手ブレは写真の大敵ですが、動画でも厄介な存在。「旅行に行ってきた」と、誰かのホームビデオを見せられ、画面の激しい揺れに、見ていて気持ち悪くなった経験がある人も少なくないでしょう。

 逆に、恐ろしいまでに見事に手ブレを補正すると、まるで自分が宙に浮いて移動しているような不思議な動画が撮影でき、それだけで価値が生まれます。NHKの「世界ふれあい街歩き」なんかが代表例です。



 最近のビデオカメラでは、アクティブ手ぶれ補正機能の性能競争で、驚くほど歩行時の手ブレが出ないように録画できるようになってきました。コンパクトデジタルカメラや、ミラーレス一眼の動画機能にもこの流れは及んでいます。しかし残念ながら、まだ完全にブレを排除できるまでは至っていません。



 一口に「手ぶれ補正技術」と言っても様々な種類があります。レンズの中に、可動式の補正用レンズを挿入し、それを動かす「光学式」。光を捉えるセンサーそのものを動かして補正する「センサーシフト式」(俗に言うボディ内手ぶれ補正)。お手軽タイプでは、使う範囲よりも広めに撮影しておき、ソフトウェア的な演算処理で映像を加工して(レタッチして)ブレていない映像を作り出す「電子式」なんかもあります。

 一方、もっと原始的に、“そもそもカメラを揺らさずに撮影する”という手もあります。映画のように予算や人員が潤沢であれば、レールを敷いて滑車にカメラを載せて撮影すれば、究極的にブレない撮影も可能です。そこまでしなくても、ある程度ブレを抑えた撮影ができるのが「ステディカム」という器具です。

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 カメラの下にアームとオモリ、取っ手がついた奇妙な器具。写真のモデルは恐ろしく原始的・コンパクトなタイプですが、NHKの収録で使われているものと原理的は同じです。「カメラ+アーム+オモリ」という構成で、カメラから生じる揺れのエネルギーと釣り合いがとれるような重さのオモリを、反対側のアーム先端に設置するというもの。上下のバランスがとれ、動きが安定するという原理。物凄くわかりやすくいうと、“ヤジロベエ”を手の先に乗っけて撮影しているようなものです。

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 一昔前は、とても個人が遊びで買えるようなシロモノではなく、自作している人も多かったようですが、最近ではマーリンやHague Mini Motion-Camなど、リーズナブルなモデルが増えてきました。iPhoneなどのスマホ用機種もあったりします。

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 セッティングや撮影時の動かし方には若干の慣れが必要ですが、何度か撮影していれば、歩行や階段の登り下り、左右へのパンなどはわりと簡単にできるようになります。おそまつですがNEX-7での練習動画をどうぞ。左側が片手で持って撮影した動画ですが、わざと揺らしているわけではありません(笑)。



 「あの人、何やってるの?」的な視線に耐える必要はありますが、観光地を移動しながら、店先の展示物にフォーカスする……といった、「ふれあい歩き」的な動画が撮れると、旅の動画にもグッと味が出ます。「何処行っても、いつも同じような写真+動画ばっかり撮って来てるなぁ」と感じたら、ちょっとしたアクセントとして用意すると面白い器具だと思います。

 ちなみに、最近のソニーのビデオカメラ上位機種で搭載されている「空間光学手ブレ補正」機能は、レンズとセンサーを1ユニット化して、そのユニットをカメラボディの中で浮いているような状態にしたもので、恐ろしく強力なシロモノ。デジカメとスマホに動画のお株を奪われたビデオカメラは今後、鬼のようなズーム倍率と、鬼のような手ぶれ補正という2点に、自らのアイデンティティを見出す、ある意味マニアックな方向に進化していくと思われます。

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