太古の昔、「ロードをカッコよく撮影しよう 第1回:降りたまんまアングルからの脱却」というのを書いたんじゃよ。その時に偉そうに“第1回”とか銘打ってのぅ、もちろんその後忘れとったんじゃ。思い出したんで続きを書いてみます(すみません)。
ようするに、ロードバイクから降りて写真を撮る時にゃ、ポジション、アングル、フレーミングにこだわると面白というような話をウダウダ書きました。白いキャンバスを前に、「どんな絵にしようか」と考えてからシャッターを切ろうぜと、まあそんな話です。
構図を決めたら、シャッターを切って撮影終了。
もちろんそれでも構いませんが、アングルやプレーミングにこだわったのに、その後を全部カメラにまかせにしてしまうというのも味気ないもの。そこで、第2回目はロードと相性の良い「スローシャッター」に挑戦。躍動感のある写真を撮影してみます。
もちろんそれでも構いませんが、アングルやプレーミングにこだわったのに、その後を全部カメラにまかせにしてしまうというのも味気ないもの。そこで、第2回目はロードと相性の良い「スローシャッター」に挑戦。躍動感のある写真を撮影してみます。

ロードバイクの魅力の1つは「スピード」。ママチャリとは違う、スピード感のある爽快な走りができますが、それを写真に残すのは、動画でもない限り難しいもの。使えるテクニックの1つがスローシャッター。つまり、シャッターが開いている時間を長くするという事。機構的に言うなら、撮像素子に光を当てる時間を長くするという事。日本語でok。
日本人にわかりやすく言うと、印鑑みたいなもんです。朱肉にぺたぺたやった後で、紙に印鑑をググッと押し付けます。朱肉が薄いと、紙にじっくり押し付けないと綺麗な印になりません。逆に、ものすげえタップリ朱肉がついていたら一瞬紙に当てるだけで、綺麗な印が残せます。紙に印鑑を押し付けている最中に、下の紙を引っ張ったら、朱肉が横に流れた赤い線のようになってしまいます。
朱肉を“光”、紙を“撮像素子”と考えると、スローシャッターがよく理解できます。
光をじっくり長時間当てて、ゆっくり写真を描こうぜ=スローシャッターというイメージ。風景やマネキンなど、動かない被写体をスローシャッターで撮影しても、動いていないので高速シャッターとさほど変わらない写真ですが、新幹線やF1カーなど、高速で移動するものを撮影すると、電車や車のような形をした何かの残像が、尾を引いて横切るような写真になります。

例えば時速300kmオーバーで走行する新幹線の窓ガラスにカメラをくっつけ、1/8秒の遅いシャッタースピードで撮影したのが上の写真。田舎町の森や田んぼ、家が写るはずですが、光を受けて撮像素子が絵描いている間に、カメラ(on 新幹線)が時速300kmで右へスライド移動しているので、絵が横に流れています。
一方で、窓ガラスに付着している白い汚れは、カメラと同じ方向に時速300kmで移動しているので、止まって写っています。

この現象を逆手にとると、シャッターをあけている間に、動いている被写体を追いかけるようにカメラを動かすと、“動いている被写体を止めて、まわりの風景だけを流す”という写真が撮影できます。例えば上の新幹線は、右から左へ走っていますが、その速度に合わせてカメラを右から左へ水平に振りながらシャッターを切る(1/30秒)と、新幹線はピタリと止まり、周囲の風景は右へ流れるという写真に。その結果、静止画ですが新幹線が走ってるぜ! というスピード感のある写真になります。俗にいう、流し撮りというやつです。

