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--前回までのあらすじ
120kmライドが遂にスタート。序盤は平地で敵はスライム程度だが、森の中でゆうしゃを待ち受けていたのは坂というか山だった。山のこうげき! ゆうしゃは足に99兆のダメージ。ゆうしゃはしんでしまった……。(もげた足を米粒で接合しますか? Y/N)【あらすじ完】
iPhoneのアプリでナビを利用する際、問答無用で“坂の少ないコース”をタップする速度にかけては日本で3本の指に入ると言われている私。クランクを回しても遅々として進まない、坂という名の重力異常地帯は私にとって天敵と言っても良いシロモノです。
都内のちょっとした坂でもゲンナリするのに、目の前に立ちふさがったのは“ちょっとした山”と言いたくなる勾配。しかもウネウネと蛇行した山道。しかし、路面はシッカリ舗装されています。ここは国営のアルプスあづみの公園。自然学習などができる施設らしいですが、そのハイキングコースの一部を自転車で登っているような感じです。
突然の坂にパニクリましたが、ここまで来て引き返すわけにもいきません。深呼吸し、密かに練習していた“坂対策”の秘策を試す時が来たのです!!
突然の坂にパニクリましたが、ここまで来て引き返すわけにもいきません。深呼吸し、密かに練習していた“坂対策”の秘策を試す時が来たのです!!
実は長野に旅立つ前に、竹谷賢二氏のDVD付き著書「バイシクルライディングブック」をAmazonでポチッておりました(また無駄遣いか)。NHKで「チャリダー」というロードバイクの入門番組が放送されていて、その中で竹谷先生の解説&理論が実に合理的で感銘を受け、もっと勉強したいと著書を買い求めたわけです(NHKさん、「チャリダー」凄く面白いのでどんどん続編放送してください)。
で、坂をどう登るのかという先生の教えですが、具体的には、(1)サドルに座る位置を少し前に移動 (2)腕の力を抜き、前傾姿勢をちょいキツくします (3)あとはギアを“足が楽にクルクル回る”まで落とし、ひたすらクルクルクルクル……。
するとどうでしょう、平地より遅いのは当然ですが、あまり体に負担をかけず、平地を走行している時に近い“気軽さ”で坂道を登れるようになります。
原理は結構簡単。自転車は登り坂になると、10円挟んだチョロQのように、車体と上に乗っている人間全部が斜め上を向きます。そのままの状態でクランクを回すと、足は“坂道に対しては垂直”ですが、地球の重力に対しては、それに逆らうように、“斜め前に足を持ち上げてクルクル回す”ような格好になってしまいます。それを補正するために、自転車に座っている人間自体が前のめりになり、"坂の上にいるのに、平地にいるように地球に対して平行な姿勢をとる”という考え方です。
こうする事で、全体の重心が後方に偏りません。また、クランクを回す際も、足が重力に引っ張られて下に降りる力、つまり“足の自重”を回転にプラスする事もでき、より楽に回せるようになるという理屈。ふむふむと勉強しつつ、東京の多摩湖自転車道で密かに練習していましたが、その成果を発揮する時が来たのです。
実践してみた結果、ノロノロには変わりませんが、ヒーヒーと息が上がったり、「もうアカン」と足を着いてしまうほど辛くはなく、ジリジリと着実に前に進めます。てっきり後から来た人達にビュンビュン抜かれるかと思いきや、意外にそうでもなく、逆に前の人を抜けた一幕も。「結構イケるじゃん!!」と、坂が楽しくなってきました。すみません嘘を申しました。前よりだいぶマシですが、やっぱ坂はツライです。
激坂の先にある大町エイドで待っているのは、お昼ごはんのオニギリ。到着までにオニギリで補給するカロリーが奪われるんじゃないかと心配になった頃、視界が開け、ようやく大町エイドに到着。つ、疲れた……。
