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 以前書いたように、完成車からの初ステップアップ・ホイールとして、カンパのゾンダを購入。軽さと、乗り心地の良さ、そしてド派手なハブの音を満喫しています。

 特に軽さはロングライドの疲労軽減と、坂道の登りやすさに効果絶大。都内のちょっとした坂も、以前のホイールと較べて楽に登れるようになりました。「おかしいな? 今日はそれほど軽く登れなかったぞ? 体調が悪いのかな」と思って下を見ると、間違えてアウターのまま登り切っていて、自分自身で衝撃を受けた……なんて事も。

 軽量なホイールを購入すると「ギアが2枚分軽くなる」なんてよく雑誌に書いてあります。昔は「乗ってる人間が変わらないのに、そんなに変わるわけないでしょ」と疑っていましたが、実際に体験してみると「確かに2枚分くらい軽くなった……」と認めざるおえません。

 だから勘違いしてしまいました。
 
坂が登れるようになったんじゃないかと。


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 そんな事にも気づいていない私が立っているのは、武蔵五日市というJR五日市線の終着駅前。

 どこだよそれという人にわかりやすく説明すると、東京の電車の西の端っこの1つというイメージ。都内の学校に通っていると、遠足やら何やらで行く場所と言えば、高尾山や奥多摩湖、檜原村あたりである事が多いのですが、その中の1つ、檜原村(東京都の本州における唯一の村)の手前にある駅です。↓地図の、赤いミミズがのたくっている右端、緑の丸い印が武蔵五日市駅です。

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 私はここから、檜原村を越えて、都民の森まで行ってみようと考えています。都民の森、そう、関東ローディーのヒルクライム練習として有名なコース。そこに、上り坂大嫌い、全ての坂をブルドーザーで平地にがスローガンのしおいんですけどロードバイク部が、ホイールの軽さで勘違いして「行けるんじゃね?」と思って挑戦するという無謀の一言に尽きるこの企画。我ながら、計画していた時の自分が何を考えていたのかよくわかりません。

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 ヒルクライムと言えば、去年夏、秩父へと山伏峠を登った「めんまライド」がありますが、あの時は熱中症でヘロヘロになり、坂道がツライとかどうとか言う以前に、生命維持がツライ事になっていたので、実際に自分がどれだけ登れるのかはよくわかっていません。ただ、都内のちょっとした坂道を登った感じでは、まるで登れないタイプの人間であることは薄々感づいております。

 新ホイールを装備して戦いを挑むのであれば、山伏峠再戦が筋かもしれません。ただ、一度通った道を二度通るなど言語道断と鳥坂先輩も言っていたので、どうせならば新しい道を試してみたいところ。

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 荒川/多摩川サイクリングロードのようなローディー定番の練習コース、しかも都心から近く、ある程度の本格的なヒルクライムができそうなところはないのか? それで思い当たったのが、都民の森というわけです。

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 もう1つ、都民の森には特徴があります。そもそも都民の森は、奥多摩の山々や森の魅力を紹介する施設が集まった場所で、駐車場や売店があり、山を散策する時の出発点となるところ。大半の人は、武蔵五日市の駅からバスなどに乗って都民の森まで登り、周囲をトレッキングするわけです。

 この都民の森、実は標高が約1,000mと数字的なキリが良い場所。つまり、この場所まで登れるかどうか? 登れたとしてどれくらい疲労するのか? どれくらいの時間がかかるのか? を把握できると、今後、ロードで旅に行こうという時に、「600mの峠だから登れそうだな」とか、「1,500mだから俺の足がもげるな」など、自分の中のモノサシになってくれるのではないかという考えもあります。

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 なんと綺麗な上り坂…

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 そんな事を考えながら、武蔵五日市からの緩やかな登りを良いペースで登っていきます。やはり新ホイールの軽快さは武器になります。今までのホイールであれば、こんな序盤でも「あー、ダルい」などと悪態をついていた事でしょう。

 ただ、楽だからと言って必要以上に力は入れず、一定のペースで、淡々と登る事を心がけます。まだ序盤も序盤、こんなところで足を使っては、後で血反吐を吐くのが目に見えています。「これが登りはリズムって事なんだね今泉くん」みたいな。 

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 「ワリとイケるじゃん俺」と調子に乗ってきた頃、新矢柄橋という檜原街道にかかる綺麗な橋が登場。

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 橋を超えると、一気に山深くなってきたような……。

 民家の数も目に見えて減っていきます。

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 そんな事を考えているうちに、檜原村役場に到着しました。先を急ぎたいところですが、ここに来たならば、チャリカフェさんで紹介されていて以前から気になっていた「カフェ・せせらぎ」に寄らねばなりますまい。