新幹線やF1などのレースカー撮影など、挙動が先読みしやすく、奥行き方向への移動が少ない(AFが追従しやすい)動的被写体において、流し撮りは手軽で、楽しい撮影方法です。逆に言えば、予測が困難で、三次元的に動きまわる……例えば虫とか小鳥などを流し撮るのは困難です。
動きへの追従がある程度やりやすいロードバイクの場合、走っている人の流し撮りは、慣れればわりと簡単に可能。なおかつ、“まさに走ってる”という、迫力のある写真が撮れます。何人かでロングライドをしている時、休憩のコンビニでカメラを構え、先に出発する仲間を流し撮りしてから後を追う……なんて感じで使うと、旅の写真に少し変化が生まれるでしょう。
また、このようなブログで旅のレポを掲載する時に、被写体以外の風景や周囲の人間をブラして、誰だかわからなくできるスローシャッターは、プライバシーや肖像権保護の面からも使えるテクニックです(後で顔にボカシを入れまわらずに済む)。

ただ、他人の走行シーンの流し撮りは、当然ですが誰かとロードで出かけていないと撮影できません。
じゃあボッチにゃ使えないのかと言うと、そんな事もありません。何も、カメラを左右や上下に振って撮影するだけがスローシャッターではありません。例えば、シャッターを開けたまま、前に進むだけでも、景色は後ろに流れていくのでスピード感のある写真が撮影できます。

例えば上の写真、”走っている目線”でカメラを構えて撮影していますが、すべてがピタッと静止しているので、走っている感じはあまり受けません。

次に、1/10秒や1/15秒など、走行しながらスローシャッターで撮影してみると、風景が後ろに流れ、たいしたスピードを出していなくても、凄いスピードで走っているような爽快な写真が撮れます。
ただ、問題は"走りながらどうやって撮影するのか”という事。首からカメラを下げて、片手でシャッターを切るってのも可能ではありますが、片手運転は危険です。アクションカメラを取り付けているハンドルバーマウントに普通のカメラを装着するという手法もあります。

すげえ馬鹿っぽいwww 万が一カメラが落下しようものなら、被害総額約20万コースなので、カメラのストラップをハンドルに巻きつけています。もちろん、こんなアホな状態で延々と走行するわけではなく、「ここはスローシャッターで撮影すると面白そうだな」というポイントでセッティングして、10mか20mくらいノロノロ走って撮影し、「1枚くらい使えそうなものがあるな」と確認してカメラを仕舞う……という感じ。
「1枚くらい使えそう」ってのはなんの話かというと、カメラのドライブモードをセルフタイマーに設定。「10秒後に5枚連写する」などの設定をした上で、シャッターを押し、セルフタイマー撮影のカウントダウンが始まった状態で自転車を前へと走らせ、両手はハンドルを握ったまま、カメラが勝手に5枚パシャパシャと撮影。停車して、「綺麗に撮れたかな?」とチェックするわけです。

綺麗な路面で、綺麗な流し撮りができる確率は、10枚撮って1枚あるかないか。ここでいう綺麗な写真は、「上下のブレがなく、移動方向にのみブレ(流し撮り)が生まれているもの」という意味。つまり、シャッターが開いている間に、道路の細かな凹凸などでカメラが上下に動くと、上下にも、前後ろにもブレが発生した、ゴチャゴチャの写真になってしまうというわけ。それゆえ、できるだけ一定の速度で、自転車を上下に揺らさずに撮影するのがコツです。もちろん、ノロノロと走るとまわりの迷惑になるので、誰もいない時にやる必要があります。