ありついたオニギリは、炊いたばかりの白米をラップで丸め、そこに辛味噌やねぎ味噌を好きなだけ盛ってねという、なんとも豪快な仕様。白米も、小ぶりから巨大までサイズはマチマチ。この豪快さが、スポーツイベントっぽくて良いです。学生時代のテニス部の合宿を思い出しました。
ねぎ味噌うめえww なにこれ、こんなねぎ味噌食べたことない。意味がわからないほど美味いww 自転車の合間に食べるご飯は、たいてい美味しく感じるものですが、このねぎ味噌にぎりは秒速で消化。気付くと2個ペロリと胃に収まり、普段それほど大量に食う方でもないんですが、ついつい3個目に手が伸びて……(今から思えばこれがイカンかった)。
デザートもモグモグ。それにしても日差しが強い。ふと靴下と足の境目に目をやると、強い日差しでやや赤くなっています。朝、念入りに両手両足と首の後ろに日焼け止めを塗りましたが、塗り残しがあったようです。はっ!? オレ、顔に日焼け止め塗ってねえww やばい、このままでは今夜の風呂でのたうち回ることになる。
ダメモトで救護テントに顔を出し、「あのー、日焼け止めってあったりしますか?」と聞いたところ、「救護用には用意していませんが、私の私物でよければ」と、係のお姉さんが、私の手のひらに自分の日焼け止めを分けてくれました。ありがたや~。
アルプスの雪解け水にスポドリ粉を溶かしたら、エイドを抜け、長い下り坂へ。
アルプスの雪解け水にスポドリ粉を溶かしたら、エイドを抜け、長い下り坂へ。
出発から約2時間、40km地点を超え、道は平坦。快調に進みます。しかし、ここから50km地点にかけ、長い登りが再び待ち受けています。10kmかけて、高度700mから920mまで登らねばなりません。
まさに緑のトンネル。都内の坂なら恨み事しか出て来ませんが、この景色には文句を引っ込ませるパワーがあります。しかし、ホントに車がいない……。自転車の楽園ですな。
スノーシェードが、ここが雪国である事、山道である事を思い出させてくれます。
ん!? 柱の脇に、なにか茶色いモノが……。
ちょwwwww ニホンザルwww 俺どこにいるんだ今www
都内で自転車に乗っていると、アブラムシの特攻を食らうくらいしかないのに、フランクに野生動物との出会いを実現してくれる長野ハンパねえwww
サルの可愛さで坂の辛さも紛れ、待ちに待った長い下り坂。道の先が見えないほどの直線。ああ生きててよかった……。下りながらガツガツ踏むと時速50km近く出てしまいますが、危ないのであくまで適度に。
60km、つまり折り返し地点が近づくと、車で木崎湖巡礼で訪れていた時に、何度も目にした風景が増えてきます。「あそこで車停めたなぁ」、「あのコンビニでメシ買ったなぁ」などと思い出しながら、一刻も早く辿り着きたいような、着きたくないような、不思議な気持ちで木崎湖のほとりにある大糸線、海ノ口駅に辿り着きました。「おねツイ」派の私にとっては、ここが聖地の中心地です。
それにしても、海ノ口駅舎に自分の自転車が立てかけてあり、ここまで自転車で来たというのが不思議でなりません。昔の自分に言ったら「気が狂ったのか?」と言われるでしょう。しかし、自分の足でここまでたどり着いた事で、ぼんやりと夢の中に存在しているように感じていた聖地が、地続きな現実の延長線上にあると実感でき、はじめて自分の一部になったようで感慨深いものがあります。
たまにしか電車が来ないホームでは、風の音くらいしかしません。サイクルボトルを傾けながらそれを聴いていると、「あー、自転車の旅って、車がいない道路を選んで進むと、その場所でいつも聴こえている音をかき消さずに、静かに旅ができるんだなぁ」なんて事に気付きました。
昔と変わった事と言えば、ホームに木彫りの深衣奈がいる事くらい。これがFRP製のカラフルな等身大フィギュアだったらちょっとアレな感じですが、木彫りなので景色に自然と溶けこんでいました。
チャリで木崎湖への道
~AACR 120kmに挑戦~
~完~
え、復路? なにそれ美味しいの?
え、復路? なにそれ美味しいの?