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 役場のカフェとは思えぬ見晴らしと、美味しいロイヤルミルクティ、そしてケーキの味に舌鼓。坂道はさておき、このカフェ目当てに、このあたりまでロングライドするってのも良いかもしれません。

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 眼下に小川。鳥の餌台に、ちょこんと野鳥がとまっています。

 ……そろそろ登坂作業に戻りましょう。

 役場を後にすると、すぐにT字路に差し掛かります。

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 橘橋交差点。都民の森へは、ここを左に進みます。

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 左折するとすぐに斜度がアップ。いよいよ本格的な山登りです。

 車の数が減り、騒がしい人工の音が減少。ネイチャーサウンドが体を包み込みます。

 淡々とクランクをまわしているつもりが、ペースが乱れ、息も乱れてきます。

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 救いはずっと登りではなく、たまにわずかではありますが平坦な区間がある事。車も少なく、走りやすいのも良い点で、ローディーに人気なのも頷けます。ただ、見通しも良いため、先の上り坂が目に入り、心が折れそうになります。

 前を走るローディーがいる事で、あの人が頑張っているのだから、俺もがんばろうという気になります。ただ、あっという間に置いていかれるので、絶望の方が大きくなるのが辛いところ。

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 俺、こんな場所でハァハァ言いながら何やってんだ……。

 だいたいホイールが何百グラムか軽くなっただけで、この俺が坂道なんて登れるわけないじゃん

 鬼ケイデンスとか、ヘンテコダンシングで嬉しそうに坂道登っていく高校生のアニメやってますけど、全員頭がおかしいです(断言)。

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 東京都マチュピチュ6丁目

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 気を抜くと「俺なにやってんだ」的なワードが脳内を占拠し、Uターンしそうですが、折れそうな心をつなぎ止めるのは景色の綺麗さ。

 住宅街の自転車道や、川沿いのサイクリングロード、あとはコンクリートだらけの道を日々走っている身としては、見渡す限りの緑の中、風に揺れる葉音と、鳥の声しかしない空間を、黙々と走る事が大きな喜びでもあります。

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 車で旅行している時、山道は何度も通った事があります。ただ、車の場合は自分が大きな箱の中に入って、外の世界を眺めている感じで、山の自然に満ちた空間に身を置いている感じはありません。富士サファリパーク的と言えばわかりやすいでしょうか。オープンカーやバイクだとそういう隔絶感は薄れるのですが、車で通っただけでは、その道を本当に味わったことにはならないというのが、ロードバイクに乗るようになって強く思った事です。

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 以前も書きましたが、やはり"音”が重要。自転車はほぼ無音で移動できるので、山道を散歩しているような感覚で、風も、鳥の声も、何も壊さずに山の世界に入る事ができます。爆音を出しながら空間を切り裂いて車やバイクが時折私を抜かしていきますが、その音が消えると、周囲から得られる情報がグッと増え、「なんか脇からチョロチョロ水の音がするな」とか、「車に驚いて飛び去った鳥が戻ってきて、なんか咥えてるな」とか、細かな事に気づきます。車やバイクでは恐らく見落としてしまうか、気づいたとしても、頻繁に停車できません。

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 また、どんだけ山が高いのか、空気が濃いのか、気温が下がっていくのか、目的地が自分の家から遠いのかを、自らの肉体で嫌というほど、本当にもう勘弁してくれと言うほど叩き込まれるので、体験が濃厚です。

 車だと目的地の駐車場について、車を降りて背伸びをして「うーん、自然の中だねぇ」とか言って記念撮影して「じゃ、次行こうか」で終わりですが、その自然体験を1とすると、ロードでの自然体験は8万7,000くらい。途中で山の中をランニングで登っていく人を見たので、あの人は15万8,640くらいだと思われます。あの人どういう体の構造しているんだろうか。
 
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 と言うような、綺麗事すらどうでもよくなるほど疲れてきました。

 筋肉の疲労を軽減するBCAAを過剰摂取(ボトル2本分携帯)しているためか、足がつる気配はありませんが、単純に全体的に疲れてきました。

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 余裕のあったギアも、徐々に残り枚数が少なくなっていきます。

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 キツイ場所では時速10km以下になる事も。歩いているのとさほど変わりません。でも、足だけはつかないと決めてノロノロと。

 あ、うそだ、途中で写真撮影しまくってるから、足つきまくってるwww


 押し歩きだけはしないと決めて、ノロノロと……に訂正させていただきます。

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 修行僧のような気持ちでクランクを回し、無我の境地が見えてきた頃に、1つのランドマークに到着しました。

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 それがこの料金所跡。何の料金所かと言うと、この先の奥多摩周遊道路がかつて有料道路だった頃のもの。ちなみに武蔵五日市駅から都民の森まで片道30km程度ですが、この料金所跡から都民の森までは3km程度。つまり、あともう少しというわけです!! ここまで来たらクリアできたも同然、いやぁー長かった。

 少し休憩しようと、ドリンクをグビグビやりながら山を見上げて、思わずBCAAを吹き出します。

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 なにこれ!!