また、この写真のように、開けた場所では、流し撮りによって流れる被写体がほとんど無いため、流れていても、止まっているように見えてしまうので意味がありません。

道の脇の草や看板など、何か流れるものがあるところで使うと効果的です。
ちなみにフルサイズのミラーレスなんぞをわざわざハンドルに取り付けて撮影するアホは私くらいだと思いますが、ようするにシャッタースピードを指定して撮影できるカメラであれば、コンパクトデジカメでも構いません。逆に、重量や、落下した時の金銭的ダメージなどを考えるとコンデジの方が適任でしょう。
ハンドルにもともとアクションカメラを取り付けているのだから、それで撮れば? と思われる人もいると思いますが、アクションカメラは基本的にビデオカメラで、静止画機能はオマケな機種が多く、シャッタースピードを指定して撮影できるような機種はほとんどありません。日が暮れて暗くなった場合でも、シャッタースピードを遅くするとブレ写真を量産するだけになってしまうので、ノイズを増やしてでも増感してシャッタースピードを落とさないように頑張るのがアクションカメラの一般的な仕様です。
動画は要所要所だけにして、静止画の表現を追求してアクションカメラではなく、マニュアル撮影が可能なコンデジを車載カメラとしてあえてチョイスするってのはアリだと思います。中古とかなら、アクションカメラとあまり値段も変わりませんし。

ちなみに肩からストラップで下げた状態で、セルフタイマー連写をすると、カメラはあさっての方向を向いて、勝手に撮影するわけですが、意外に面白い写真が撮れている事もあります。
おまけ。

ハンドルバーマウント無いからカメラを自転車に取り付けられないよという場合、走らなくても、走ってるっぽい流し撮りをする事ができます。ズーミング流し撮り、ズーム流し撮りなどとも呼ばれる、鉄道写真向けのテクニックですが、ようするに、シャッタースピードを遅くして、シャッターが開いている間にズームレンズでワイド端からテレ端へなど、ズーム操作を行なうというもの。百聞は一見にしかず。

なんのへんてつもないベンチの写真が、ズーム流し撮りをすると……。

ライトスピード!!!!!
まぁ、自転車で走ってる感はまったくありませんがww 使えなくもないテクではあります(ルミナリエみたいな光のイルミネーションでやるとまさにライトスピードな写真になります)。
シャッタースピードをいじると、ロードの爽快感を静止した絵の中に取り込めるという話。くれぐれも安全運転の範囲内で、カメラの落下にもご注意を。

>被写体のスピードに対してシャッタースピードをどのぐらいで設定するかがミソなのでしょうか。
被写体の尾っぽをどれだけ長く引かせたいかでシャッタースピードは変わりますね。
尾っぽが適度で、ぶれにくい妥協ポイントの感覚としては1/8秒~1/20秒あたりです。
ただ、すごく遠くの新幹線と、目の前を横切るオバちゃんだと、カメラを横に振るスピードは
オバちゃんの方が早いので(笑) 被写体の速度とカメラからの距離、
レンズの焦点距離によっても変わります。
また、長くシャッターをあけてカメラを振れば、それだけ尾っぽは長くなってスピード感も
出ます。ただ、開けてる時間を長くすればするほど、その間にカメラが上下などに
揺れる確率も増えていくので、失敗写真になる可能性も激増します。
F1レースでプロカメラマンが一脚でカメラを支えて流し撮りをするのは、
棒でカメラを固定して、横に振っている間にカメラが上下しないようにしているだけです。
逆に言えば、ロードのサドルとか、そこらへんのガードレールとか、何かの上にハンカチ
でも敷いて、その上にカメラを置いて、横方向に振れば、上下ブレを防ぐことも可能です。
カメラをチャリに乗せて進行しながらの流し撮りでは対策ムズイので、なめらかな路面を
選ぶとか、ペダルをこがずに惰性で滑走するとかですかねぇ。
最近、机の上に設置して、テーブルについた人間の顔を、回転しながらカメラで自動的に撮影する、ロボット三脚みたいなのがソニーから発売されているんで、あーゆーのを真面目に高機能化
していくと、被写体を自動追尾しながら絶対にブレない流し撮りが可能な三脚取り付け型
ロボット雲台みたいなのは作れるんじゃないかと思います。
よく考えれば、そのスピードを超絶ゆっくり追尾にして、シャッタースピードを30分とか開け続ける製品は
星を追尾して撮影して星雲写真を撮る、天体撮影用グッズの赤道儀として売ってますなw