.5くらい、元気な時なら6くらいかなぁ……。

道幅がそこそこあり、路面が綺麗なのでダウンヒルは爽快。梅ノ木峠では雪に阻まれ、なかなか速度が出せませんでしたが、そのストレスをパーッと解消。これに関しては、登って正解でした。


帰りは五日市街道を避け、日の出町役場前の道を使って戻ります。五日市街道より走りやすい印象。多摩川を超えたら、五日市街道を高速巡航開始。





帰りのコンビニで、新しい補給食を物色。これは竹下製菓の「ふわふわケーキ」。いちご味だそうな。疲れてて食欲が無くても食べられそうなサイズです。

ケーキと名付けられていますが、マシュマロ。中にいちごのジャムが入っています。マシュマロは口溶けが良いので、疲れてても食べやすくて良いです。
今回のライド、梅ノ木峠は噂に違わぬ強敵でしたが、不思議な事に戻ってくると「メチャメチャ辛かった」という強いインパクトはさほど残っていません。恐らく、峠がスタートする前の、つるつる温泉の激坂のインパクトが強かったので、後の峠本編が「ツライけど、こんなものか」と感じてしまったのかもしれません。
もしスタート前から緩やかな斜度で、最後の最後にうぎゃー!! 激坂だー! という構成であれば、盛り上がりも最高潮で、“美しい形”として記憶に強く残ったのでしょう。まあ、山にしてみれば「そんな構成なんて知ったことか」という話ですが、“斜度が登場する順序”ってのも、結構ヒルクライムにとっては重要な事なのかもしれません。
【自転車レポで主に使用している機材】
梅ノ木峠行ってきました。
本当につるつる温泉手前からすでにきついんですね。
ブログ内でへまさんがへるはうんどさんのインナーロー解放が早いwwとおっしゃておりましたが、自分はへるはうんどさんよりかなり手前からインナーロー全開で行かざるを得ないキツさでした。
厳しい戦いでしたが、こちらのブログの総集編動画を思い出して、勇気をもらったり現実逃避したりして、なんとか登ることが出来ました。
本当にありがとうございました。
頂上での素晴らしい景色と達成感は何にも代えられないものですね。