木崎湖に到着した事で、「ゴールした感」がハンパないのですが、なんと奥さん、ここが折り返し地点。つまり、今と同じ60kmをもう一度走らなければいけないんざます。意味がわからないざます。とりあえず木崎湖エイドで、赤飯饅頭を食うざます。あらやだ奥様、饅頭の中に赤飯が入っていて、その中にアンコが入ってますわ。なんなんざますかこの自転車補給食のために生み出されたような食べ物は。
この甘じょっぱい不思議な食べ物をモグモグやっている最中、1つ問題が発生しました。
食い過ぎて微妙に気持ち悪いwwww
なぜだ!? エイドで饅頭数個、バナナ、巨大オニギリ×3、赤飯饅頭を乱れ食いしただけなのに。出されたものは、とりあえず食い切る貧乏根性が仇になったとでも言うのか。とりあえず胃の中のものを消化するためにも出発。ベタなコントに出てくるデブキャラのように「ウプウプ」言いながらクランクを回します。必要なエネルギーを必要な量だけ摂取すべし。過ぎたるは及ばざるが如し。1つの教訓を得ました。
木崎湖の周囲は、もはや知り尽くしているので、近所を散歩している気分。昔タックルをかましてきた某家の犬にも再会。元気そうでした。
それにしても、自転車のゆるいスピードで一周すると、この湖の美しさと静けさが良くわかります。私がいわゆる"坂バカ”になるほどスポーツマンだったら、このまま木崎湖を見下ろす小熊山まで登りたいところですが、あの坂を登り切る自信は今の私にはありません。
食休みも兼ねて、キャンプ場でちょっと休憩。久しぶりに訪れましたが、バイクラックも完備、ロングライダーズのバックナンバーも完備。まさにローディーの憩いの場。あれこれお土産を買いたいところですが、ここから日本酒背負って60km戻るわけにもいかず、またの機会にとグッと我慢。再訪を誓って、木崎湖をあとにしました。
木崎湖も含め、往路は写真撮影多めで来ましたが、復路はライドに専念。巡航スピードも意識して走行しようと決めました。ここまでの走行距離は約70km、所要時間は約3時間半(休憩など含めて4時間ちょい?)。120kmで9時間というタイムリミットは、よほどのアクシデントが無ければ大丈夫のようです。
長距離を高速巡航するため、乗せてもらえそうな車列を探していたところ、同じ120km組の方達の中に、ちょうどいいペースの一団を発見。車列に入れてもらうと、やはり楽さが段違い。わかりやすく例えると、飛行場のターミナルにある“動く歩道”に乗るのと、その外側を自分の足で歩くくらいの違いがあります。
25kmくらいの速度で数十分、快適に距離を稼いでいると、先ほどの胃もたれも解消。ちょうどそこに、今までとは明らかに速度の違う集団が現れました。足の筋肉、日焼け具合を見ればなんとなくわかります。160kmコースに挑戦していた人達が、Uターンして追いついてきたわけです。
「流石に速いなぁ」と、追いぬかれながら関心していましたが、その中に、私と同じピナレロ乗りの男性が。「お、あのバイクは何だろ」とちょっと後ろから観察しようとしていたところ、なんとなくその車列に乗っかるカタチに。
いやぁ速いです。この方達の巡航スピードは35km~38km程度で、普段25kmな私からすると非常に高速。最初は「むりむりむりむり」と思いながら漕いでましたが、車列パワーなのか、意外についていけます。牽いてくれる前の方が上手いので、スピードの変動が少なく、高速ですが快適で安心感があり、ついつい自分も速くなったように錯覚してしまいます。
そんなこんなで、90km地点くらいまで予想していたより遙かに速いペースで到着。このままゴールまで行けるかなと思っていたところ……
坂道になったら、一瞬でついていけなくなったwww
やっぱ俺おせえwwwww
やはり自分の実力と向きあわねばなりません。斜度4%、距離2km。穂高エイド手前の坂が襲いかかってきます。焦らず、坂あがり対策法を駆使し、遅くても足に力を入れず、クルクルと心肺機能で登っていくイメージ。とにかく足をつかない事を目標に耐えます。
登り終えると絶景のご褒美。
毎日こんな道を走れたらいいなぁ。またいつか走りたい。いっそ引っ越すか。
110kmを超えると、ゴールに辿り着きたいような、このままぶっちぎって走り続けたいような、不思議な気分になりました。
117.2km 5時間24分(休憩撮影1時間ちょい)
平均時速22km/h 消費カロリー 約2600kcal
ビバ俺! よくやった俺!! センチュリーマイル(160km)走ってないけどww 今後はセンチュリーライダーを名乗っていきたい所存です。
序盤は怖いもの知らずにも「木崎湖で余裕があるようだったら、160kmコースに切り替えちゃおうかな」なんて思っていましたが、120kmでも休憩その他を含めると7時間近くはかかっており、120kmを走り終えた疲労度も加味すると「160kmで10時間制限はちょっと怖いなぁ」というのが今の私の正直な感想。それに、160kmを残しておけば、また、この場所を走る口実にもなりますし。
坂道で何度か苦労しましたが、逆にああいったポイントが無く、ズーーッと平坦な道ばかり120km走るコースだったとしたら、メリハリや景色の変化に乏しい、あまり面白くないコースになっていたかもしれません。その点、今回チャレンジした120kmコースは、私のようなヘタレでも、快適に平地を楽しめ、時間をかければ坂も越えられない事はないという、絶妙な難易度に設定されていました。
自転車のライドイベントに出た事自体、生まれて初めてですが、サポートも手厚く、安心感の中で長距離走る事ができました。東京-横浜ライドより遙かに安全・快適です。また、単独でロングライドしていると「俺何やってんだ」感が漂うものですが、沢山の人が集まって挑戦すると、「みんなでバカやってる」という、ある種の連帯感が生まれるのが面白いもんです。