 断崖絶壁の写真じゃないですよ。下に、右に向かって登る道路と、その上にさらに左に向かって登る道路が見えませんかこれ、気のせいじゃないですよね。これからこの道路登って行けという意味ですよねコレ。ロープウエイ作っておけよ(怒)


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 しかし、ここまで来て諦めるなどという選択肢はありません。諦めるにしては登りすぎたのです。諦めて再びクランクをゆるゆると回し始めると、もう意味がわからない景色の連続。

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 普通に路肩に滝が流れていますが、もうアングルも何も適当に機会的に撮影。

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 ちょwww おい!! 雪残ってんぞ!!!
 いま5月!! どーなってんだここは!


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 景色は相変わらず素晴らしいです。前に他のローディーが走っていなければ、黄泉の国への道と言っても信じてしまいそう。

 頭には「どれだけ練習しても、走るのは楽にならない。ただ、速くなるだけだ」という某選手の格言が浮かびます。ちなみに練習はしていません。

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 いやいやいやいやいやいやいやいや

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 おかしいだろこの写真どう考えても真ん中にエスカレーターがあってしかるべきだろ、貧脚ローディー向けバリアフリー少しは考えてよ舛添さん。

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 旧料金所があんな下に。

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 まだ先があんのかよ!! 日本中の標高500m以上の山は全部490mまで切り崩す事を公約として自民党総裁選出てもいいわマジで。

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 口から「アァーーー」という言葉とエクトプラズムを吐きながら、足をぐるぐるさせるだけの機械のようになってからしばし……。この過酷な修練にも終わりが訪れます。

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 桜だ……。5月なのに桜が見えてきた。

 ああ、亡くなったおばあちゃんに会えるんだね、きっとここで。

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 つ、ついた……。

 都民の森じゃねえ、都民の天下の険だ。

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 なんか駐車場にバイクラックまで完備されている。

 駅からココまでのヒルクライム所要タイム!? 知るか!! 冷静に考えたら、途中でチーズケーキ食って、フルサイズミラーレスで要所要所記念撮影してる時点で所要時間もなにもねえ!!(全部入れて2時間いかないくらい)

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 やけに戦闘的なスタイルの鳥さんローディーのモニュメント。

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 なんでも、スポーツ祭東京2013 自転車競技開催を記念して設置されたバイクラックだそうな。そういえば、檜原村の役場や、途中の飲食店にも置いてありました。ローディー誘致に一役買っているのは間違いないでしょう。バイクラックは非常に便利なので、もっと増えて欲しいですな。

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 糖分補給をしようと、ヨロヨロと土産物屋さんに入り、ソフトクリームをゲット。ロングライド(?)後には、榎本牧場のジェラートがお馴染みですが、アレと同レベルを期待してパクついたところ「?」という感じ。ただまあ、疲労困憊な肉体にとっては、多少味がどうだろうが十分美味の範囲内です。

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 道中BCAAドリンク飲みまくり、残りの1本もだいぶ飲んでしまったので、キリンのアミノサプリCを追加購入。これ、サッパリ目で最近気に入っています。

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 脳の処理速度が回復してくると、都民の森駐車場の些細な点が意識に入ってきます。バイク漫画で一番イカれてて最高に面白い「ばくおん」(byおりもとみまな先生)による安全運転啓蒙ポスター。バイクにとって大切なのは、風と自由と胸部プロテクターらしいです。スズキをディスる事じゃないのか恩紗。

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 バイクの駐輪場には、安全運転を呼びかけるカラーパネルも。効果的だとは思うんですが、なんでしょう、まっ昼間の自然の光の中で、この漫画のキャラ達の笑顔を見る事から感じる、世の暗部を天日干しにしているような違和感は。

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 さあて、お待ちかねのダウンヒル!!

 ここまで、野郎が「ヒーヒー」言っているノロノロ運転を延々と駅から録画し続けてきたアクションカムが、本当の意味で活躍するご褒美区間!!

 …次回に続く。