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©石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会

 ちと古い話になりますが、アニメ版「それでも町は廻っている」の、アニメオリジナル回の中に、「全自動楽団」というエピソードがあります。忘れてしまった人に向けて簡単に説明すると、都会の中にありながら、時代の波から取り残されたような昭和的コインランドリーで、ほとり達が雨宿りするお話です。

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©石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会

 漫画版も含め、この作品はネジが3本抜けた女子高生による突飛な日常系ドタバタギャグに見えますが、その裏側には舞台となっている下町の空気感が色濃くうずまき、幼少期や学生時代特有の感情が生真面目に描かれるなど、作り手である大人達の懐古趣味的な要素が染みだした、アナログライクな象徴主義的作品という側面も持っています。

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©石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会

 そんなことはどうでもいいんですが、雨宿り中のほとり達は、少しでも暖をとろうとランドリーの中を散策。そこで、昔懐かしい、ほとり達にとっては初めて見る、うどんやハンバーガー、トーストの自販機を発見。大騒ぎしながら買ってみる流れになります。

 こうした自販機は、主に昭和40~50年台に作られ、カレーや味噌汁など、様々なものが作られたそうな。デパートの屋上、観光地のロープウエイやフェリー乗り場などの片隅、国道沿いのドライブインなどに置かれていたそうです。

 ……そうです、と書くのは、これらの自販機が、私にとって「ギリギリ懐かしがれない」存在であるため。

 年齢としては懐かしがる事もギリできそうなんですが、生まれも育ちも現在働いているのも東京のわりと中央寄りなので、こうした自販機はあっというまに時代のうねりにのまれ、牛丼チェーンや本物のうどん屋チェーンなどに変化。さびれた観光地は、あっという間にビルなどに姿を変え、脳のシナプスを必死に繋げても「昔、デパートの屋上か、ドライブインでハンバーガー温めるやつだけ見たことあったような……」という程度。

 しかし、懐かしがれないとしても、廃虚・廃村・レトロ好きな血がうずきます。あの自販機うどん、どんな味がするのだろうか……。

 というわけで、チャリンコでロングライドするようになったついでに、都内から最も近く、自販機うどんが残っているという、その筋では有名な、上尾近くの「オートパーラー上尾」さんに行ってみました。チャリで3時間くらいかけて(アホか)。

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 中はランドリーではなく、ゲームセンター。ゲームセンターCXで取り上げた方がいいんじゃないかというレトロ感満載。輝度が落ちて、色味が変になったCRTのビデオゲーム台が、訪れた者の時間を急速に巻き戻してくれるかのようです。

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 あった!!

 ゲームセンターの奥に、ジュースの自販機と並び、うどん&そばの自販機が。それにしても、光量の少なさ!! アベイラブルライトの暖色さ!! 田舎で暮らした事もないのに、「トトロ」見ながら「懐かしいなー」と言うのにも似た、テロメアレベルの昭和臭を胸いっぱいに吸い込みつつ、近寄ります。

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©石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会

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 ええと値段は……。200円!? やっす!!!

 とりあえず、アニメよろしく、うどんをチョイス。

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 購入方法は、お金を入れてボタンを押すだけ。ヒトコトも喋る必要も無く、お湯をわかさず、お湯をいれなくても、自動的にうどんが出てくるそうな。何この未来販売機。

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 調理(?)時間はおよそ20秒。ガーゴー聴こえる音も、懐かしさを高めてくれます。

 って、このカウントダウン表示!!

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 ニキシー管かよ!!!! 驚

 アキバのパーツ屋とか計測器屋で見た後、なんだっけ。ああ、シュタゲで見て、コミケで売ってたダイバージェンスメーター見て以来だわ……。いや、普通に業務用の機会として現在も動いている姿を見るのは、生まれて初めてかもしれない……。スミソニアン博物館に入れろ。

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 とか言ってたらうどんがパージされました。

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 おお、まごうことなきうどん。しかもちゃんと熱い。

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©石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会

 作り方はアニメで丁寧に紹介されていましたが、とどのつまり、どんぶりに茹でたうどんを入れた状態で保管。お金が入ると、2回湯通しして、その後、熱いつゆを注いで完成という流れ。

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©石黒正数・少年画報社/それ町製作委員会

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 割り箸も、薬味も完備。

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 なんか白っぽく見えますが、うどんが浮いて表面で主張しているだけで、ちょっと食べて奥を見ると、黒々とした関東風つゆとご対面。

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 ちなみに、どんぶりはプラスチック製で薄く、なんかアウトドアグッズっぽい感じなので、変な持ち方をすると”たわむ”ので注意。

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 で、肝心の味はどうなのかという話ですが……。

 正直、駄菓子屋レベルのジャンクな感じをイメージしていたのですが、意外に普通のうどんで驚きます。しかも生麺を湯通ししているわけなので、カップうどんより本格的。(ちなみにこの販売機は、富士電機めん類自動調理販売機という名で、ラーメンとかにも応用できるそうな)

 同じように手軽な麺類として、例えば駅そばとか、なか卯とか、はなまるうどんなどと比べると、そりゃまあ負けますけども、たった200円で、ゲーセンの片隅で食える食事としては驚くべきクオリティ。廃れてしまったのが勿体無いなぁ。社員食堂が無い中小企業とかに売れそうなもんだけどww

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 おおっ、天ぷらにもちゃんとエビ入ってる。

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 今となっては懐かしさを感じるなるとまで……。

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 なんで俺、ゲーセンの片隅で、シケモクの匂いに包まれつつ、うどん食ってんだ。

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 ちなみに、隣にはカップ麺の販売機も。お湯が出るところも装備しています。

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 ごちそうさまでした。なんというか、駄菓子屋以上、うどんチェーン店以下という、味覚のニッチ隙間産業という感じで、古く、かつ新鮮で実用的。珍妙な動機で誰も訪れない目的地に旅する途中の食事としては、100点満点でございました。

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 あああああああああ、この王冠ビン入りコーラ、昔あったなああ。お風呂屋で、風呂上りに親父と飲んだわ。「缶コーラは缶の味が出る。コーラはビンだ」と言ってたなぁ。

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 次に訪れる時は、コンビーフだか、ハムだかのトーストサンドにチャレンジしてみようか。

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 年季は感じさせますが、もちろん営業中のオートパーラー上尾さんは、店内もキレイで、ゲーム機もかなり豊富。うどんくいつつ、懐かしめのゲームを低価格でプレイでき、ちょっと偏った趣向の人にはマルチに楽しめる場所だと思います。チャリで行くには遠いですがwww。

 なお、こうした自販機の仕組みや、全国にある所在地マップなどの詳細は、既に神のようなサイトが存在するので、そちらへ飛んでいただければ。私の適当なレポより遙かに素晴らしいオートパーラー上尾さんのレポもあり。自販機の内部動画まで完備されとります。もしかしたら、あなたの家の近くにも、懐かしくも新しい味がひっそりと佇んでいるかもしれません。